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春秋花壇

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心の奥底にあるもの

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心の奥底にあるもの

薄暗い路地裏、ゴミ箱を漁る一匹の野良猫。その名はクロ。痩せ細った体には傷跡がいくつもあり、目は虚ろな光を放っていた。

クロは、生まれてすぐに母猫と兄弟たちとはぐれ、一人で生きてきた。毎日空腹と寒さに苦しみ、人間からの虐待にも怯えながら、必死に生き延びてきた。

ある日、クロはゴミ箱の中で、捨てられた子犬を見つけた。子犬は、まだ生まれて間もないようで、弱々しく鳴いていた。

クロは、子犬をじっと見つめた。子犬の無垢な眼差しは、クロの心を揺さぶった。

「俺も、こんな風に生まれてきたのかな?」

クロは、初めて自分の人生について考えた。これまで、ただ生き延びることに必死で、自分の心について考えたことがなかった。

クロは、子犬をそっと抱き上げた。子犬は、クロの温もりを感じて、安心したように鳴き声を止めた。

クロは、子犬を家に連れて帰ることにした。家はボロボロだったが、雨風をしのぐには十分だった。

クロは、子犬にミルクを与え、体を温めてあげた。子犬は、クロの優しさに甘え、すぐに眠りについた。

クロは、子犬の寝顔を見つめながら、心が温かくなるのを感じた。

「俺も、誰かに必要とされているんだ。」

クロは、初めて自分が愛されていると感じた。今まで、誰もクロを愛してくれなかった。クロは、ただ孤独だった。

しかし、子犬が現れてからは、クロの生活は大きく変わった。子犬は、クロにとってかけがえのない存在になった。

クロは、子犬を守るために、必死に働いた。ゴミ箱から食べ物を探したり、人間からお金をせびったりした。

クロは、子犬と一緒にいると、心が穏やかになった。子犬の無邪気な笑顔を見るたびに、クロは自然と笑顔が溢れた。

ある日、クロと子犬が遊んでいるところに、一人の少女が現れた。少女は、子犬を見て、すぐに自分の犬だと気付いた。

少女は、クロに子犬を返すように頼んだ。しかし、クロは拒否した。クロは、子犬を自分の家族だと思っていた。

少女は、悲しみに暮れた。少女は、クロに子犬を返すように何度も頼んだが、クロは聞く耳を持たなかった。

困った少女は、動物保護団体に助けを求めた。動物保護団体の職員たちは、クロを説得したが、クロは頑として譲らなかった。

最終的に、動物保護団体の職員たちは、クロから子犬を無理やり引き離した。クロは、子犬を失い、深い悲しみに沈んだ。

クロは、毎日子犬のことを思い出しては、涙を流した。クロは、子犬がいない生活が信じられなかった。

しかし、数日経つと、クロは立ち直った。クロは、子犬が幸せに暮らしていることを信じていた。そして、自分もいつか、幸せを見つけられると信じていた。

クロは、再び一人で生きていくことを決意した。クロは、子犬から教わった大切なことを胸に、これからも前を向いて歩いていく。

エピローグ

数年後、クロは元気に暮らしていた。クロは、動物保護団体でボランティアとして働いていた。クロは、動物たちの苦しみを理解し、彼らを助けるために尽力していた。

ある日、クロは散歩中に、子犬と出会った。その子犬は、クロがかつて育てていた子犬にそっくりだった。

クロは、子犬を抱き上げると、涙を流した。子犬は、クロの顔を舐めながら、優しく鳴いた。

クロは、子犬を家に連れて帰った。クロは、子犬に「シロ」という名前をつけた。

クロは、シロと幸せに暮らした。クロは、シロから、動物にも心があることを改めて知った。そして、人間も動物も、互いを尊重し、共存していくことが大切だと考えた。

クロは、シロを無理やり連れ去った少女のことを思った。

「どうか無事でありますように」

かつては敵だった存在に愛を示せるようにシロを通して育ててもらった。

愛は惜しみなく親切です。
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