春秋花壇

線香花火の光に照らされた、ふたりの恋の始まり

線香花火の光に照らされた、ふたりの恋の始まり

夏の夜、涼しげな風がそよぐ中、由香は手にした線香花火を見つめていた。ぱっぱっぱっと手と足を延ばしてはしゃぐように揺れる火花は、まるで夏の楽しさそのものを象徴しているようだった。

「由香、こっちに来て！」友人の美咲が声をかけた。

「うん、今行く！」由香は線香花火を消し、庭の真ん中に集まった友人たちのところへ走って行った。そこには、彼女の高校時代からの親友たちが集まっていて、夏祭りの後に集まる恒例の花火大会が始まろうとしていた。

その中に、健太の姿もあった。彼は由香の中学時代の同級生で、最近になって再会したばかりだった。再会した瞬間から、由香の心には特別な感情が芽生えていた。

「由香ちゃん、これ、持って。」健太は手に持っていた線香花火を由香に差し出した。

「ありがとう、健太くん。」由香は彼の手から花火を受け取り、火を点けた。

ふたりは並んで座り、手にした線香花火の揺れる光を見つめた。花火の光は短くも美しく、まるで一瞬の輝きを楽しむかのように燃え上がった。

「ねえ、健太くん、覚えてる？中学の時に一緒に線香花火をしたこと。」由香が微笑みながら言った。

「もちろん覚えてるよ。あの時も、君はいつも笑顔だった。」健太は懐かしそうに答えた。

「あの頃と変わらないね、君は。こうしてまた一緒に花火を見られるなんて、嬉しいよ。」由香は目を輝かせて言った。

健太は微笑み返し、ふたりの間にある静かな瞬間を楽しんだ。周りでは友人たちが花火を楽しんでいる声が聞こえ、夜空には色とりどりの花火が咲き誇っていた。

その時、健太がふと真剣な表情で言った。「由香ちゃん、実は…ずっと言いたかったことがあるんだ。」

由香の心臓がドキドキと高鳴り、彼の言葉に耳を傾けた。「何かな？」

「僕、君のことがずっと好きだったんだ。中学の時から。でも、どうしても言えなくて…再会した今、もう一度ちゃんと伝えたくて。」健太の瞳には真剣な思いが込められていた。

由香は一瞬、言葉を失った。しかし、その後すぐに微笑み、彼の手を握り返した。「健太くん、私も同じ気持ちだった。中学の時から、ずっと君のことが気になってた。」

健太の顔に笑顔が広がり、ふたりは自然と手を取り合った。ぱっぱっぱっと揺れる線香花火の光が、ふたりの顔を優しく照らしていた。

「これからも一緒に、こんなふうに過ごしていきたい。」健太はそう言って、由香の手をしっかりと握りしめた。

「うん、私もそう思ってる。夏の夜の思い出を、これからもたくさん作ろう。」由香は健太に寄り添いながら言った。

ふたりは夜空に打ち上げられる花火を見上げ、夏の夜の美しさを共に感じた。その光景は、まるでふたりの未来を祝福しているかのようだった。

その後も、由香と健太は夏祭りの思い出を大切にしながら、様々な季節を共に過ごしていった。毎年夏が訪れるたびに、あの線香花火の夜を思い出し、ふたりは笑顔を交わし合った。

夏の夜空に咲く花火のように、由香と健太の恋もまた、鮮やかで一瞬の輝きを持ちながらも、心に深く刻まれていった。ふたりの未来には、まだまだたくさんの輝きが待っているのだと信じていた。