陽だまりの家

サクラの選択

サクラの選択

介護という仕事に就いたサクラだったが、現実は厳しかった。夫が亡くなった後、手に職をつけようと介護職員初任者研修を受けたものの、それだけでは十分な収入を得ることは難しい。特に夜勤ができないとなれば、収入はさらに限られる。

「3人の子どもを家に置いて夜勤なんて絶対無理だよね」

サクラはそう呟きながら、働き方を模索していた。子どもたちを犠牲にすることなく、生活を支える方法を見つけなければならない。しかし、それを実現するためには大きな決断と行動が求められた。

サクラは心の中で葛藤していた。生活保護を受けながら過ごす2年間、少しずつ貯金を増やしてきたが、その額が100万円を超えた今、「保護の打ち切り」という新たな恐怖が彼女を襲っていた。

「働かなくても生活が保障されるのは、ありがたいことだ。でも、このままでいいわけがない」

生活保護に依存してしまうことへの罪悪感と、そこから抜け出すことへの不安が交錯する。2年間という月日は、知らず知らずのうちに彼女を「守られた場所」に縛り付けていた。

しかし、サクラには分かっていた。いくら恐ろしくても、自分で稼ぐ道を選ばなければ、この先何も変わらない。たとえ収入が生活保護を超えなくても、「働くこと」そのものに意味がある。それを心から信じるには、サクラ自身が大きく変わる必要があった。

「まずは、一歩ずつ。夜勤が無理なら、日中の仕事を増やせるよう工夫しよう。それに、子どもたちと一緒に過ごせる時間も大事にしながら…」

サクラは手元のスマートフォンで求人情報を調べ始めた。病院や施設の介護職員以外にも、訪問介護や短時間勤務の募集がいくつかあった。どれもすぐに決断できるものではなかったが、選択肢があることに少しだけ希望を感じた。

「ここから抜け出さなきゃ」

サクラは深呼吸をした。状況を変えるためには、勇気を持って行動するしかない。彼女は自分の限界を少しずつ押し広げ、3人の子どもたちと自分自身の未来のために進んでいく決意を固めたのだった。

生活保護依存

それは、ぬるま湯にどっぷりつかる恐ろしい罠だった。

貯蓄額100万がなくなるまで、生活保護を打ち切ってもらおうか?

サクラは想像してみた。

寒い雪の日に家族で露天風呂に入っている。

はじめはとても心地よかったのだが、外が寒くて

なかなか風呂から上がることができない。

今の自分たちはそんな感じなのかな?

それがいいとか悪いとか、正か誤かじゃなくて

人間は感情の動物なのだ。

サクラはその感覚に囚われていた。生活保護の安定した支援は、確かに心地よいものだった。しかし、いつまでもそのままではいられないことも分かっていた。雪の日の温泉のように、最初は温かくて心地よくても、外の冷たさに耐えられなくなることに気づき始めていた。

「私、変わらないと」

サクラは静かに呟くと、また一歩を踏み出す覚悟を決めた。安心していてはいけないことを、心の奥底で感じていた。自分の力で未来を切り開くためには、まずそのぬるま湯から抜け出さなければならない。