陽だまりの家

焼肉パーティー

焼肉パーティー

サクラは焼肉の匂いに包まれながら、コンロの前に座った。今日は特別な日だ。うつ病のリハビリも続いていて、心の中で重い雲がずっと漂っていたけれど、今は少しだけ、子供たちと一緒に楽しいひとときを過ごすために、その重さを一時的に下ろすことに決めた。精神障碍者年金と生活保護で細々と暮らしているけれど、子供たちの笑顔を守りながら、少しでも楽しさを共有したくて、思い切って焼肉を買ってきた。

「ママ、お肉おいしそう！」ハルが目を輝かせて、サクラの隣に座った。

「そうね、今日はみんなで焼肉パーティーよ。」サクラは軽く微笑んで、コンロの火を調整しながら、子供たちの様子を見守った。ヒナとミクも隣でお肉を見て、興奮している。

「お肉は、どれから焼こうか？」サクラが言うと、ハルが手を挙げた。

「私、これ食べたい！」ハルが指差したのは、厚切りのカルビだ。

サクラはそのカルビをフライパンに乗せ、ジューっと音を立てて焼き始めた。煙が立ち込め、焼ける香りが部屋を満たす。サクラは息をのむようにその香りを楽しんだ。久しぶりに、こんなにも幸せな気分を感じていた。

「ママ、サンチュちょうだい！」ヒナが元気に言うと、サクラはすぐにサンチュを取り、子供たちに渡した。

「お肉をサンチュでくるんで食べるのが一番おいしいよ。」サクラは言いながら、自分も一枚サンチュを手に取った。お肉を包んで、一口で頬張る。お肉の甘みとタレの味が口の中で広がり、幸せな気分が込み上げてくる。

子供たちも続けて、お肉をサンチュで包んで、むしゃむしゃ食べ始めた。小さな手でサンチュをしっかりと握りしめ、お肉をくるんで、うれしそうにかみかみしている。その姿を見ていると、サクラは心から幸せを感じた。こうして、家族みんなで食卓を囲み、笑顔で過ごす時間が何よりも大切だと、再認識した。

「ごっくんこ。」ミクが一生懸命、お肉を飲み込んで言った。

サクラは思わず笑みをこぼした。「そうだね、ミク。よくできたね。」

焼けたカルビをサンチュに包んで食べるたびに、サクラの心も温かくなっていった。うつ病の症状があって、日々の生活は厳しいけれど、こんな風に子供たちと一緒に楽しむことができる時間は、何にも代えがたい宝物のように感じた。

「ママ、これおいしいね！」ハルが笑顔で言うと、サクラはうなずきながら答えた。「うん、とってもおいしいね。」

焼肉のタレが手にこびりついた子供たちの顔や手を見て、サクラは少しずつ自分の内側にある重さを解放していくのを感じた。生活は簡単ではないけれど、今この瞬間に、家族が一緒に過ごしている幸せを噛みしめることができる。それだけで、心が少しだけ軽くなった気がした。

「さあ、みんな、まだまだ食べてね。」サクラは焼けたお肉を次々とサンチュに乗せながら言った。

子供たちはうれしそうに肉を頬張り、サクラもまた、笑顔でお肉を食べ続けた。サンチュに包み、むしゃむしゃかみかみ。どこか遠くからでも響く、家族の楽しげな笑い声。それは、サクラにとって、どんな困難な日々にも負けない力を与えてくれる瞬間だった。

「この瞬間を大切にしよう。」サクラは心の中で誓った。明日がどうなるか分からなくても、今ここにいる大切な家族と一緒に笑って過ごす時間を、これからも大事にしようと。

そして、サクラは焼肉を食べ終えた後、子供たちと一緒にお風呂に入り、寝室に戻ると、みんなで一緒に眠った。夜が深くなるにつれて、部屋の中は静かになり、サクラは静かに目を閉じた。

「明日も頑張ろう。」彼女は心の中で呟いた。どんなに困難な日々でも、家族と一緒に笑い合うことができれば、それだけで前を向ける。