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春秋花壇

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認知症介護基礎研修

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認知症介護基礎研修

介護業界で最も簡単だと言われる資格、認知症介護基礎研修について、サクラは心の中で決意を新たにした。自分の状況を少しでも改善するために、この資格を取得してみようと考えたのだ。

サクラは、子供たちを保育園に預けた後、認知症介護基礎研修の講座に申し込んだ。彼女の心には、期待と不安が入り混じっていた。「本当にこれが私の助けになるのかな?」と思いながらも、新しい知識を得ることで自分の働きが評価されることを願っていた。

講座の日、サクラは緊張しながら会場に向かった。多くの参加者がいて、皆それぞれの理由でこの講座を受けているのだと感じた。講義が始まると、講師の話はわかりやすく、認知症の理解や対応方法について具体的な例が紹介された。サクラはメモを取りながら、興味深く耳を傾けた。

「認知症の人には、思いやりが大切です。そして、どんな時でもその人の尊厳を忘れないことが重要です」と、講師の言葉が心に響いた。サクラは、今までの自分の介護のやり方を振り返り、改めてその意味を考えさせられた。

6時間の講義が終わり、修了証を手にした時、サクラの心には達成感があふれていた。「私、やった!」と小さく声に出すと、周りの参加者も笑顔で頷いていた。新たに得た知識が、これからの自分の働きに活かされることを強く信じていた。

家に帰ると、サクラはハルに「ママ、今日は何をしたの?」と聞かれ、誇らしげに修了証を見せた。「これで、もっとお仕事が上手になるよ!」と答えると、ハルも嬉しそうに笑った。その笑顔を見て、サクラはこの講座に参加した意味を再確認した。

その後、サクラは新たな知識を活かすため、介護の現場での実践に力を入れ始めた。入居者たちに対する接し方も変わり、認知症の方々とのコミュニケーションがスムーズになった。彼女の変化を周囲も感じ取り、同僚たちからも「サクラさん、最近いい感じだね!」と声をかけられることが増えた。

「もっと頑張れるかもしれない」と思ったサクラは、さらなるスキルアップを目指して次の資格、介護職員初任者研修を受けることを決意した。この資格を取得すれば、給料が少しでも上がる可能性がある。それに、介護の知識と技術を身につけることで、より多くの人に貢献できるかもしれないと考えた。

介護職員初任者研修の講座も、認知症介護基礎研修同様、比較的受けやすい内容だったが、サクラはより真剣に取り組んだ。講義や実習を通じて、介護の基礎技術や、法律、倫理についての理解を深めることができた。特に実習では、実際に入居者と接することで、介護の仕事の奥深さを実感した。

「私は人を支える仕事をしているんだ」と、サクラは心の中で何度も繰り返した。自分の仕事が、入居者たちの生活にとってどれほど重要かを理解することで、モチベーションが高まった。

資格を取得し、日々の業務をこなす中で、サクラは小さな成功を積み重ねていった。時には辛いこともあったが、それでも彼女は前を向き続けた。自分の力で少しでも家庭を支え、子供たちの笑顔を守るために、懸命に働いた。

ある日、施設の管理者から「サクラさん、最近のあなたの働きが素晴らしいですね。今度、リーダーシップ研修にも参加してみませんか?」と声をかけられた。その言葉を聞いた瞬間、サクラの心は嬉しさでいっぱいになった。自分が少しずつ認められていることを実感し、これからも頑張る力が湧いてきた。

サクラは、介護の道を選んだことに誇りを持ちながら、これからも自分自身を磨き続ける決意を固めた。彼女は、認知症介護基礎研修を通じて得た知識を活かし、子供たちの未来のために、介護職としての自分を成長させていくのだった。








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