陽だまりの家

夢と希望のネットデビュー

夢と希望のネットデビュー

サクラは、大きな壁絵を眺めながら、少しずつ心が温かくなるのを感じていた。子どもたちと一緒に描いたこの絵は、ただのアートではない。家族全員が集まり、時間をかけて作り上げた大切な宝物。何気ない日常の中で、こうして一つの作品を完成させたことが、彼女にとってはとても特別な意味を持っていた。

「これ、みんなに見てもらいたいな…」サクラは静かに思った。以前からSNSに興味があったものの、気後れして踏み出せずにいた。過去の自分に自信がなく、外の世界と繋がることに対して恐怖を感じていたからだ。でも、今は違う。今のサクラには、少しずつ自信がついてきた。壁絵を描く過程で、家族との絆を強く感じることができたからこそ、今度はその絆を広く世界に発信したいと思った。

サクラは、自分のスマホを手に取り、壁絵の写真を撮影した。大きく広がる虹、鮮やかな花々、そして太陽のような丸。どれもが、家族みんなの心の中で育ったものだ。サクラは写真を編集して、色味を少し調整し、最後に「家族の絆」とメッセージを添えた。

「よし、投稿してみよう。」サクラは覚悟を決めて、SNSのXを立ち上げた。アカウント名はシンプルに「サクラの家族アルバム」とした。最初はどんな反応があるのか不安だったが、それ以上に自分の想いを伝えたかった。

投稿ボタンを押すと、画面に「公開しました」の文字が現れる。サクラの胸はドキドキしていた。これまで、他人の目を恐れて閉じ込めていた自分の思いを、初めて世界に放った瞬間だった。

その後、サクラは新たにブログを立ち上げることに決めた。ブログは、「家族と共に育てる毎日」というテーマで、日常の出来事や思いを綴る場所にすることにした。彼女は、少しずつ絵を描くことの楽しさや、家族で過ごす時間の大切さ、そして母親としての気づきをブログに書き留めていくことを決めた。

初めての記事は、家族アルバムとしての壁絵の制作過程を書いたものだった。そこには、子どもたちとのやりとり、サクラ自身が絵を描くことで感じた心の変化、そして「みんなで何かを作り上げる喜び」についてが綴られていた。

ブログのデザインもシンプルに、温かみのある色合いを選んだ。背景には、子どもたちが描いた絵を数枚入れ、写真を中心に日々の出来事を振り返るような形にした。サクラは、「ここに、自分の気持ちをすべて詰め込んでいこう」と心に決めた。

数日後、初めてブログの記事にコメントがついた。それは、サクラが投稿した壁絵の写真に対するものだった。「素敵な絵ですね！」「家族の絆が感じられます」という温かい言葉が並び、サクラは思わず涙ぐんだ。最初の一歩を踏み出すのは怖かったが、反応があることで、彼女はその一歩が間違っていなかったことを確信した。

「こんなに嬉しいなんて…」サクラはしばらくそのコメントを見つめていた。自分が他の人々と繋がり、共感を得られることの幸せを感じていた。

その後、サクラは定期的にブログを更新し、SNSにも新しい記事や写真を投稿していった。家族との日常、絵を描く過程、おやつを作る楽しみ、そしてサクラが育てている小さな庭の花々。すべてが、彼女にとっては大切な瞬間だった。それらを言葉にし、写真に収めて、インターネットの世界で分かち合うことで、サクラは自分の存在が少しずつ広がっていくのを感じていた。

サクラはまた、自分の絵や家族の絵を展示することを夢見ていた。いつか、もっと大きな形で自分の想いを表現したいと思っていた。壁絵が完成したその日から、サクラの心は、さらに自由に、そして豊かになっていった。

SNSのフォロワー数が少しずつ増え、ブログの読者も増えてきた。サクラは、最初の不安を乗り越え、今は自分のペースで無理なく発信できるようになった。サクラの投稿には、同じように家族を大切にしている人々からの共感や励ましのメッセージが届くようになり、サクラはそのたびに温かい気持ちを抱いていた。

「これからも、私のペースで続けていこう。少しずつ、絵と一緒に成長していこう。」サクラは、そう心に誓った。

壁に描いた絵が、サクラの心に刻まれたように、今度はネット上でサクラ自身の物語が広がっていく。夢と希望を持って、家族と共に歩んでいくその道は、どんどん明るく、色鮮やかになっていった。