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想い人から送られて来たその本には、たおやかな言葉が記されている。

妙なる言葉を巧みに操れるように望んでいるのでしょうか。

昔読んだ、山本周五郎全集にふんだんに使われていたようなはんなりとした響。

繊細だけどしなる言の葉を紡げたらと絵本でも見るように吸い込まれて行く。

心の奥にかすかに光る宝でも探すように……。


つま先から足の甲、くるぶし、かかと、足首。

「ああ~ああ~」

声が勝手に漏れてしまう。

しかも自分でもびっくりするくらい大きな声が…。

ふくらはぎ、弁慶の泣き所、膝の裏、その刺激にこれ以上耐えられないとその身をひねる。

「いい~、ああ~ん、いいーーー」

内腿、股関節、お尻、局部、

「ああ~ん、もうだめ~」

こんなに感じた事はなかったような

(どうした?わたし)

いつもなら水風呂なのに今日は少し熱めのお湯にしてみた。

女の人が秘め事をする時、楽器のように声が漏れ、音を奏でるという意味が何となく解ったような気がした。

私の体は今、子宮で出来ているのかも知れない。

穴という穴が快楽を強欲に貪ろうとしている。

毛穴も唇も耳も鼻も目もアナルもヴァギナも気持ちいいに身悶える。

「ああ~ん」

染み入ってくる……。

柔らかな二の腕も細い白い指も大好きな鎖骨のくぼみも押すと脈打つ首筋も、

想い人に食べられたいと躍動してる。

細胞の損傷を防ぐヒートショックプロティン放出中。

愛に触れると誰でも詩人になるんですって。

いつか誰かを想いきり愛して、

きらきらとスターダストのようなきらめきのひと時を送れるかな?

男は手に入れるともう次のものを狙うのだとか、

女は手に入れるとそこから愛を育もうとするのにね。

「田舎から出て来た生娘をシャブ漬けにする」

を丁寧に言うと、

「地方から上京してきた、男性経験のない女性を覚醒剤依存症に陥らせる」

「都会慣れしていない女の子を、牛丼に夢中にさせる」

やっぱり専務さんが発言するような言葉では無いですよね。


エッチってあんなかな?こんなかな?と、妄想に余念がない。

ギリシャ神話のエロースとプシューケーのような素敵な恋がしたいと思うのだった。



盛りが付いたメス猫のように私の体は最近おかしい。

「三十させごろ、四十し盛り、五十ガザかき、六十夢中で、

七十泣くほど、八十張り切る、九十さすがに苦しい、百で陀仏」

ってずっとじゃないねー。

ゴザかきってゴザを爪でかくほどってことらしいです。

「女は何時まで女なんですか?」

との問いに、かまどを指差し

「灰になるまで」

って感じでしょうか。

「竿や~竿だけ~、さおやーさおだけー」

「おーい、金〇のない奴が通るぞ~」

って、談志師匠の落語みたい。
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