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「みんなすごいな~」

普通木造の一軒家の住宅ローンは最長30年くらいであろうか。

それを支払って、ほっとしたのも束の間。

今度は、外壁だ、水回りだ、屋根だと修理費がかかる。

しかもそのお金は、築30~34年で平均495万円、築35~39年で平均583万円。

老後の準備金2000万円じゃ、全然足らないじゃない。

それを、子供を育て上げ、大学に行かせ、結婚資金や子供たちの新居にまでとなると、

今の人たちが結婚しない、子供ももうけないというのが、解るような気がする。

そして、今わたしは両親の身罷った築30年の家に独りで住んでいて、

既にトイレの床がくっきりとへこんできている。

びえーん。

まして、わたしは子供部屋おばさん17年のニートひきこもりだ。

何をするにも、「めんどくさい」

言わないと決めたのだけど、空気抜きさせてください。

このままでは破裂してしまいます。


日常の生活も嫌になるほど雑務が多い。

これを一人で母はやっていたんだと思うと、心から敬意を表したい。

例えば、お風呂に入る。

壁の下3分の2は、10センチメートル角の大きな白いタイルで覆われている。

母が身罷ってからお風呂場掃除は私一人でやっている。

問題は、タイルの部分では無くて、目地だ――――。

豆に御風呂に入った後は窓を開けているのだが、

それでもくっきりと黒いカビが……。

下手をすると、お風呂を楽しむ時間よりも掃除する時間の方が長い。

そして、満足感が味わえるほど綺麗にならないのも腹が立つ。

目地の部分はたわしで、タイルの部分はスポンジで洗っているのだが、

う~ん、うまくいかないね。

漂白剤やお風呂用洗剤は揃って使ったりしてるんだけどな。

YouTubeでお風呂の掃除の仕方、勉強してこよう。

そもそも、掃除って水回りは重点的にやらないと水垢とくもりとか汚らしい。

心して刮目せよ。


ケ・セラ・セラと、持ち前のノー天気で対処しようとするが

現実にトイレを使う度にぼこっと音がしはじめ、

踏んだ床がくぼむとそのまま沈んでしまうのではないかと恐ろしくて仕方がない。

そして、修理のお金を算段しなければならないのだ。

わたしは、この時まで身罷った母が生保レディーをしていて当然のように

母自身も保険に入っているというの全く頭になかった。

まして、池袋でわたしがホームレスの人たちと駅地下で雨宿りをした事件以来、

母は、以前のように優績者ではなかった。

首にならない程度に新規契約を熟し、既契約者のフォローをしていた。

そして、私自身も保険に入っていて、この前の3カ月の入院費も請求すれば出ることも知らなかった。


保険金や給付金は自動的に支払われる事はないのです。

だから、今回わたしが母の勤めていた会社に入社が決まらなければ

請求すれば支給される事さえ解らなかったかもしれません。

私はまだ、母の遺品の整理を全くしていなかった。

有価証券や登記簿の場所さえ気が付かない。

世間知らずのまさに子供部屋おばさんなのです。


ということで、探してみました。

机の引き出しやタンスの引き出しにはありません。

わたしは仏間の押し入れの中に入っている母が使っていた布団を干そうとしました。

何度かここは明けたことあるのに、金庫があることは全く気が付きませんでした。

でー、金庫は確認できたのですが、開け方が解らない。

今はほんとに便利な世の中ですよね。

大抵のことは、ネットが教えてくれます。


金庫を開ける4つの方法

1.思いついた番号を入力

(誕生日や携帯電話の番号を入力)

2.製造元に連絡し、番号紹介をしてもらう。

(2週間以上かかる)

3.金庫を思いきり壊すww

(サンダーで蝶番部分を壊し、バールでこじ開ける)

あはは、スカっとしそう。

4.専門家に依頼

(今すぐ開けたい人は業者に頼む。即日対応)


直ぐにやることを忘れてしまう私は、やっぱり4番かな。


と、いうことで業者さんに電話。

鍵は見つかったのだが、ダイヤル式の暗証番号が解らない。

鍵屋さんは依頼して、1時間くらいで到着。

ポレットのたくさんついたオフホワイトの作業着の上下を着ている。

なかなかのイケオジである。

柑橘系の整髪料を使っていて、くっきりした意志の強そうな眉毛が印象的。

鍵は見つかったのだが、暗証番号が解らない旨を伝えた。

彼は、ちょっと肩をすくめて

「よくある話ですね」と、眉を寄せて言う。

その姿が、親しみやすくて思わず笑顔になってしまう。


金庫を横にして、あっという間に開けてしまった。

神業―――。

一つ事にたけるだけでも食べて行けるのね。

専門職の偉大さを教わった。

諸費用、出張代金含め46000円。

わたしは、彼に麦茶と蒸したタオルをお出ししたのだが、

「コップまで冷たくて、心配りありがとうございます」

と、喜んでくださった。

こんなふうに、努力している点に気が付いてくれる人と結婚できたら幸せなんだろうな。




中に何にも入ってなかったらどうしようw

どぶに捨てたようなものだよね。

ま、いっか。それはそれで……。

はんなにりとした母さんの香り。

いつも使ってる母さんの香水。

1瓶、5万円もする日本製なのに高い香料。


幾つかの茶封筒にまとめられて、大切なものは入っていた。

母は何でこんなに保険に入っていたんだろう?と思うくらい沢山の保険証書。

有効なのか無効なのかはわからない。

そして、その中に私名義の生命保険が3つ。

「?」

ノルマをこなせない時に、一つずつ加入したのかな?

とりあえず、自分の入院給付だけ確認すると1日1万円。

「おお」

思わず感嘆の声。

保険料が未納で無ければ、3カ月の入院で90万円はいる事になる。

「よし、今日はこの必要な書類の確認をしよう。母の保険も確認してもらおう」


その前に、今日は歯医者さんに行こう。


保険会社の研修まで、あと3日。

空は青く澄み白い羊雲がぽかりぽかりとばらけていく。

Twitterのタイムラインがひまわりから彼岸花に変わっていく。


「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」

「準備が全てだと思っている。 準備の段階で試合は始まっている」

ひょっとしたら、わたし、働かなくても良かったりして……。

な~んてね、甘い甘い。

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