陽だまりの家

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
35 / 191

ヒナの冒険

しおりを挟む
ヒナの冒険

ヒナは3歳。小さな体に無限の好奇心が詰まっている。バーベキュー広場の賑やかな雰囲気に心が弾んでいた。ママが肉を焼いている間、ヒナはお姉ちゃんのハルと一緒に遊ぶつもりだった。しかし、少し目を離したすきに、ヒナは自分の足で新しい世界を探検したいと思った。

周りを見渡し、何かおいしそうな匂いがする方向へと足を進める。道を横切り、広場の外へと出ると、知らない景色が広がっていた。ヒナは、見たことのない景色にワクワクしながらも、少し不安を感じ始めた。

「ママ、どこ?」ヒナは大声で叫んだが、返事はない。心の中で何かがざわざわとし始める。知らない道を歩くのは楽しいけれど、ママの温かい手がなくて、少し寂しく感じていた。

さらに歩いていると、ふと目に飛び込んできたのは、楽しそうな遊び場だった。遊具が光り輝いていて、子供たちが笑い声を上げている。その姿を見て、ヒナの心は再び躍り上がった。遊びたくてたまらなくなり、足は自然とそちらへ向かってしまった。

遊び場で遊ぶ子供たちの中に混じり、ヒナはしばらく遊んでいた。しかし、楽しい時間が過ぎていく中で、ふと周囲を見ると、どこかで見た風景がないことに気がついた。「ママ!」と叫びながら、ヒナは遊びをやめ、あたりをキョロキョロと見回す。しかし、知らない場所にいるという不安が急に押し寄せてきた。

「どうしよう、どうしよう」と心の中で繰り返し、少しずつ恐怖が広がる。ヒナは、自分がどこにいるのか、どうやって戻ればいいのかわからなかった。小さな手を握りしめながら、涙がこぼれそうになった。「ママ、早く来て…」と、思わず呟いた。

その時、突然、警察官がヒナに近づいてきた。「こんにちは、小さな冒険者。君は一人でここに来たのかな?」ヒナは少しびっくりしたが、警察官の優しい声に少し安心した。「ママを探してるの」と、ヒナは答えた。

警察官は優しくヒナの手を取り、「君は安全だから大丈夫だよ。お母さんが心配しているから、一緒に行こう」と言った。ヒナは少しだけ怖かったが、警察官が優しい笑顔を見せてくれたので、少し安心した。彼に手を引かれながら、警察署に向かう道すがら、ヒナはどんな気持ちで過ごすことになるのかと考えた。

警察署に到着すると、白い壁と明るいライトが印象的だった。ヒナは心が少し落ち着くのを感じた。警察官たちが優しく話しかけてくれ、ヒナは安心感を覚えた。「もうすぐママが来るよ」と言われ、心が少しだけ軽くなった。

待つ間、ヒナは警察署の中を見回した。周囲には制服を着た大人たちがいて、みんなが忙しそうに動き回っていた。その姿を見ながら、ヒナは自分も早くママに会いたいと強く思った。どんなに広い遊び場でも、やっぱりママのそばが一番だ。

やがて、ヒナの視界に見慣れた姿が現れた。ママが警察官と一緒にやって来たのだ。ヒナはその瞬間、心が弾むのを感じた。「ママ!」と叫びながら、彼女の元へ走り寄った。ママが優しく抱きしめてくれるその瞬間、心の中の不安がすべて消えていくのを感じた。

「もう二度と、私から離れないでね。約束だよ」と言うママに、ヒナは素直に「うん、約束!」と返事をした。ママと一緒にいると、どんなことがあっても大丈夫だと感じる。ママの温かい手をしっかりと握りしめながら、ヒナはこれからもずっと一緒にいると決心した。

帰り道、ヒナはママの手を握りしめて、心が満たされるのを感じていた。彼女の小さな心の中で、今日の冒険は少し特別な思い出になりそうだ。たとえ迷子になったとしても、ママの愛はいつも彼女を守ってくれるのだと確信しながら、ヒナは笑顔を浮かべた。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

感情

春秋花壇
現代文学
感情

注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

春秋花壇
現代文学
注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本史

春秋花壇
現代文学
日本史を学ぶメリット 日本史を学ぶことは、私たちに様々なメリットをもたらします。以下、そのメリットをいくつか紹介します。 1. 現代社会への理解を深める 日本史は、現在の日本の政治、経済、文化、社会の基盤となった出来事や人物を学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、現代社会がどのように形成されてきたのかを理解することができます。 2. 思考力・判断力を養う 日本史は、過去の出来事について様々な資料に基づいて考察する学問です。日本史を学ぶことで、資料を読み解く力、多様な視点から物事を考える力、論理的に思考する力、自分の考えをまとめる力などを養うことができます。 3. 人間性を深める 日本史は、過去の偉人たちの功績や失敗、人々の暮らし、文化などを学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、人間としての生き方や価値観について考え、人間性を深めることができます。 4. 国際社会への理解を深める 日本史は、日本と他の国との関係についても学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、国際社会における日本の役割や責任について理解することができます。 5. 教養を身につける 日本史は、日本の伝統文化や歴史的な建造物などに関する知識も学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、教養を身につけることができます。 日本史を学ぶことは、単に過去を知るだけでなく、未来を生き抜くための力となります。 日本史の学び方 日本史を学ぶ方法は、教科書を読んだり、歴史小説を読んだり、歴史映画を見たり、博物館や史跡を訪れたりなど、様々です。自分に合った方法で、楽しみながら日本史を学んでいきましょう。 まとめ 日本史を学ぶことは、私たちに様々なメリットをもたらします。日本史を学んで、自分の視野を広げ、未来を生き抜くための力をつけましょう。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

生きる

春秋花壇
現代文学
生きる

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...