感情

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
148 / 241

不正行為

しおりを挟む
不正行為

西田真一は、社内でも一目置かれる優秀な営業マンだった。誰よりも高い売り上げを誇り、その成果は会社のトップ層からも評価されていた。しかし、その成功の裏側には誰にも知られたくない「秘密」があった。

ある日、真一のもとに一通の匿名の手紙が届いた。それは、彼が顧客から受け取った「裏金」についての告発だった。彼は顔色を変えた。この手紙が表沙汰になれば、彼のキャリアはもちろん、家族にも多大な影響が及ぶだろう。

その夜、真一は自宅で妻の美智子と夕食を囲んでいたが、手紙の内容が頭から離れず、食事も喉を通らなかった。美智子が「何かあったの?」と心配そうに尋ねたが、彼はただ曖昧に「仕事のことだ」と答えるだけだった。

翌日、真一はオフィスに出勤したものの、心ここにあらずの状態だった。手紙に記された内容が本物であれば、自分の立場は危うい。彼は思い切って、同僚の中でも特に信頼している藤田に相談を持ちかけた。

「藤田、この手紙のことをどう思う?」と真一は、声を潜めて手紙を差し出した。

藤田は一読してから眉をひそめた。「これ、かなり具体的なことが書かれているな。誰がこんなことを知っているんだ?」

「それが分からないんだ。だけど、このままだと俺は終わりだ。」真一は焦りを隠せなかった。

「いや、まだ終わりじゃないさ。」藤田は少し考え込んでから続けた。「真一、お前がこれを始めたのは何がきっかけだったんだ?」

真一は黙り込んだ。最初はただの小さな妥協だった。クライアントから感謝の気持ちとして渡されたものを、そのまま受け取った。それが成功の鍵となり、気づけば不正が習慣化していたのだ。

「どうしてもやめられなかったんだ。成果を上げるには、こうするしかなかったんだよ。」

「でも、その代償は大きいぞ。」藤田は冷静に言った。「今は、まだリカバリーできるかもしれない。だが、放置すればどうなるか…。」

真一は頭を抱えた。正しい道に戻るには、すべてを白状して謝罪するしかないのかもしれない。しかし、それには自分のプライドを捨てなければならないし、何より、失うものが多すぎる。

その夜、再び真一は眠れぬまま、ソファに座り込み考え込んだ。家族の笑顔、築き上げたキャリア、それらすべてが脅かされる中で、どうするべきかを何度も自問自答した。

翌朝、真一は一つの決断を下した。彼は上司の加藤部長に会いに行き、全てを打ち明けることにした。事務所のドアをノックし、加藤部長が「どうぞ」と声をかけた。

「部長、少しお時間をいただけますか。」真一は緊張した声で切り出した。

「どうした、西田?」加藤部長は不思議そうな顔をした。

真一は深呼吸をし、これまでの不正行為について包み隠さず話し始めた。最初はただの妥協だったこと、やがてそれが常態化し、いつの間にか自分の中で当たり前のようになってしまったこと。

加藤部長は真一の話を黙って聞いていたが、やがて重々しく口を開いた。「西田、君の話は非常に残念だ。しかし、君が自ら進んで告白したことは評価する。これが表に出る前に、自ら修正することができるなら、それが最善だ。」

真一は深く頭を下げた。「ありがとうございます。今後はこのようなことが二度と起こらないよう、全力で取り組みます。」

部長は頷き、真一にいくつかの指示を出した。問題を解決するために、どのような手続きが必要か、どのようにして会社に対する信頼を回復するかを、具体的に説明した。

オフィスを出た後、真一は少しだけ胸のつかえが取れた気がした。しかし、まだ終わったわけではない。これからも多くの壁に直面するだろう。しかし、自分が選んだ道を進む覚悟ができていた。

その夜、真一は家に帰り、妻の美智子にこれまでのことをすべて話した。美智子は驚き、しばらく黙っていたが、やがて優しく真一の手を握り締めた。「一緒に乗り越えていきましょう。」

真一は深く頷き、妻の手をしっかりと握り返した。これから先の道は決して平坦ではないだろう。しかし、今度こそ正しい道を歩むことができると信じ、再び前を向いて歩き始めた。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜合体編〜♡

x頭金x
恋愛
♡ちょっとHなショートショートつめ合わせ♡

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

処理中です...