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春秋花壇

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「24時間ptとそれ以外」

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「24時間ptとそれ以外」

ライトノベル作家の春菜は、自分の作品をアルファポリスに投稿することが日課だった。彼女は小説投稿サイトのランキングに一喜一憂する生活を続けていたが、その中でも特に気になるのが「24時間ポイント」の存在だった。投稿したばかりの作品が瞬く間にポイントを稼ぐのは、確かに気分が良い。しかし、それが長続きしないこともまた現実だった。24時間が過ぎると、ポイントはあっという間にリセットされ、最初の熱狂が冷めてしまうことも少なくない。

ある日、春菜は新作のラブコメディーを投稿した。タイトルは『キミと24時間の恋』。作品は、主人公の女子高生が24時間の間だけタイムリープして、恋愛模様を繰り広げるというものだった。投稿直後から「いいね」やコメントが殺到し、春菜のスマートフォンは通知音を立て続けに鳴らし続けた。

「やった!ランキングのトップ10入りだ!」春菜は喜びに包まれた。ポイントが増えるたびに、画面を更新するのが楽しくて仕方なかった。まるで自分が主人公になったような気分で、その瞬間だけは全てが輝いて見えた。

しかし、24時間が過ぎた頃から、春菜の胸に不安がよぎり始めた。ポイントの伸びは目に見えて鈍り、ランキングも徐々に下がり始めたのだ。最初の興奮が冷めると、再び現れるのは空虚感。まるで熱に浮かされた後の冷めた現実のように、画面の向こう側には何も残っていないかのように感じられた。

「結局、24時間だけの話だったのかな…」春菜は溜息をついた。

そんな時、春菜は他の作家の作品に目を向けた。ランキング上位には24時間ポイントだけでなく、継続して高い評価を維持している作品があった。その一つが、作家名「葉月」さんの作品『いつかの約束』だった。この作品は、投稿から数週間経ってもなお、安定して高いポイントを保持していた。ランキングを見ていると、他の作品が24時間ポイントで一時的に浮上する中、この作品はしっかりと地に足をつけているように見えた。

春菜は『いつかの約束』を開いてみた。物語はゆったりと進行し、登場人物たちの繊細な心の動きが丁寧に描かれていた。派手な展開や衝撃的なプロットはないが、どこか心に沁みるような、深い感動を与える作品だった。

「これが、本物の強さなんだろうな…」春菜はそう感じた。

彼女はその日、自分の作品にコメントを書き込んでいたファンの一人からメッセージを受け取った。「24時間ポイントで上位にいると、確かにすごいけど、それだけで終わってしまうのはもったいない。春菜さんの作品はもっと深いところで人の心を動かせるものだと思いますよ。」

その言葉に、春菜の心は救われた気がした。彼女は自分の作品が一時の興奮だけではなく、読者の心に残るようなものでありたいと強く思った。そこで、春菜は次の作品に取り掛かることを決意した。今度のテーマは「時の流れと変わらない想い」。一時の盛り上がりではなく、じっくりと時間をかけて人々の心に染み渡るような物語を紡ごうと誓ったのだ。

新作の準備を進める中で、春菜はこれまで以上に細かな描写やキャラクターの成長を大切にした。24時間ポイントに頼らず、長く愛される作品を目指していた。投稿後、最初の反応は控えめだったが、少しずつ、確実にファンが増えていった。コメント欄には「続きが待ち遠しい」「この物語の行方が気になる」といった言葉が並び、春菜の作品に対する信頼が積み重ねられていくのを感じた。

春菜はそれを見て、「これが私の求めていたものだ」と実感した。瞬間的な快感ではなく、じっくりと時間をかけて育まれる感情。24時間ポイントの浮き沈みを超えて、自分の作品が読者に愛され続けることこそが、本当の意味での成功だと思った。

アルファポリスのランキングには様々な作品が並び、それぞれが異なる道を歩んでいる。24時間ポイントで一時的に光を放つ作品もあれば、地道に少しずつ評価を積み重ねる作品もある。どちらが正しいということはないが、春菜は自分の選んだ道に自信を持つことができた。

「私の物語は、時間をかけてじっくりと心に染み込んでいくもの。それが私のスタイルだから。」

彼女はパソコンの画面に向かい、次の章の執筆に取りかかった。24時間ポイントに惑わされず、自分のペースで歩んでいく。それが、春菜が見つけた新たな作家としての姿だった。作品の評価は数字で表れるものだけではなく、読者との繋がりや共感が何よりも大切なのだと、春菜は改めて思うのだった。

こうして、春菜は自分の作品を通して、また一つ成長したのだった。読者との信頼関係を築きながら、彼女はこれからも物語を紡ぎ続けるだろう。その先にどんな未来が待っているのかはわからないが、彼女の心には確かな希望が灯っていた。










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