陽だまりの家

ホットプレートの焼肉パーティー

ホットプレートの焼肉パーティー

サクラは台所で冷蔵庫の中を覗き込んでいた。最近、食卓に並ぶ料理がいつも同じようなメニューばかりだと感じていた。煮物、炒め物、時々カレー。子どもたちが嫌がらない定番メニューばかり作ってしまうのは、手間と疲れを考えたら仕方ないと思っていたが、さすがに飽きてきた。

「たまには、ちょっと特別なことをしようか。」

サクラはふと思い立ち、買い物リストを作り始めた。ホットプレートを使って焼肉パーティーを開こう。焼肉なら、子どもたちも喜ぶはずだ。

その日の夕方、スーパーで肉や野菜を買い込んだサクラは、家に戻るとすぐに準備を始めた。冷蔵庫から取り出したマーマレードの瓶を手に取りながら、ついに「隠し味」を試すことに決めた。

「ミクも2歳を過ぎたし、少しだけ蜂蜜を足してみようかな。」

マーマレードと蜂蜜を醤油に混ぜ、タレを仕込んでいく。甘みとフルーティーな香りがキッチンに広がり、サクラは少しワクワクしてきた。

ホットプレートをテーブルにセットし、サクラが準備を進めていると、子どもたちが次々とリビングにやってきた。

「ママ、今日はなに？」ハルが興味津々な顔で聞く。

「今日は焼肉パーティーよ！」

その言葉に、ハルもヒナも「やったー！」と歓声をあげた。ミクもつられて「パーティー！パーティー！」と小さな手を叩いて喜んでいる。

テーブルの上には、肉、野菜、ウインナーが彩りよく並べられ、子どもたちの目は輝いていた。

「これ、ママが特別なタレを作ったから、みんなで味わってみてね。」

ホットプレートが熱されると、ジュウジュウという心地よい音とともに、肉の香ばしい香りが部屋に漂い始めた。

「ハル、野菜も焼こうね。」サクラが言うと、ハルは真剣な表情でピーマンやしいたけをホットプレートに並べた。

「ヒナはウインナーをお願いね。」

「わかった！」ヒナは楽しそうにトングを握りしめた。

ミクはまだ何をすればいいかわからない様子だったが、サクラが「ミクは食べる係ね！」と言うと、「はーい！」と元気に答えた。

焼けた肉をタレにつけて一口食べると、ハルが目を丸くした。「ママ、このタレすごくおいしい！」

「ほんとだ！甘くてフルーツみたい！」ヒナも嬉しそうに声を上げた。

「マーマレードが入ってるのよ。」

「マーマレードってなに？」ハルが首をかしげる。

「オレンジのジャムみたいなものよ。ちょっと苦みがあるけど、お肉と一緒に食べるとおいしいの。」

ミクはまだタレをつけずにそのまま食べていたが、満足そうに笑顔を見せていた。その姿を見て、サクラは心が温かくなった。

焼肉パーティーの間、子どもたちはいつも以上に元気だった。ハルとヒナが肉を取り合い、ミクがウインナーを独占しようとする様子に、サクラは思わず笑ってしまう。

「今日は楽しいね。」

ハルのその一言に、サクラの胸が少し軽くなった気がした。最近の生活は決して楽ではなかったが、こうして子どもたちと笑顔で過ごせる時間が、彼女にとって何よりの救いだった。

パーティーが終わり、子どもたちが満足そうに布団に入ったあと、サクラは台所で一人、残った皿を洗いながら考えていた。

「こんな小さな幸せでも、十分だよね。」

ふと窓の外を見ると、夜空に星が瞬いている。サクラはその星を見ながら、明日も子どもたちと笑顔で過ごせるようにと心の中で願った。

「またやろう、焼肉パーティー。」

サクラの顔には、少しだけ自信に満ちた笑顔が浮かんでいた。