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親の機嫌
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「俺んちの母ちゃんがさ、ものすごい機嫌悪くてさ」
「あるよなー、わけわかんないとき」
「勉強しろっ、勉強があんたの仕事でしょうっていうからさ」
「うん」
「仕事は家に持ち込まない主義だからっていったら、
めちゃくちゃ怒られた」
「あははは、父ちゃんのまねでもしたのか」
「親の背中を見て育てって言うから、素直に従っただけなのに」
「大人は、その日の機嫌で言うこと変わるからなー」
佐々木君は、不満げに口をとがらせて、あごを机の上に乗せた。
「おれんちなんか、ゲーム依存症のニュースが流れた途端、
買ってくれるって言ってたゲームなしになったし」
「ああ、それ、俺んちもだめだって」
「ゲーム時間、一時間とか鬼だろう」
「そうそう、準備だけで終わっちゃうって言うの」
今日は、不平不満大会なのかな。
男子も女子も風船のガス抜き。
「なー、みんなで電車の見える公園に行かないか」
「楽しそうだね、桜も満開みたいだし」
「あそこ、トイレきれいだから、すき」
「さくらこもこいよな」
「うーん、夕刊あるから」
「じゃあ、夕刊までの少しの間でいいや」
「わかった」
「こいつ、どさくさにまぎれて、チョコの恨みを晴らそうとしてる」
「なーにそれ」
「おまえ、ばらしたらぶん殴るからな」
あれ、あれあれ。なんか秘密がありそう。
もうすぐ卒業式。
みんな、少しでも、親しくなろうとしてるのかな。
ほとんどの生徒は、地元の中学校に上がるから、
大してメンバーに変わりはないんだろうに。
今日は水曜日だから、午後の授業はない。
家にかばんを置くと、まっすぐ公園に向かった。
踏切が、何本待っても開かない。
せっかくみんなと遊べるのに。
最近、さくらこは、とっても怒りぽい。
なんか、いらいらするんだよね。
たとえば、ラジオ体操から帰って、
家の流しの掃除をして学校に行くんだけど、
帰ってきたらまた汚れていて、
また掃除とか。
テーブルの上をきれいにしたはずなのに、
気がつくと、たくさんの食べかけのものが、
冷蔵庫にも入れないで、ラップだけして、
テーブルの上に置かれていたり……。
片付けても片付けてもエンドレスな感じがたまらなくいやだった。
これって普通は、親の悩みじゃないのかな。
子供がもとあった場所に戻さないとか。
いつの間にか、パパとママを責めている自分と折り合いをつけられない。
パパもママも自分も責めている。
いくら、鴨チューブで、『人も自分も責めちゃだめ』
といわれても、次から次へと沸いてきてしまう。
で、いつの間にかいらいらして、ぐすん。
おかしくもないのに
笑う練習する
作り笑い
作り笑顔
何か月か経ち
気が付くと
笑ってる自分がいる
泣くことも笑うことも
できなかったのに
凍てついていた
心の氷が溶けだす
感情のただもれ
大洪水
上手に対処できない
自分と折り合いをつける
自己肯定感
私は私が好きです
やっと踏切が開いて、公園にたどり着いた。
ほとんどの人はすでに来ていて、
「ごめん、遅くなっちゃった」
「踏み切りの性だろう。きにすんな」
佐々木君がかばってくれる。
公園の桜は、昨日、嵯峨のおばあちゃんと見に着たんだけど、
淡いピンクの桜は、昨日はまだつぼみがたくさんあったのに、
今日は満開だった。
春は、パステルカラーがよく似合う。
雲ひとつないはずの空に薄い薄い雲がたなびいている。
いつもの雲とは様子が違う。
「あの雲、変だよね」
さくらこが上を見上げていると、みんなも集まってきて、
同じように空を見ている。
「あれは、飛行機雲が薄くなってできた雲なんじゃないかな」
しばらくみんなで空を眺めていたら、
一機の飛行機が飛んでいった。
そのあとに、飛行機雲が線を描いている。
少しずつ少しずつ薄くなっていく。
「ほんとだ」
「薄くなっていってる」
「あんな淡い雲になるんだね」
日食でもあるまいに、みんなで空を眺めることなんてほとんどなかったから、
これもまた楽しい経験だった。
「さっきいってたバレンタインの恨みってなーに」
女子の何人かが、佐々木君に詰め寄る。
「こいつ、本命の女子からチョコもらえなかったんだって」
佐々木君は、クラスの人気者。
最近、男子も女子もコイバナばかり。
色気づいてるのかな。
「さむっ」
今日はやけに寒い。
「おしくらまんじゅうしようか」
みんなも寒いのか。即決。
「おしくらまんじゅう、押されて泣くな」
少しあったまってきたので、追いかけっこをして遊んだ。
活気があって、子供たちは楽しそう。
さざんかにドライフラワーのような
咲き終えた花がくっっいている。
桜がみんな好きなのは、散り際の潔さなのかもしれない。
はらはらと散るさくらは、はかないけどきれいだよね。
さくらこは、走るのが余り得意ではない。
暇を見つけて、ランニングの練習でもしようかな。
頑張ってる人を笑う権利なんて誰にもねえ。誰が何と言おうと頑張ってる人はカッコいいよ。自信持て。他人の目なんて気にせず堂々と頑張れ。頑張ってる人を頑張ってない人が笑う。人類の歴史上ずっと繰り返されてきたこの滑稽な光景に呆れて笑いが出ちまうよ。頑張ってる人はカッコいい。異論は認めない
