春秋花壇

寒露

寒露

10月8日、朝の光が静かに部屋を照らす。窓を開けると、外はすでに秋の冷気に包まれ、草花に細かい露が光り輝いている。寒露の時期が訪れ、夏の暑さが去り、朝晩の寒さが身に染みる季節がやってきた。私は今日の気候を感じ取りながら、心を落ち着けて一日を始めることにした。

食卓には、朝食の準備が整っている。母が作った温かい味噌汁の香りが漂い、焼き魚やご飯が並ぶ。秋の味覚、特に旬の食材を使った料理が並ぶのが嬉しい。栗やさつまいも、そして新米。食欲が増すこの季節が大好きだ。

朝食を終えた後、私は散歩に出かけることにした。外に出ると、冷たい空気が肌を刺し、思わず身震いした。周りを見渡すと、木々の葉が少しずつ色づき始め、特にイチョウの木が目を引いた。黄金色の葉が風に揺れる様子は、まさに秋の訪れを感じさせる。

近くの公園に向かうと、草むらの間からキンモクセイの甘い香りが漂ってきた。その香りは私の心をリラックスさせ、穏やかな気持ちにしてくれる。足元には、朝の露がしっかりと残っていて、歩くたびにキラキラと輝くのが見える。冬に向かう前の、短い美しい瞬間を楽しむために、私はゆっくりと歩を進めた。

公園のベンチに座ると、周りの風景が心を癒してくれる。子どもたちが元気に遊び、カメラを持った観光客が紅葉を楽しむ姿が目に入る。私も、秋の色合いを写真に収めるために、カメラを取り出すことにした。小さな花や、色とりどりの葉を切り取ることは、私にとって心の栄養となる。

その時、ふと気づいた。朝露に濡れた草花が、冷え込みの中でもしっかりと咲いている。その姿に、自然の強さを感じずにはいられなかった。「露冷ゆと　足もとかりし　野路かな」という芭蕉の句を思い出す。冷たく濡れた草花の中で、一生懸命に生きる姿に共鳴する。

時間が経つにつれ、周囲の人々が少しずつ減っていく。私は静かな時間の中に身を置き、考えを巡らせる。秋の深まりは、自然の美しさだけでなく、心の変化ももたらす。夏の賑やかさが嘘のように、静けさが広がる。

帰り道、私は近所の小さな市場に立ち寄った。秋の収穫を楽しむための食材が並んでいる。地元で採れた新鮮な野菜や果物を選びながら、店主と会話を交わす。市場の温かい雰囲気が、私の心を満たしてくれる。特に、果物の中でも栗や柿が美味しそうに並んでいた。思わず手に取ると、その豊かさに感謝の気持ちが湧いてくる。

夕方、家に戻ると、秋の冷たい空気が一層強くなっていた。窓を開けて外の音を聞くと、風が木々を揺らし、鈴虫の声が聞こえる。自然の音が、私の心を静める。夕食の準備をしながら、母と一緒に秋の話を交わす。お互いの思い出や、秋の風景について語り合う時間が、心を温めてくれる。

食卓を囲んで家族と一緒に夕食を楽しむと、心が満たされる。新米の香り、秋の味覚、そして温かい家庭の雰囲気が、私の心を一層豊かにしてくれる。寒露の冷たい空気が、私の内側に温かさをもたらす。

夜が更けるにつれ、窓の外は冷え込み、星が輝き始めた。空を見上げると、秋の星座が見える。いつものように、心が高揚する。寒露の季節は、収穫の喜びだけでなく、自然の変化や家族との絆を感じる特別な時間でもある。心の奥底で、この瞬間を大切に思いながら、私は穏やかな気持ちで眠りについた。