春秋花壇

野と森にすむこうかつなハンター

野と森にすむこうかつなハンター

冷たい霧がたちこめる早朝の森。木々の間を駆け抜ける静かな風が、獲物のにおいを運んでいた。葉が擦れ合う音に紛れて、低い唸り声が響く。それは猟犬の鼻息だ。猟犬の目は鋭く、鼻は獲物のにおいを確実に追っている。主人である猟師も、遠くからその動きを見守り、満足げに口元をゆがめていた。獲物は近い。

その獲物とは、森の奥にすむキツネだった。鮮やかな赤い毛皮が美しく、動きは軽快で、知恵に長けていることで知られる動物だ。キツネはただ単に逃げるだけではなく、どうすれば猟犬や人間を混乱させるかを知っている。彼らは巧妙な戦略家であり、まさに森の中で生き延びる術を心得ていた。

その朝も例外ではなかった。キツネは早くから猟犬の気配を察知し、逃げる準備をしていた。風向きを読んで、自らのにおいを消すためにどこへ走るべきかを即座に判断した。そして、目の前に小川が現れると、キツネは一瞬の躊躇もなく丸太の上に飛び乗り、そのまま走り抜けた。しかし、ここで賢いキツネは一つのトリックを思いついた。

丸太を渡り切ったあと、小川を飛び越えて反対側の岸に行くのが常道だ。しかし、それでは猟犬にすぐに追いつかれてしまう。キツネは一瞬止まり、後ろを振り返る。そして、すぐに元の岸へと跳び戻ったのだ。猟犬が丸太の上を渡っている間に、キツネは一気に別の方向へと駆け抜け、追跡を完全に撹乱した。

猟犬たちはというと、キツネが丸太の上を駆けたにおいを追って、小川を越えた先へと一直線に向かう。しかし、そこでにおいが消え、しばらく混乱するが、ついにキツネの姿を見失ってしまった。猟師もまた、犬たちの挙動に首を傾げ、どこへ消えたのか分からず立ち尽くすしかなかった。

キツネは密かに笑みを浮かべながら、森の奥深くへと走り去っていった。彼にとって、このような追いかけっこは日常の一部であり、時には楽しんでいるかのようにすら見える。森の中で生きるためには、ただ逃げるだけではなく、いかに相手を欺くかが鍵となる。キツネは、まさにその生き方を体現していた。

実際、キツネはこうかつという言葉にふさわしい動物であり、古来からその知恵の象徴として多くの物語に登場してきた。彼らは食べ物を見つけるために、知恵を絞り、時には他の動物をも利用する。その狡猾さと戦略は、時に人間をも欺くほどだ。

しかし、その知恵は単なる自己防衛や生存のためだけではない。森の中での暮らしは厳しい。天敵や環境の変化、さらには人間の侵入がキツネにとっての脅威となる。だが、キツネはそのすべてに対応する術を持ち、適応してきた。

その日、キツネは再び森の奥で静かに身を潜めることに成功した。猟犬の遠吠えがかすかに聞こえる中、彼は新たな一日を生き延びることに満足しつつ、次の冒険へと胸を躍らせていた。彼にとって森は遊び場であり、また戦場でもある。そしてそのどちらにおいても、彼は常に勝者であり続けるのだった。

こうして、キツネは再び猟犬と猟師を欺き、静かな森の主としてその日を終えた。彼の狡猾さと知恵は、森の中では誰にも負けることのない力であり、その輝かしい知恵は今も語り継がれている。