春秋花壇

栗拾いの思い出

「栗拾いの思い出」

秋の風が心地よいある日、私は父と一緒に栗拾いに出かけた。長靴を履き、手には鎌を持って、道を歩くと、まるで懐かしい記憶がよみがえるようだった。父は栗拾いの達人で、その手つきはとても頼もしかった。私もその背中を見ながら、栗を集める楽しさを学んでいた。

「栗拾いにはコツがあるんだ」と父は言った。彼は、栗のいがぐりが落ちている場所を見つけると、長靴で軽く踏みつけながら周囲を広げていく。緑色のいがぐりが少しずつ顔を出し、中からは艶のあるぷっくりとした栗が現れる。

「わあ、こんなにたくさん！」と声を上げると、父は優しく微笑んだ。「栗は大事に扱わないと、すぐに傷がついてしまう。そうすると、いい味が消えちゃうからね。」

私は、父の言葉をしっかりと心に刻みながら、いがぐりを扱うことに集中した。父から教わった通り、栗を傷つけないように慎重に触れ、少しずつ集めていく。まるで宝物を探すような感覚だった。

「見て、あれはいい栗だよ」と父が指差す。その先には、日差しを浴びて光る栗があった。私はその栗に近づき、じっと観察した。確かに、艶があってまん丸で、とても美味しそうだ。父は私に「周りのいがぐりも確認しなさい。いい栗は周りにもたくさんいるから」と教えてくれた。

その言葉に従い、周囲を見渡すと、あちらこちらに栗のいがぐりが転がっているのが見えた。私は嬉しくなり、長靴を使ってどんどんいがぐりを踏みつけていく。ぱりぱりと音を立てながら、いがぐりが広がっていく様子が楽しくて仕方がなかった。

「栗を拾った後は、囲炉裏で焼くんだ」と私は楽しみにしながら父に微笑む。「そうだね、でもその前に、ちゃんと選別しないとね」と父は優しく言った。

栗を拾いながら、私たちは色々な話をした。子供の頃、私が父に教えてもらった栗の扱い方や、囲炉裏での焼き栗の香ばしい匂い、そしてその味わい。栗拾いは、ただの作業ではなく、家族の思い出を深める大切な行事だった。

「栗を焼くときは、傷をつけないと跳ねるからね」と父が言う。その言葉に、私は大きく頷いた。今までの経験を思い出しながら、栗を慎重に扱うことの大切さを再確認する。栗が跳ねてしまったら、周りは大騒ぎになるし、焼き栗を楽しむことができなくなる。

やがて、私たちはたくさんの栗を集め終え、満足感に包まれた。父と一緒に栗拾いをするこの瞬間は、私にとって何よりも特別だった。お互いに微笑み合いながら、満ち足りた気持ちで帰路につく。

家に着くと、早速囲炉裏を準備し、栗を焼き始める。薪の炎がぱちぱちと音を立て、温かい空気が広がっていく。私は焼き栗の香りを楽しみにしながら、父と一緒にその場に座った。

「栗が焼けるまで、もう少し待とうか」と父が言う。私は期待に胸を膨らませながら「うん、早く食べたいな！」と応える。焼き栗の香ばしい匂いが漂い始めると、私の心はワクワクでいっぱいになった。

「さあ、できたよ！」と父が言い、焼きたての栗を取り出す。皮をむくと、中から出てきた栗は、ふっくらとしていてとても美味しそうだった。私はその栗を口に運び、ほくほくの食感と甘みを楽しんだ。

「おいしい！」と叫ぶと、父も嬉しそうに笑った。「これが栗拾いの楽しさだね。」私は父との栗拾いの思い出が、これからもずっと心に残ることを確信した。

栗拾いは、ただの行事ではなく、家族の絆を深める大切な時間だった。その日、私は父との思い出を胸に刻み、これからも大切にしていこうと心に誓った。