陽だまりの家

リースを作る日

リースを作る日

秋の風が心地よく、サクラは子供たちと一緒に家の中で手を動かしていた。先日、雑木林で遊んだ時に集めた松ぼっくりや小枝、そしてどんぐりの殻斗。それらを使って、リースを作ることにしたのだ。サクラは、こうした小さな活動が家族にとっての特別な思い出になると信じていた。

「ハル、これを使ってみて！」サクラは、長女のハル（5歳）に松ぼっくりを手渡した。ハルは目を輝かせ、「うん、ママ！」と元気に返事をした。ハルの手は小さいが、母と一緒に何かを作ることに喜びを感じているのが伝わってきた。

次女のヒナ（3歳）は、サクラの足元で小枝を集めて遊んでいる。彼女はまだ言葉があまり出ないが、その目には無邪気な好奇心が宿っていた。サクラはそんなヒナを見つめながら、愛おしさが溢れてくる。三女のミク（1歳）は、サクラの隣でおもちゃのリースを口に入れたりして遊んでいる。ミクもまた、この瞬間を共有しているのだ。

「さあ、みんなで集めたものを使って、素敵なリースを作ろう！」サクラは言いながら、いくつかの材料をテーブルの上に並べた。子供たちの手元には、松ぼっくりや小枝、殻斗があふれ、創造力をかき立てる材料が揃っていた。

サクラは自分の心の中にある不安や恐れを忘れようとした。この数ヶ月間、彼女は夫を失った悲しみと、育児と向き合う日々の中でうつ病に悩まされていた。生活は厳しく、精神障害者年金と生活保護で何とかやりくりしていたが、子供たちの笑顔が彼女を支えてくれていた。

「ママ、これはどうやってくっつけるの？」ハルが松ぼっくりを持ちながら尋ねてきた。サクラは、子供たちと一緒に楽しむための簡単な方法を考え、「糊を使ってくっつけるよ。これをこうして、ああして…」と説明した。

手先が不器用なヒナは、指を使って小枝をつなげるのに苦労していたが、頑張っている姿にサクラは微笑みを浮かべた。「ヒナ、上手だね！もっと頑張って！」と励ますと、ヒナは嬉しそうににっこり笑った。サクラは、その笑顔を見て、少しずつ心が軽くなっていくのを感じた。

ミクが無邪気に笑うと、ハルとヒナもその笑顔に引き寄せられ、周囲が明るい雰囲気に包まれた。サクラは、彼女たちの笑い声が心の傷を癒していることを実感した。この瞬間、彼女は家族の絆を再確認し、孤独ではないと感じた。

リースの形が徐々に出来上がっていく中、サクラは思い出に浸った。夫と共に過ごした幸せな日々や、あの時の笑顔。夫の死後、彼女はその思い出を抱えながら、今は子供たちと共に新たな思い出を作っている。彼女の心には、夫の存在がいつもあるのだ。

「これ、完成した！」とハルが声を上げる。サクラは驚いて振り返ると、ハルが手にしたリースが見事に完成していた。小枝や松ぼっくり、殻斗が美しく組み合わさり、まるで自然の美しさが凝縮されたような作品になっていた。

「すごい、ハル！素敵なリースだね！」サクラはハルを褒め、彼女の頑張りを讃えた。ヒナも嬉しそうに微笑み、ミクも無邪気に手をたたいて喜んでいる。

「これをお家の玄関に飾ろうか？」サクラは提案した。子供たちは大きく頷き、家族みんなでリースを玄関に飾ることにした。サクラはその瞬間、心の中に小さな希望の光が灯るのを感じた。彼女たちの作ったリースが、家族の絆を深め、厳しい現実を少しでも和らげてくれることを願った。

夕方になり、日が沈みかけていた。子供たちをお風呂に入れる時間が近づいてきた。サクラは、今日の思い出を胸に、子供たちの笑顔がある限り、どんな困難も乗り越えられると感じていた。彼女は母としての役割を全うし、子供たちと共に明日へと歩んでいくのだ。

「今日のリース、絶対に素敵だね！」サクラは心の中で呟いた。その言葉を、子供たちと共に未来に繋げていく決意を新たにした。彼女の家族が築く思い出は、決して消えることのない、大切な宝物になるだろう。