春秋花壇

白南風（しろはえ）

白南風（しろはえ）

南から吹く白き風
夏の幕開けを告げる知らせ
青空に映える緑の葉
白南風に揺れる姿、輝く時

梅雨の重さが消え去りて
新たな季節が訪れる
白南風のやさしき手触り
心に希望の光を運ぶ

海の波も白く煌めき
浜辺に響く夏の音
白南風に包まれて
今日も一歩、明日へ進む


白南風（しろはえ）の吹く初夏の午後、大学生の田中遥は、自宅の縁側でぼんやりと景色を眺めていた。白南風のさわやかな風が彼女の長い髪を揺らし、心地よい涼しさが彼女の頬をなでる。

遥は、大学の夏休みに入ると同時に、この古い家に戻ってきた。ここは彼女が幼い頃から過ごした場所であり、特に夏の思い出がたくさん詰まっている。縁側に座ると、いつも懐かしい気持ちに包まれる。

その日、彼女はふと、庭に咲く一輪の白い花に目を留めた。それは、彼女の祖母が大切に育てていた白百合だった。祖母はもう他界して久しいが、その花だけは毎年変わらずに咲き続けていた。

遥はその白百合に近づき、そっと花びらに触れた。その瞬間、風が強く吹き、彼女の髪を大きく揺らした。同時に、遠くから「遥！」と呼ぶ声が聞こえてきた。

振り返ると、そこには高校時代の友人、佐藤優斗が立っていた。彼もまた、この町に住んでいたが、大学進学を機に都会へと引っ越していた。二人はしばらく会っていなかったため、突然の再会に驚きを隠せなかった。

「優斗、久しぶりだね！」遥は笑顔で言った。

「本当に久しぶりだな、遥。」優斗も笑顔を返した。「ちょうど休みを取れたから、こっちに戻ってきたんだ。懐かしい場所を歩いてたら、君を見かけたんだ。」

二人はそのまま縁側に座り、昔話に花を咲かせた。高校時代の思い出や、大学での出来事、そして将来の夢について語り合った。

「そうだ、覚えてるかい？」優斗は突然言った。「この縁側で、僕たちが白南風について話したこと。」

「もちろん覚えてるよ。」遥は頷いた。「祖母が教えてくれたんだ。白南風は、夏の始まりを知らせる風で、希望の風なんだって。」

「そうだね。」優斗は遠くを見るように目を細めた。「あの頃は、何もかもが希望に満ちていた。未来が輝いて見えたよ。」

「今も同じだよ、優斗。」遥は優しく言った。「私たちの未来は、まだこれからだもの。」

その言葉に、優斗は静かに頷いた。二人の間には、懐かしさと共に、新しい未来への希望が満ちていた。

その日の夕方、白南風が再び吹き始めた。遥と優斗は、夕陽に照らされる庭を眺めながら、新しい思い出を作ることを誓った。

「これからも、この風のようにさわやかでありたいね。」優斗が言った。

「そうだね。」遥は微笑んだ。「白南風のように、いつまでも希望を持ち続けよう。」

それから数年後、遥と優斗は再びこの町で暮らし始めた。彼らは大学を卒業し、それぞれの道を歩みながらも、互いに支え合って生きていた。毎年夏になると、白南風が吹くたびに、二人は縁側でその風を感じながら、未来への希望を語り合った。

白南風は、二人の心に刻まれた特別な風だった。それは、過去と未来を繋ぐ風であり、いつまでも変わらない希望の象徴だった。