春秋花壇

おはぎのお嫁入り

おはぎがお嫁に　行くときは
きな粉とあんこで　化粧して
丸いおぼんに　のせられて
お口の中へと　お嫁入り

のどの関所を　通り過ぎ
胃腸並木で　ひと休み
今日は腸内　ひとめぐり
こよいのお泊まり　下関


 「おはぎのお嫁入り」

秋の気配が漂うある日、私は祖母に教わったおはぎを作ることにした。小豆を煮て、もち米を炊き、甘さと香ばしさを調整する。出来上がったおはぎは、まるで小さな宝石のように艶やかに光り、私はその美しさに思わず微笑んだ。

「おはぎがお嫁に行くときは、きな粉とあんこで化粧してね」と祖母の言葉を思い出しながら、私はおはぎにきな粉をまぶし、あんこを乗せて華やかに仕上げた。丸いおぼんにのせると、その姿はまるでお嫁入りの準備を整えたかのようだった。

「さあ、これからお嫁入りだよ」と心の中でつぶやく。おはぎは、のどの関所を通り過ぎ、いよいよ胃腸並木へと向かう。私の心は、まるでおはぎの旅を見守る母のようにドキドキしていた。

この日、私は友人たちを招いての小さな食事会を開くことにしていた。おはぎを主役に、和の雰囲気を楽しむための準備を進めていた。和食の品々を並べ、心を込めて作ったおはぎをテーブルの真ん中に置くと、まるで祝福の中心に立っているようだった。

友人たちが集まると、おはぎを囲んで楽しい会話が始まる。おはぎの話題になると、皆の目がキラキラと輝いた。「おはぎ、可愛い！まるでお嫁さんみたい！」と一人が言うと、他の友人たちも同意し、笑い声が広がった。

「今日は特別なお嫁入りだから、みんなでお祝いしよう！」と、私は提案する。友人たちはおはぎに感謝の意を示しながら、手を合わせて祈りを捧げる。その瞬間、まるでおはぎが幸せな旅に出る準備を整えたかのように思えた。

おはぎをひと口食べると、甘さが口の中で広がり、温かい思い出が胸に蘇る。祖母と一緒に過ごした日々、台所での笑い声、そしておはぎを作る楽しさ。それらの思い出が、私の心を優しく包んだ。

「おはぎって、ただの食べ物じゃなくて、心を伝えるものだよね」と友人が言う。私は頷き、その言葉の意味を深く感じた。おはぎは、家族や友人との絆を結ぶ大切な存在だった。

「今日は腸内ひとめぐり、こよいのお泊まり」と、私は冗談を言いながら、友人たちの笑いを誘った。おはぎの旅が、みんなの心を温かくすることを願いながら、楽しい時間を過ごす。

食事が終わり、友人たちが帰る頃、私はおはぎを一つ持ってお見送りする。「これは、あなたのお嫁入りのお土産だよ」と言うと、友人は笑顔で受け取ってくれた。

その瞬間、私の心は満たされた。おはぎが人々を結びつけ、幸せを運ぶ存在であることを改めて実感した。祖母から受け継いだこの伝統を大切にし、これからもおはぎを作り続けようと心に誓った。

家に帰ると、静かな夜が訪れていた。おはぎの旅を見守ったような気持ちで、私はゆっくりとお茶を淹れ、一日の終わりを味わった。おはぎはただの食べ物ではなく、心をつなぐ大切な存在だった。これからもその思いを忘れずに、大切にしていきたい。

「おはぎ、ありがとう。あなたのおかげで、今日は素敵な一日だったよ」と、私は小さな声でつぶやいた。おはぎの姿を見つめながら、また新たな旅に出ることを願って、静かな夜に身を委ねた。