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暑い水風呂― 汗疹が大変
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暑い水風呂― 汗疹が大変
真夏の昼下がり、東京の気温は連日35度を超え、耐えがたいほどの蒸し暑さが続いていた。アキラは、家の中にいても汗が止まらず、エアコンの冷気が届かない部屋の中で、不快な湿気に包まれていた。
「もう耐えられない…」
アキラはつぶやきながら、急いで浴室へ向かった。浴槽には、すでに水がたっぷりと溜まっており、冷たさを期待して飛び込むつもりだった。しかし、その日、昼間の暑さに耐えかねて早めに水を張っていたため、水風呂はすっかり温まってしまっていた。
浴槽に足を浸けた瞬間、アキラは思わず顔をしかめた。
「なんだこれ、温かい…」
水風呂どころか、ぬるま湯に近い温度だった。全身を浸けると、期待していた清涼感とはほど遠く、むしろ体がさらに熱を帯びるような感覚に襲われた。しかも、気持ちよく汗を流すどころか、皮膚にまとわりつく湿気と汗が引かず、ますます汗疹(あせも)がかゆくなってきた。
アキラは、ふと子供の頃の夏を思い出した。実家の庭には小さなビニールプールがあり、兄弟たちと一緒に冷たい水の中で涼んだものだった。その冷たさは、今ではまるで夢のように思える。
「このままじゃ汗疹がひどくなる一方だ…」
アキラは浴槽から出ると、キッチンへ向かい冷蔵庫を開けた。氷を取り出して袋に詰め、また浴室に戻ると、それを浴槽に投げ込んだ。しかし、湯加減は多少冷たくなったものの、まだ十分に冷えたとは言えなかった。
アキラは冷水を求め、近所のスーパーへ行くことを決意した。外に出ると、熱気が顔にまとわりつき、息をするのも辛いほどだった。汗は吹き出し、Tシャツは瞬く間に濡れてしまった。
「早く帰って、冷たい水に浸かりたい…」
そう思いながら、アキラはスーパーの冷凍食品売り場へ直行した。氷を手に取り、さらに大きな冷凍ペットボトルもカゴに入れた。レジで会計を済ませると、急いで家に戻り、再び浴室へ。
浴槽には再び氷が投入され、冷凍ペットボトルも浮かべられた。ようやく水が適度に冷たくなり、アキラはその冷たさを感じると、全身をゆっくりと浸けた。
「これだよ、これを求めてたんだ…」
冷えた水が肌に触れると、かゆみも次第に和らぎ、身体が落ち着きを取り戻していく。汗疹も治まり、暑さによる疲労感も徐々に癒えていった。
だが、その安堵感も束の間のことだった。アキラは冷えた浴槽の中でリラックスしていたが、次第に体が冷えすぎて、逆に寒気がしてきた。
「しまった、今度は冷えすぎた…」
急いで浴槽から出ると、タオルで体を拭きながら少しずつ温まるように努めた。エアコンのない部屋に戻ると、再び蒸し暑さが戻ってきたものの、冷えすぎた体には心地よく感じられた。
「こんな極端なことしてたら、身体に悪いな…」
アキラは冷たい飲み物を手に取り、一息ついた。冷や汗が出る中で、何とかバランスを取ろうとする自分が滑稽に思えてきた。
それから数日後、アキラは冷房が効いている職場で同僚たちと昼休みを過ごしていた。みんながそれぞれの暑さ対策について話している中、アキラはふと思い出して言った。
「そういえば、この前、暑い水風呂に入って、かえって汗疹がひどくなっちゃってさ…」
同僚たちは笑いながらアキラの話に耳を傾けた。彼らも同じような経験をしているらしく、あれこれと対策を教えてくれた。その中には、やはりエアコンの効いた部屋で過ごすのが一番だという結論が含まれていた。
「まぁ、今度からは冷房の効いた部屋にこもることにするよ…」
アキラは苦笑いしながら答えた。東京の夏は、簡単には避けられないものだ。だが、それでも少しでも快適に過ごすために、工夫を重ねるしかないのだろう。
結局、アキラはその日も職場に少し遅くまで残り、涼しい環境の中で仕事をしていた。外に出ると、夜の街もまだ熱気を帯びていたが、昼間ほどではなかった。
「また明日も、あの暑さか…」
アキラは心の中でそう呟きながら、ゆっくりと帰路に就いた。家に戻ったら、今度は無理に水風呂に入らず、冷房を効かせた部屋で冷たい飲み物を片手に、静かに過ごそうと決意していた。
