春秋花壇

地始凍 (ちはじめてこおる)

第五十六候　立冬　次候

地始凍 (ちはじめてこおる)

11月12～16日頃

大地が凍り始める

早朝の地面に霜柱が降りる

夜の冷え込みが増し、地面が固く凍り始めるころ。
大気中の水分が凍るのが「霜」
地中の水分が凍るのが「霜柱」

「凍土」「霜崩れ」
霜が溶けてぬかるんだ道もこの時期の風情


霜の舞い降りる朝

十一月、立冬の次候「地始凍（ちはじめてこおる）」が訪れる。まだ暗い早朝、静まり返った村の裏道を歩くと、地面には薄く霜柱が立ち始めていた。凍りついた大地が朝日を待ちながら、微かな吐息を漏らしているかのように見える。わずかに踏みしめると、霜柱が崩れ、冷たく澄んだ音が足元から響き渡った。

その日の朝、冬支度に忙しい村人たちの間に静かな噂が流れていた。「お菊婆さま」が早くも見回りに出かけたというのだ。お菊婆さまはこの村で最も年老いた人で、昔から立冬の頃になると、村中を見回りながら、一年の収穫を喜び、冬を迎える祈りを捧げてきた。しかし今年は昨年に比べ、少し早く、霜が降りる前に行うつもりだったはずの見回りが、地始凍のこの朝に始まったのだという。

村の人々はその年のお米や野菜が無事に収穫されたことを感謝しつつ、春に向けた準備も兼ねて、一年の終わりを心静かに迎えようとしていた。お菊婆さまは、村の古い祠に立ち寄り、朝日に向かって祈りを捧げた。「今年も無事に過ごせました。どうか来年も良い実りを与えてください。」と。

その日は風も強く、日中になっても霜柱は溶けることなく、堅く凍った大地が白くきらめき続けていた。村人たちは慎重に足を踏みしめながら、お菊婆さまの祈りに応えるように、自分たちの暮らしと村の未来を心に刻んでいた。

立冬の冷たさに触れながら、村全体が新たな冬を迎えようとする決意に包まれていた。その静かな空気の中で、霜柱の下にある命がまた次の春に向けて新たな芽を出す準備を始めているのだと、村人たちは感じていた。