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春秋花壇

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居場所を探して

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「居場所を探して」

健太は深夜のパソコン画面を見つめ、ふっとため息をついた。画面には、「ギルドから除名されました」の文字が冷たく表示されている。何度目だろう、これでまた別のギルドから追い出された。心の中に、悔しさと苛立ち、そしてどこか諦めにも似た寂しさが広がる。どんなに楽しそうなギルドに入っても、結局いつもこうなる。みんな「もう少し前向きにやろうよ」「楽しもうとしてよ」と言うけれど、健太にはそれがなかなかできなかった。

彼は最初から文句を言うつもりなんてなかった。ただ、ゲーム内でミスをするメンバーを見るとついイライラしてしまい、指摘せずにはいられなかった。自分が負けるのが悔しいからだ。何度も何度もそう言い訳をしてきたが、やがてそれが「文句ばかり言う人」として周りから見られていることに気づいたときには、もう手遅れだった。健太の言葉は、すでに仲間の心に届かなくなっていた。

「また、追い出されちまったな……」健太は小さく呟き、机に肘をついて頭を抱えた。仲間と力を合わせて遊ぶ楽しさを感じたかっただけなのに、どうしていつもこうなってしまうのだろう。

ふと、昔の友人の言葉が頭に浮かんだ。「健太、君ってさ、なんでもすぐに不満を言っちゃうけど、それって君の本心なの?」と、大学時代の友人が呆れたように笑って言ったことがある。その時はただ笑って流してしまったが、今になってその言葉が重く響く。

もしかしたら、自分の中にある苛立ちや不満は、ゲームのミスに対するものだけじゃなく、何か別の問題を抱えているからなのかもしれない。健太はパソコンの画面を閉じ、暗い部屋の中でぼんやりと考え始めた。

思い返せば、日常生活でも同じように他人のミスや欠点が気になり、批判的な言葉を口にしてしまうことが多かった。そのたびに周りから距離を置かれ、結局ひとりになってしまうのだ。自分の中の不安や不満を、他人への文句や指摘という形で発散しているだけだったのかもしれない。だが、それを続けても、自分の心が晴れることはなかった。

健太は深く息を吸い込み、静かに吐き出した。「このままじゃ、どこに行っても同じだよな……」そう呟きながら、彼は一つの決意を胸にした。

その夜、健太は自分の気持ちを整理するためにノートを取り出し、自分が感じてきた苛立ちや不満を書き出してみた。何が不満だったのか、どんなことで苛立ったのか。そして、ふと気づいたのは、自分が本当は「認められたい」という感情をずっと抱えていたということだった。他人のミスを批判することで、どこか自分が優位に立っている気分になりたかったのかもしれない。

それから数日、健太はあえてゲームから離れ、自分を見つめ直す時間を持つようにした。そして、ふとした時に出会った自己啓発の本を手に取った。そこには、他人を批判せず、受け入れることで自分も成長できるという内容が書かれていた。健太はそれを読みながら、少しずつ自分の心に変化が訪れるのを感じた。

やがて、新しいギルドに入ることを決めた健太は、これまでとは違う気持ちで仲間たちと接するように心がけた。最初はなかなかうまくいかなかったが、意識して仲間のミスを許し、感謝の言葉を忘れずに伝えるようにした。自分の気持ちが少しでもネガティブな方向に向きそうな時には、深呼吸をして冷静になるよう努めた。

少しずつ、仲間たちとの関係が変わっていくのを感じた。チームプレイでうまくいかない時もあったが、健太はそれを受け入れ、今度はあえて誰かのミスをフォローし、サポートするように心がけた。気がつけば、ギルドのメンバーからも「ありがとう」「助かったよ」と言われることが増えていた。以前なら気づけなかった小さな感謝の言葉が、今は自分の心を温かく満たしてくれた。

「この感じ、いいかもな……」健太は小さく微笑んだ。何かを求めてばかりいた自分から、今は少しずつ与える側に立てるようになった気がする。

健太は画面越しにギルドの仲間たちと過ごすこの時間が、何よりもかけがえのないものになっていることに気づいた。ネガティブな感情を抱えているのは自分だけではない、皆それぞれに不安やストレスを抱えながら、ここで楽しいひとときを共有している。そんな仲間たちに、自分も少しでも前向きな存在として力になれたら、と今は心から思える。

「さあ、今日も頑張ろう」健太は、深夜の静かな部屋で再びギルドの仲間と向き合うために、ゲームを立ち上げた。今度こそ、居場所を見つけられたような気がした。

(完)
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