真夏の昼下がり、東京の気温は連日35度を超え、耐えがたいほどの蒸し暑さが続いていた。アキラは、家の中にいても汗が止まらず、エアコンの冷気が届かない部屋の中で、不快な湿気に包まれていた。
「もう耐えられない…」
アキラはつぶやきながら、急いで浴室へ向かった。浴槽には、すでに水がたっぷりと溜まっており、冷たさを期待して飛び込むつもりだった。しかし、その日、昼間の暑さに耐えかねて早めに水を張っていたため、水風呂はすっかり温まってしまっていた。
浴槽に足を浸けた瞬間、アキラは思わず顔をしかめた。
「なんだこれ、温かい…」
水風呂どころか、ぬるま湯に近い温度だった。全身を浸けると、期待していた清涼感とはほど遠く、むしろ体がさらに熱を帯びるような感覚に襲われた。しかも、気持ちよく汗を流すどころか、皮膚にまとわりつく湿気と汗が引かず、ますます汗疹(あせも)がかゆくなってきた。
アキラは、ふと子供の頃の夏を思い出した。実家の庭には小さなビニールプールがあり、兄弟たちと一緒に冷たい水の中で涼んだものだった。その冷たさは、今ではまるで夢のように思える。
「このままじゃ汗疹がひどくなる一方だ…」
アキラは浴槽から出ると、キッチンへ向かい冷蔵庫を開けた。氷を取り出して袋に詰め、また浴室に戻ると、それを浴槽に投げ込んだ。しかし、湯加減は多少冷たくなったものの、まだ十分に冷えたとは言えなかった。
アキラは冷水を求め、近所のスーパーへ行くことを決意した。外に出ると、熱気が顔にまとわりつき、息をするのも辛いほどだった。汗は吹き出し、Tシャツは瞬く間に濡れてしまった。
「早く帰って、冷たい水に浸かりたい…」
そう思いながら、アキラはスーパーの冷凍食品売り場へ直行した。氷を手に取り、さらに大きな冷凍ペットボトルもカゴに入れた。レジで会計を済ませると、急いで家に戻り、再び浴室へ。
浴槽には再び氷が投入され、冷凍ペットボトルも浮かべられた。ようやく水が適度に冷たくなり、アキラはその冷たさを感じると、全身をゆっくりと浸けた。
「これだよ、これを求めてたんだ…」
冷えた水が肌に触れると、かゆみも次第に和らぎ、身体が落ち着きを取り戻していく。汗疹も治まり、暑さによる疲労感も徐々に癒えていった。
だが、その安堵感も束の間のことだった。アキラは冷えた浴槽の中でリラックスしていたが、次第に体が冷えすぎて、逆に寒気がしてきた。
「しまった、今度は冷えすぎた…」
急いで浴槽から出ると、タオルで体を拭きながら少しずつ温まるように努めた。エアコンのない部屋に戻ると、再び蒸し暑さが戻ってきたものの、冷えすぎた体には心地よく感じられた。
「こんな極端なことしてたら、身体に悪いな…」
アキラは冷たい飲み物を手に取り、一息ついた。冷や汗が出る中で、何とかバランスを取ろうとする自分が滑稽に思えてきた。
それから数日後、アキラは冷房が効いている職場で同僚たちと昼休みを過ごしていた。みんながそれぞれの暑さ対策について話している中、アキラはふと思い出して言った。
「そういえば、この前、暑い水風呂に入って、かえって汗疹がひどくなっちゃってさ…」
同僚たちは笑いながらアキラの話に耳を傾けた。彼らも同じような経験をしているらしく、あれこれと対策を教えてくれた。その中には、やはりエアコンの効いた部屋で過ごすのが一番だという結論が含まれていた。
「まぁ、今度からは冷房の効いた部屋にこもることにするよ…」
アキラは苦笑いしながら答えた。東京の夏は、簡単には避けられないものだ。だが、それでも少しでも快適に過ごすために、工夫を重ねるしかないのだろう。
結局、アキラはその日も職場に少し遅くまで残り、涼しい環境の中で仕事をしていた。外に出ると、夜の街もまだ熱気を帯びていたが、昼間ほどではなかった。
「また明日も、あの暑さか…」
アキラは心の中でそう呟きながら、ゆっくりと帰路に就いた。家に戻ったら、今度は無理に水風呂に入らず、冷房を効かせた部屋で冷たい飲み物を片手に、静かに過ごそうと決意していた。
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