春秋花壇

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デュランタの花

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デュランタの花

初夏の風が、青い空を切り裂いて、古い木造の家の軒先に咲くデュランタの花を揺らしていた。小さな紫色の花が房状に垂れ下がり、まるで夏の空を映し出したような美しい光景だった。

この家は、私が幼い頃から慣れ親しんだ場所。おばあちゃんの家で、夏になると必ず遊びに来ていた。広々とした庭には、デュランタの他に、ひまわりやコスモスなど、様々な花が咲き乱れていた。

おばあちゃんは植物が大好きで、庭の手入れをいつも楽しんでいた。特にデュランタの花は、おばあちゃんの宝物だった。

「この花はね、一生懸命咲くのよ。だから私も一生懸命生きなきゃね」

おばあちゃんはそう言いながら、優しくデュランタの花に水をやっていた。その言葉の意味を、幼い私はよく理解できなかったが、デュランタの花を見るたびに、おばあちゃんの笑顔が浮かぶようになった。

私が中学生になった頃、おばあちゃんは病気で入院し、しばらくしてこの世を去った。おばあちゃんのいない家は、どこか寂しかった。庭の手入れをする人もいなくなり、デュランタの花も元気をなくしていた。

高校に進学し、家を離れることになった。それでも、時々実家に帰り、デュランタの花を見に来た。花は、おばあちゃんの面影を私に思い出させてくれた。

大学を卒業し、仕事に追われる日々を送っていたある日、実家から電話がかかってきた。庭のデュランタが枯れてしまいそうだという。私はすぐに実家に戻り、デュランタの前に立った。

花はすっかり元気をなくし、葉は黄色く変色していた。私は、庭の手入れをする業者に頼もうかとも思ったが、どうしても自分で手入れをしたかった。

インターネットでデュランタの育て方を調べ、肥料を与えたり、枯れた枝を切ったりした。毎日、水をやりながら、おばあちゃんと話しかけるように、デュランタに語りかけた。

「おばあちゃん、元気にしてるかな?私は毎日頑張ってるよ。デュランタも頑張ってね」

そんな私の気持ちを汲み取ったのか、デュランタは少しずつ元気を回復し始めた。新しい芽が出て、小さな花を咲かせた。

その花を見たとき、私は大きな感動を覚えた。まるで、おばあちゃんの声が聞こえたような気がした。

「よくやったね」

おばあちゃんの笑顔が目に浮かぶ。私は、デュランタの花を通して、おばあちゃんと繋がっていることを感じることができた。

それからというもの、私はデュランタの花を育てるのが日課になった。デュランタの花は、私にとって、ただの花ではなく、おばあちゃんの愛情と生命の象徴なのだ。

季節は巡り、また夏がやってきた。デュランタの花は、今年もたくさんの花を咲かせた。青い空の下、紫色の花が風に揺れている。

私は、デュランタの花を見ながら、おばあちゃんのことをいつも思い出している。そして、これからも、この花を大切に育てていきたいと思っている。

デュランタの花は、私の人生の中で、かけがえのない存在になった。







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