春秋花壇

葉枯れ病

葉枯れ病

カサブランカの花が咲く前に急に枯れた。蕾は大きく膨らんでいっているのに、下葉がどんどん茶色になり、ついに花にたどり着いてしまった。仕方なく、枯れた株は、切除して花をコップに活けた。それは、庭師のテツヤにとっては衝撃的な出来事だった。彼は長年、この庭で植物たちを大切に育ててきた。特に、カサブランカは彼の誇りだった。その純白の花びらが、静かな庭を美しく彩っていた。

ある日、テツヤが庭に出ると、カサブランカの株が元気がないように見えた。葉っぱがしおれていて、芽吹くはずのつぼみも見当たらない。彼は慌てて土を確認し、水やりの頻度を見直した。しかし、その努力もむなしく、カサブランカはますます衰えていった。

「何が原因なんだろう……」テツヤはひとりごとのように呟きながら、さまざまな可能性を考えた。病気かもしれないし、栄養が足りないのかもしれない。それでも、彼はあきらめずに日々、丹念に手入れを続けた。だが、カサブランカの状態はますます悪化していくばかりだった。

ある夜、テツヤはふと、近くの図書館で本を借りてくることを思いついた。植物の病気について書かれた本を手に入れ、真剣に研究を始めた。その中で彼が見つけたのは、「葉枯れ病」という言葉だった。カサブランカがかかっているかもしれないという症状が、その本に詳細に記されていた。

次の日、テツヤはその本に書かれた対処法を実践した。新しい土を用意し、病気の広がりを防ぐために慎重に切り取った葉っぱを処理した。そして、特定の薬剤を使って株全体を保護した。日が経つにつれ、カサブランカの姿は少しずつ回復していった。

彼の努力が実を結んだのは、数週間後のことだった。庭に出ると、白い花びらが再び風に揺れていた。テツヤは胸をなでおろし、庭にひとり微笑んだ。カサブランカの再生は、彼にとっての喜びであり、庭師としての誇りだった。

この出来事を通じて、テツヤは植物の世界における脆さと強さを学んだ。それは、彼の庭への愛情と献身がもたらした成果であり、彼の手によってカサブランカは再び美しい花を咲かせることができたのだった。