「あるよなー、わけわかんないとき」
「勉強しろっ、勉強があんたの仕事でしょうっていうからさ」
「うん」
「仕事は家に持ち込まない主義だからっていったら、
めちゃくちゃ怒られた」
「あははは、父ちゃんのまねでもしたのか」
「親の背中を見て育てって言うから、素直に従っただけなのに」
「大人は、その日の機嫌で言うこと変わるからなー」
佐々木君は、不満げに口をとがらせて、あごを机の上に乗せた。
「おれんちなんか、ゲーム依存症のニュースが流れた途端、
買ってくれるって言ってたゲームなしになったし」
「ああ、それ、俺んちもだめだって」
「ゲーム時間、一時間とか鬼だろう」
「そうそう、準備だけで終わっちゃうって言うの」
今日は、不平不満大会なのかな。
男子も女子も風船のガス抜き。
「なー、みんなで電車の見える公園に行かないか」
「楽しそうだね、桜も満開みたいだし」
「あそこ、トイレきれいだから、すき」
「さくらこもこいよな」
「うーん、夕刊あるから」
「じゃあ、夕刊までの少しの間でいいや」
「わかった」
「こいつ、どさくさにまぎれて、チョコの恨みを晴らそうとしてる」
「なーにそれ」
「おまえ、ばらしたらぶん殴るからな」
あれ、あれあれ。なんか秘密がありそう。
もうすぐ卒業式。
みんな、少しでも、親しくなろうとしてるのかな。
ほとんどの生徒は、地元の中学校に上がるから、
大してメンバーに変わりはないんだろうに。
今日は水曜日だから、午後の授業はない。
家にかばんを置くと、まっすぐ公園に向かった。
踏切が、何本待っても開かない。
せっかくみんなと遊べるのに。
最近、さくらこは、とっても怒りぽい。
なんか、いらいらするんだよね。
たとえば、ラジオ体操から帰って、
家の流しの掃除をして学校に行くんだけど、
帰ってきたらまた汚れていて、
また掃除とか。
テーブルの上をきれいにしたはずなのに、
気がつくと、たくさんの食べかけのものが、
冷蔵庫にも入れないで、ラップだけして、
テーブルの上に置かれていたり……。
片付けても片付けてもエンドレスな感じがたまらなくいやだった。
これって普通は、親の悩みじゃないのかな。
子供がもとあった場所に戻さないとか。
いつの間にか、パパとママを責めている自分と折り合いをつけられない。
パパもママも自分も責めている。
いくら、鴨チューブで、『人も自分も責めちゃだめ』
といわれても、次から次へと沸いてきてしまう。
で、いつの間にかいらいらして、ぐすん。
おかしくもないのに
笑う練習する
作り笑い
作り笑顔
何か月か経ち
気が付くと
笑ってる自分がいる
泣くことも笑うことも
できなかったのに
凍てついていた
心の氷が溶けだす
感情のただもれ
大洪水
上手に対処できない
自分と折り合いをつける
自己肯定感
私は私が好きです
やっと踏切が開いて、公園にたどり着いた。
ほとんどの人はすでに来ていて、
「ごめん、遅くなっちゃった」
「踏み切りの性だろう。きにすんな」
佐々木君がかばってくれる。
公園の桜は、昨日、嵯峨のおばあちゃんと見に着たんだけど、
淡いピンクの桜は、昨日はまだつぼみがたくさんあったのに、
今日は満開だった。
春は、パステルカラーがよく似合う。
雲ひとつないはずの空に薄い薄い雲がたなびいている。
いつもの雲とは様子が違う。
「あの雲、変だよね」
さくらこが上を見上げていると、みんなも集まってきて、
同じように空を見ている。
「あれは、飛行機雲が薄くなってできた雲なんじゃないかな」
しばらくみんなで空を眺めていたら、
一機の飛行機が飛んでいった。
そのあとに、飛行機雲が線を描いている。
少しずつ少しずつ薄くなっていく。
「ほんとだ」
「薄くなっていってる」
「あんな淡い雲になるんだね」
日食でもあるまいに、みんなで空を眺めることなんてほとんどなかったから、
これもまた楽しい経験だった。
「さっきいってたバレンタインの恨みってなーに」
女子の何人かが、佐々木君に詰め寄る。
「こいつ、本命の女子からチョコもらえなかったんだって」
佐々木君は、クラスの人気者。
最近、男子も女子もコイバナばかり。
色気づいてるのかな。
「さむっ」
今日はやけに寒い。
「おしくらまんじゅうしようか」
みんなも寒いのか。即決。
「おしくらまんじゅう、押されて泣くな」
少しあったまってきたので、追いかけっこをして遊んだ。
活気があって、子供たちは楽しそう。
さざんかにドライフラワーのような
咲き終えた花がくっっいている。
桜がみんな好きなのは、散り際の潔さなのかもしれない。
はらはらと散るさくらは、はかないけどきれいだよね。
さくらこは、走るのが余り得意ではない。
暇を見つけて、ランニングの練習でもしようかな。
頑張ってる人を笑う権利なんて誰にもねえ。誰が何と言おうと頑張ってる人はカッコいいよ。自信持て。他人の目なんて気にせず堂々と頑張れ。頑張ってる人を頑張ってない人が笑う。人類の歴史上ずっと繰り返されてきたこの滑稽な光景に呆れて笑いが出ちまうよ。頑張ってる人はカッコいい。異論は認めない
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