陽だまりの家

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
31 / 73

だめがいっぱい

しおりを挟む
だめがいっぱい

次の日、サクラはまた朝のラジオ体操に家族を誘った。今日も元気いっぱいのハル、ヒナ、そしてまだ小さなミクと一緒にリビングで体操を始める。しかし、元気すぎる子どもたちに少し困惑しながらも、サクラは笑顔を絶やさず、家族との貴重な時間を楽しんでいた。

体操が終わると、今日は児童館に行く予定だった。ハルとヒナは「お友達に会える!」と大はしゃぎ。サクラも外で遊ぶのは良いことだと考え、すぐにみんなの準備を進めた。ミクはまだ小さいので、ベビーカーに乗せて出発だ。

児童館に着くと、元気な子どもたちがすでに集まって遊んでいた。ハルとヒナは靴を脱ぐとすぐに遊び場へ走っていった。サクラはミクを抱えながら、他のお母さんたちと会話を楽しむ。子どもたちの笑い声が響き、部屋はにぎやかな雰囲気に包まれていた。

しかし、少し経つと、ハルとヒナの様子が変わってきた。特にヒナが、他の子と遊んでいるうちに突然「だめ!」と叫んでおもちゃを取り上げてしまったのだ。相手の子が泣き出し、サクラも驚いて駆け寄る。

「ヒナ、どうしたの?」サクラは優しく声をかけたが、ヒナはぷくっと頬を膨らませて黙ってしまった。他のお母さんたちも心配そうに見ている。

「ヒナちゃん、これ、お友達のおもちゃだから返してね」とサクラは促したが、ヒナは首を振った。困ったサクラは、他の子どもたちにも迷惑をかけないように、どうすればいいか考えた。

「だめがいっぱいだね」とサクラは優しく言った。「でも、なげないこと、ぶたないこと、ひっかかないこと、お約束だよね?」サクラは冷静にヒナに語りかけた。ヒナはその言葉に少し考えるような顔をして、ゆっくりとおもちゃを相手の子に返した。

「ごめんね」とヒナが小さな声で謝ると、相手の子もすぐに「いいよ」と言ってくれた。その瞬間、サクラはほっと胸を撫でおろした。

ハルも横から「ヒナ、えらいね」と声をかけ、ミクもにこにこしながら姉たちのやり取りを見守っている。そんな微笑ましい光景を見て、サクラは子どもたちが少しずつ成長していることを実感した。

その後も児童館での時間は続いたが、サクラは子どもたちに「他のお友達と仲良くすること」の大切さを教えつつ、楽しく過ごすことができた。もちろん、まだまだ「だめ」の瞬間はある。時にはヒナがまたおもちゃを独り占めしたり、ハルが他の子どもたちと口論になったりすることもあるが、その度にサクラは「なげないこと、ぶたないこと、ひっかかないこと」を根気強く伝えていた。

児童館からの帰り道、ハルが「お母さん、今日は楽しかった!」と元気に話しかけてきた。ヒナも「私、がんばったよ」と少し誇らしげに言う。サクラは「本当に、二人ともとてもえらかったよ」と微笑んで答えた。

一日の終わりに、サクラは子どもたちが寝静まった後、ふと一人で考えた。「子育てって、本当に大変だな。でも、毎日少しずつ子どもたちが成長していく姿を見られるのは、何よりの幸せだな」と心から思った。

明日もまた、ラジオ体操をして、新しい一日が始まる。サクラは、どんな「だめ」が待っていようと、決して諦めずに子どもたちと向き合い続ける覚悟を固めた。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

春秋花壇
現代文学
注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

かあさんのつぶやき

春秋花壇
現代文学
あんなに美しかった母さんが年を取っていく。要介護一歩手前。そんなかあさんを息子は時にお世話し、時に距離を取る。ヤマアラシのジレンマを意識しながら。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

妻と愛人と家族

春秋花壇
現代文学
4 愛は辛抱強く,親切です。愛は嫉妬しません。愛は自慢せず,思い上がらず, 5 下品な振る舞いをせず,自分のことばかり考えず,いら立ちません。愛は傷つけられても根に持ちません。 6 愛は不正を喜ばないで,真実を喜びます。 7 愛は全てのことに耐え,全てのことを信じ,全てのことを希望し,全てのことを忍耐します。 8 愛は決して絶えません。 コリント第一13章4~8節

子供部屋おばさんのチューニング

春秋花壇
現代文学
「子供部屋おばさん」とは、成人になっても実家から離れずに子供のころから使っていた実家の部屋で暮らす独身男女のことです。20代から30代前半くらいまでは「パラサイトシングル」と呼ばれています。 子供部屋おばさん17年。社会復帰を目指します。 しかも選んだ職業は、保険のセールスレディ。 そんなの無理に決まってんじゃんという自分と やってみなきゃわかんないじゃんという自分のデスマッチ。 いざ勝負!

処理中です...