陽だまりの家

春秋花壇

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褒め上手、叱り上手

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褒め上手、叱り上手

サクラは、子どもたちが成長する過程で最も重要なことの一つは「どう声をかけるか」ということだと感じていた。自分自身が母親となり、日々の育児の中で何度も心の中で問いかけた。「どうしてもっと優しくできないのだろうか?」や「どうして叱ってしまうのだろうか?」と、言葉の力がどれほど子どもたちに影響を与えるのかを実感していた。

サクラが育った家庭も、決して温かいだけの環境ではなかった。おじいちゃんは厳しく、しかし愛情をもって育ててくれた。おじいちゃんが言った言葉を、サクラは今でも覚えている。「文から学べなかったことは社会から学べばいい。」その言葉には、学びの本質についての深い考えが込められていた。

特に「ほめ方」「叱り方」に関しては、おじいちゃんは非常に巧妙で、子どもに対しても無条件の愛情をもって接していた。おじいちゃんのほめ方は、子どもの行動に対する評価を超えて、その子がどう成長しようとしているのかを尊重するものだった。叱る時も、ただ単に行動を否定するのではなく、どうしてその行動が望ましくないのかを丁寧に伝え、子どもが自分で気づくことを促すような方法だった。

サクラはその教育を受けて、親としてどんな声かけをするべきかを考えた。子どもたちには、ただ「すごい!」や「えらい!」といった評価ではなく、彼らがどれだけ努力し、試行錯誤しているのかを見守り、その過程をほめることが大切だと気づいた。

ある日、サクラの家では、子どもたちがそれぞれお絵かきや工作をしていた。長女のハルは静かに集中して絵を描き、次女のヒナは大きな積み木を使って複雑な構造物を作り上げている。サクラはその姿を見て、どちらも素晴らしいと感じたが、どう声をかけるべきかを悩んでいた。

「すごいね!」と声をかけることは簡単だ。しかし、サクラはその一言が子どもたちにどう受け取られるのかを考えた。すべてが「すごい!」と片付けられてしまうと、子どもたちが本当の意味で自分の成長を実感することができないのではないかと感じたのだ。

そこでサクラは、まずはヒナに近づき、こう言った。「ヒナ、これすごいね。どうやってここを作ったの?」ヒナは照れくさそうに答える。「うん、積み木をこうやって重ねて、ちょっと倒れそうになったけど、ちゃんと支えてみたんだ。」

サクラは微笑みながら頷き、「そうだね。支えるって大事だよね。すごくよく考えたね。」と伝えた。ヒナはその言葉に満足そうな顔をして、また積み木の構造を作り直し始めた。

次に、サクラはハルのところに行った。「ハル、今描いている絵、すごく素敵だね。何を描こうとしているの?」ハルは少し考え、「私は動物を描いてるの。最初はうまくいかなかったけど、少しずつ形が見えてきて楽しいよ。」と答えた。

サクラは優しく頷きながら、「その調子だね。うまくいかなかった時にどうすればいいのかを考えて、試してみるのが大事だよ。ハルはそのプロセスを大切にしているんだね。」と言った。

その後、サクラは思わず自分のやり方に少し驚いた。自分が無意識に使っていた「すごい!」や「よくできた!」という言葉は、実は子どもたちに対して「もっと上手にやらないといけない」というプレッシャーを与えることがあった。だから、サクラはもっとその子が努力している過程を見守り、理解し、伝えることを意識して言葉を選ぶようにした。

一方で、叱り方にも注意が必要だとサクラは感じていた。ヒナが片付けをしなかったとき、サクラは一度、強く「ちゃんと片付けなさい!」と言ってしまった。しかし、その言葉がヒナにどんな影響を与えるかを考えると、心の中で反省した。

「どうして片付けないの?」と責めるのではなく、「ヒナ、片付けをすることはみんなが気持ちよく過ごすために大切なことなんだよ。何か手伝おうか?」と優しく声をかけた。

ヒナはその言葉を聞いて、サクラに「うん、ありがとう」と微笑みながら、少しずつ片付けを始めた。

サクラはその時、モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育の考え方が本当に大切だと感じた。子どもを一人の市民として尊重し、自己主導で学びながら成長していける環境を整えることが、親の大切な役割だと再確認した。

サクラの心の中には、今後も続けていきたい「ほめ方」と「叱り方」が明確になっていた。それは、子どもたちが自分の力で考え、成長していくためのサポートをすること。そして、何よりも大切なのは、無条件で子どもを信じて接することだということを、サクラは深く実感していた。







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