感情

凛緒先生への想い

凛緒先生への想い

「残暑もようやく陰りを見せる時期となりましたが、お元気にお過ごしでしょうか？」と、私は手紙の冒頭に書き始めた。筆を走らせるたびに、心の中には淡い切なさが広がっていく。この手紙の宛先は凛緒（りお）先生。彼は私が心から尊敬し、憧れ続けてきた作家だ。

凛緒先生との出会いは、ちょうど三年前のことだった。私はまだ新人作家で、彼の著書に出会ったとき、その作品の深さに魅了された。物語の中に描かれる複雑な感情、緻密なプロット、その全てが私の心に響いた。そして、どうしても彼に感謝の気持ちを伝えたくなり、手紙を書いた。その手紙は、私の初めての感謝と尊敬の言葉が綴られたものだった。

それ以来、私たちは時折手紙を交わすようになった。凛緒先生は、私の書くものに対して優しく丁寧なアドバイスをくれた。彼の励ましがあったからこそ、私は作家として少しずつ成長していけたのだと感じていた。

しかし、今年の春を境に、凛緒先生からの手紙が途絶えた。彼の新作も長い間発表されず、私は彼がどうしているのか心配になった。いくつか手紙を送ったが、返事はなかった。そのことが私の胸を締め付けるようだった。

夏が過ぎ、ようやく秋の気配が漂い始めたころ、私は彼にもう一度手紙を書こうと思い立った。凛緒先生のことを思い出しながら、丁寧に言葉を選びつつ、彼の健康を気遣う一言を添えた。

「盛夏の疲れを感じやすい時期かと存じます。健康には一段とご留意ください。」と書き終えたとき、私はふと、私たちが最後に交わした言葉を思い出した。それは、彼が私に「またいつの日か、一緒に小説を書く日が訪れますように」と言ってくれたときのことだ。

その言葉に込められた優しさと期待に、私は胸が熱くなった。凛緒先生と一緒に作品を作り上げることが、私にとってどれほどの喜びになるのか、言葉に表せないほどだった。しかし、その夢が叶う前に、彼は私の前から姿を消してしまったようだった。

この手紙を書くことで、私は自分自身に問いかけていた。凛緒先生が何を考えているのか、なぜ手紙に返事をくれなくなったのか、私は知る術もなかったが、彼が元気でいることを信じるしかなかった。手紙の最後に、私はこう綴った。

「凛緒先生の小説の続編がなかなかでないので心待ちにしております。またいつの日か、一緒に小説を書く日が訪れますように。」

その言葉を綴ることで、私は再び彼への想いを確認した。彼がいなくても、彼の言葉が私の中に生き続けていることを感じたのだ。そして、その想いが私を前へ進ませてくれるのだと、私は確信した。

手紙を書き終えた後、私はそれを封筒に入れ、封をした。そして、郵便局へ向かう道すがら、凛緒先生との思い出が頭の中を巡った。彼との出会い、手紙のやり取り、そして彼から学んだことの全てが、私の作家としての人生に深く刻まれていた。

郵便局で手紙を送り出すとき、私は小さな祈りを捧げた。凛緒先生がこの手紙を読んで、少しでも元気を取り戻してくれることを。そして、いつの日か、また一緒に小説を書く日が訪れることを願って。

その後、私は自宅に戻り、自分のデスクに向かった。凛緒先生から教わった言葉の魔法を思い出しながら、新しい物語を書き始めた。それは、凛緒先生への感謝と敬意を込めた、私なりのラブレターだった。

手紙を送り出したことで、私の心は少し軽くなった。凛緒先生が元気であると信じ、彼のように強く優しい作家であり続けることを、私は心に誓った。そして、彼との再会の日を夢見ながら、私は今日もペンを走らせるのだった。