陽だまりの家

アイアイ

アイアイ

サクラは、リビングの片隅で、子供たちが遊ぶ姿を微笑ましく見つめていた。最近、3人の娘たちはおもちゃのマイクを使って歌うのが大好きになっていた。彼女たちは、サクラが教えたわけでもないのに、それぞれが自分なりに歌や踊りの遊びを思いつき、毎日楽しそうに遊んでいた。

5歳のハル、3歳のヒナ、そして1歳のミクは、マイクを手にして代わる代わる立ち上がり、まるでコンサートを開いているかのように歌を歌う。今日は、ハルが先頭に立ち、元気よく「アイアイ」を歌い始めた。「アイアイ、アイアイ、おさるさんだよー」と、その小さな声は部屋いっぱいに響いた。ハルは両手を左右に振りながら、リズムに乗って身体を揺らしている。

ヒナとミクも、ハルが歌うたびに小さな手を叩いて拍手を送り、ハルのリズムに合わせて一緒に踊り出す。ヒナは、時々自分の番が来るのを待てずに、ハルの隣で一緒に歌い始めることもある。「アイアイ、アイアイ…」と、少しずつ声が重なり合い、3人で大合唱になることも珍しくなかった。

「みんな楽しそうね」と、サクラは微笑みながら、キッチンから見守っていた。忙しい家事の合間に、子どもたちが楽しんでいる姿を見ることがサクラにとっての癒しだった。

やがて、ハルの歌が終わると、今度はヒナがマイクを手に取って前に出た。「次は私！」と元気に宣言し、ミクもその場に座ってお姉ちゃんを応援するように手を叩き始めた。

ヒナは、まだ歌詞を完全には覚えていないけれど、彼女なりに一生懸命歌を紡ぎ出す。時々歌詞が混乱してしまうけれど、その一生懸命な姿にサクラはつい笑ってしまった。「ヒナ、すごく上手だね」と声をかけると、ヒナは照れくさそうに笑い、マイクをもう一度ぎゅっと握りしめた。

次にミクの番になると、彼女はまだ言葉が不完全で、歌うことはできないけれど、リズムに合わせて「アーアー」と声を出し、身体を揺らしている。その姿もまた、愛らしくてサクラの心を温かくした。1歳のミクが少しずつ音楽やリズムを感じ取り、楽しんでいるのを見ると、子どもの成長の速さに驚かされる。

しばらくすると、3人で一緒に歌うことに決めたようで、再び「アイアイ」の合唱が始まった。サクラは、3人が揃って楽しんでいる姿を見ながら「教えなくても、子どもたちは自分で遊びを見つけるんだなぁ」と感心していた。彼女たちは、まるで自分たちだけの世界を作り上げ、そこで自由に楽しんでいる。

サクラ自身、子供の頃はこうして何もかもが楽しかったことを思い出す。歌ったり踊ったり、特に理由もなく笑い合ったり、そんな無邪気な時間がとても貴重だった。大人になると、そうした瞬間がだんだん少なくなってしまうけれど、今、子供たちを見ていると、その純粋な喜びをもう一度感じることができる。

「じゃあ、お母さんも一緒に歌おうか？」とサクラが声をかけると、3人は一斉に「うん！」と大きな声で返事をした。サクラはキッチンから歩み寄り、子供たちの中に座り込むと、マイクを手に取って歌い始めた。

「アイアイ、アイアイ…」

サクラが歌い始めると、子どもたちも一緒に声を合わせて歌う。小さなリビングが、みんなの笑い声と歌声で満たされていく。時には音程が外れたり、歌詞がごちゃごちゃになったりするけれど、そんなことはどうでもよかった。大切なのは、この瞬間、子どもたちと一緒に笑い、楽しむことだった。

歌い終わると、子どもたちは「もう一回！」とせがんだ。サクラは笑顔で「じゃあ、もう一回ね」と答え、また歌を始める。こうして、何度も何度も「アイアイ」を歌い続け、いつしか時間は過ぎていった。

その夜、サクラは子どもたちを寝かしつけながら、今日のことを振り返っていた。まだ幼い娘たちは、毎日新しいことを発見し、楽しみながら成長していく。サクラは、その成長を見守ることができる自分の役割に感謝していた。忙しい日々の中でも、こうして子どもたちと一緒に過ごす時間が、何よりもかけがえのない宝物だと感じていた。

「おやすみ、みんな」と、サクラは優しく声をかけると、子どもたちは安心したように眠りについた。サクラもまた、穏やかな気持ちでその日の終わりを迎えるのだった。