春秋花壇

きゅうりを求めて

「きゅうりを求めて」

真夏の日差しが照りつける中、明菜は自宅のベランダで一人、青々としたプランターを眺めていた。ベランダには様々な植物が並び、その中で一際目立っていたのは、たわわに実ったきゅうりだった。

「きゅうり食べたいなぁ…」明菜は呟きながら、目の前の新鮮なきゅうりに手を伸ばした。しかし、その手を止めるようにスマートフォンが震えた。友人の真由美からのメッセージだった。

「今日、時間ある？一緒にランチしない？」

明菜はすぐに返事を打ち込み、家を出る準備を始めた。最近、仕事で忙しくて友人と会う時間が取れなかったこともあり、久しぶりに真由美と会うのが楽しみだった。

真由美とのランチの場所は、街中にあるカフェだった。二人はカフェのテラス席に座り、冷たい飲み物を注文した。テーブルに運ばれてきたドリンクを一口飲むと、爽やかな冷たさが体に染み渡った。

「最近どう？」真由美が尋ねる。

「忙しいけど、まあまあね。でも、なんかきゅうりが食べたくてさ。家で育ててるんだけど、まだ収穫してないんだ。」

「え、きゅうり育ててるの？すごいじゃん！」真由美が驚いた顔を見せる。

「そうなの。家庭菜園始めたんだけど、意外と楽しいよ。特にきゅうりは成長が早くて見てて飽きないんだよね。」

「いいね、私も育ててみようかな。」

ランチを終えた後、二人は近くの公園を散歩することにした。木陰に入ると、少しだけ涼しく感じられた。公園の池には鴨が泳ぎ、子どもたちが遊ぶ姿が見えた。

「そういえば、きゅうりってどのくらいで収穫できるの？」真由美がふと尋ねた。

「だいたい1ヶ月くらいかな。最初は小さくて可愛らしいけど、あっという間に大きくなるんだよ。」

二人はその後も、きゅうりの話や他の家庭菜園について語り合った。明菜は、友人とのこうした何気ない会話が心の癒しになっていることを改めて感じた。

夕方近くになり、明菜は家に帰ることにした。ベランダに戻ると、きゅうりの成長具合を再び確認した。「今日こそ収穫しようかな…」そう思い、彼女はキッチンに向かった。

きゅうりの収穫は初めてだったが、明菜は慎重に、そして丁寧に一本のきゅうりを摘み取った。手に持ったきゅうりは、緑色が濃く、見た目も美しかった。彼女はそのままキッチンで水洗いをし、冷蔵庫で冷やすことにした。

しばらくして、冷えたきゅうりを取り出した明菜は、包丁でスライスを始めた。薄く切り揃えたきゅうりは、まるで翡翠のように美しく、見ているだけで食欲をそそった。彼女はそれをシンプルに塩で味付けし、初めての自家製きゅうりを一口かじった。

「美味しい！」明菜は思わず声を上げた。自分で育てたきゅうりは、ただの野菜ではなく、自分の手で育て上げた証だった。その爽やかな味わいは、彼女の疲れを一瞬で吹き飛ばした。

翌日、明菜は職場で同僚たちに自家製のきゅうりを振る舞うことにした。皆が喜んで食べてくれたことに、彼女は大きな満足感を得た。

「明菜さん、これ本当に自分で育てたの？」と、同僚の一人が驚いた表情で尋ねた。

「そうなの。意外と簡単だから、みんなもやってみて！」明菜は笑顔で答えた。

その日以来、明菜の家庭菜園はますます賑やかになった。きゅうりだけでなく、トマトやナスも育て始め、毎日の成長を楽しみにするようになった。そして、友人や同僚たちと収穫物を共有することで、彼女の生活はより豊かで充実したものになっていった。

夏の終わり、明菜は再びベランダで育てたきゅうりを見つめながら、これからも続けていこうと心に決めた。自然の恵みを感じながら、彼女の笑顔はますます輝いていた。