さくらこものがたり

春秋花壇

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憧れのガーデナー

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「なくて七癖」

人にはそれぞれ癖がある。

たとえば、アジサイを刺し目して大切に育て

増やして植えている人もいる。

さくらこのようにただ買ってきて、並べてという人もいる。

ガーデニングにまったく興味のない人もいる。

お花にまったく興味のない人もいる。

嵯峨のおばあちゃまのように、

小さなお花は雑草にしか見えない人もいる。

いろんな人がいるから楽しいんだと思う。

でも、さくらこはガーデナーになりたいのだから

少しでもその植物の特色を知って、

しっかり育てられる人になりたい。

寄せ植えもできるようになったらうれしいな。

クリスマスローズ、ベロニカ・オックスフォードブルー、

クレマチス、ゲラニウム、シュウメイギク、エキナセア、

モナルダ、ガイラルディア、チェリーセージ、宿根サルビア・セージ。

こんな素敵な宿根草が咲き乱れていたらうれしいな。

って、またないものねだりばかりしている。

今、あるものを大切にできるようになりたい。

ポット苗から出して、そのまま植えるのではなく

根きりと呼ばれる作業もあるみたいだ。

さくらこは、園芸について何もわかっていないのかもしれない。

パンジー、ビオラひとつにしても摘心して、

たくさんお花を咲かせるのが正しい育て方なのかな。

買ってきて、すぐにお花を切ってしまうのは

とてもかわいそうな気がするけど、

あとあとその植物のためになることだってあるのだろう。

子育ての躾のように。

水と肥料だけあげてればいいのではないようだ。

もっと、勉強しないとね。

ユーチューブにはたくさんの動画があがっている。

知っている気になってるだけなんだろうな。

せっかく、ガーデニングの会に入れていただいたのだから、

謙虚になっていろいろ教わりたい。

口では、

「いろいろ教えてください」

と、頭を下げるくせに聞く耳をまったく持っていない自分に気づく。

びっくりするくらいかたくなで頑固だ。

水遣りひとつにしても、ホースで直接、水遣りできないから

だんだん足の付け根が痛くなって、

手を抜いてしまったりする。

もうちょっと様子を見て、

誰かに相談してみよう。

自分の知らない嫌な自分がいると、

それだけでびっくりしてしまう。

まだ中学1年生、13歳なのにちっとも心柔らかではなかったり……。

何かいわれると

「うるさい」

「うざい」

とさえ感じてしまう自分と折り合いがつけられない。

これって一生勉強なのかな。

同じことを言われても、

素直に聞ける人とそうじゃない人がいる。

言い方とかだけじゃなくて、

何でそうなのかよくわかっていない。

会う人会わない人がいるのかな。

嵯峨のおばあちゃまは、好きなものも好きな色も

共通点がほとんどない。

そして、はっきりと

「いや」

「きらい」

「とっともきれいに見えない」

と言う。

なのに、家族と同じくらい好きだ。

さくらこの大好きな、おおいぬのふぐりや露草を

「雑草にしか見えない」

と、のたまうのだ。

笑っちゃうほど、

「そうね」

と言う話ができない。

糖尿病がひどいから、一緒に食事に行くことも

自動販売機のジュースを楽しむこともできない。

なのに、大好きなのだ。

人間て本当に不思議。

これが、恋愛対象になる異性だったら、

「性格の不一致」

以外の何者でもないのにね。
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