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温風至(あつかぜいたる)
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第三十一候 小暑 初候
温風至(あつかぜいたる)
7月7~11日頃
暖かい風が吹いてくる
夏の暑さもいよいよ本番
梅雨入りの頃に吹く風を「黒南風(くろはえ)」
梅雨明けの頃は「白南風(しろはえ)
白南風によって湿った暖かな空気が流れ込みやすく、
それが上昇してむくむくと立ち上がり積乱雲になる
小暑の初候、温風が吹き抜ける頃、田舎町の片隅では静かな午後が流れていた。空は青く澄み渡り、遠くの稲穂が風に揺れている。村人たちは、畑での作業を終えて、ひと休みしているところだった。
村の中心にある小さな茶店では、老舗の大島茶店が地元の人々に愛されていた。店先には白南風が気持ちよさそうに吹き抜け、暑さを和らげてくれる。店の中では、店主の大島清兵衛がお茶を丁寧に淹れている。
「清兵衛さん、今日も暑いですね」と、近所の農家のおばあさんが小さな器に手を添えて座って言った。
清兵衛は微笑んで、お茶をおばあさんに差し出した。「そうですね、白南風が吹くと少しは涼しくなりますが、暑さも増してきましたね。畑の作業も大変でしょう」
おばあさんは優しく笑って、「そうですね、でもまだ小暑の初候ですから、暑さもこれから本番ですよ。この頃は野山の草花も美しくて、風情がありますね」
店の中では、畑仕事で汗をかいた若い農夫たちも、ひと息つきながらお茶を飲んでいた。仕事の話や近隣の噂話が飛び交い、茶店は賑やかな雰囲気に包まれていた。
美咲は家の庭で白南風を感じながら、夕日を眺めていた。彼女は都会で芸術家を目指していたが、父親の病気と家業の継承のために戻ってきたのだった。都会での夢を諦めたことに未だに小さな後悔を感じながらも、彼女は田舎の静けさと自然の美しさに感謝していた。
夕日の光が稲穂を黄金色に染める中、彼女はかつて都会で過ごした日々を思い出していた。その時、突然黒い叢雲が沸き上がり、空一杯に広がっていく。
ぴかー。
ごろごろ。
耳をつんざくような雷鳴が響き渡り、人々は戸惑いうろたえる。美咲もまた、かつての静けさが一変する様子に驚きを隠せなかった。
「いきなりですか?」
「ですねー」
灼熱の太陽が容赦なく照りつけ、気温はぐんぐん上がり、37℃を超えていた。誰かが悲鳴にも似た声を上げる。「ひー、体温より高い><」
「非難しないと」
「避雷針のあるところがいいんだけど……」
「きゃーーー」
美咲は悲鳴を上げ、腰が抜けたようにへなへなとしゃがみこんでしまった。子供の頃なら布団に潜り込んでいたのを思い出す。彼女はまるでこの世の終わりのように感じていた。
「おへそを隠せ」
こんな時でも冗談を言える人がいることに驚きながら、彼女はまるで蚤のような心臓を持つ自分を哀れに思った。
机の下に隠れている人もいた。ゲリラ雷雨。そういえば、落雷の訓練なんて聞いたことがない。落ち着いたら、どう対処したらいいのかネットで調べようと思った。
「そういえば、モーゼの十戒で神の声は雷のようだったんだっけ」
少し慣れてくると、だんだん落ち着いてくる。このあたりでは一面に広がる水田で田の草の手入れをしている女を直撃したという話もよく聞く。八幡様の高い木にも落ちて真っ二つにひびが入っりしていた。
直撃雷を受けやすい場所
広く開けたところ
・グラウンド、野球場、サッカー場
・公園、広場、屋外プール
・ゴルフ場、キャンプ場
・海(海岸、海水浴場、海上も)
・川、河川敷
・田畑などの田園地帯
周辺より高いところ
・山頂・山の尾根(稜線)
・ビルの屋上
雷の特徴の一つに「高いものに落ちる」という性質があります。
広く開けた場所や高いところでは、そこにいる人が「最も高いもの」となってしまい、直撃雷を受ける危険があります。
ゴルフクラブや釣り竿のような長いものを体より高く掲げると、避雷針のように雷を引き寄せてしまうので大変危険です。
同様に傘を差すことも危ないのでやめましょう。
山頂や尾根で雷にあったら、ただちに谷に避難して身の安全を図ることが大切です。
側撃雷を受けやすい場所
高い木の下・林や森の中
樹木よりも人体の方が電気を通しやすいので、木に落ちた雷が木の近くにいる人に飛び移ることがあります。そのため、木の下での雨宿りは厳禁です。やむを得ず木のそばにいるときは、側撃を避けるために木の枝先から4m以上離れましょう。
ビルや家の軒下
雷の電気は物体の表面を流れる性質があるので、屋根に落ちた雷が壁や軒先を経て軒下にいる人に飛んでくることがあります。軒下は雨宿りの定番スポットですが、雷のときは避けてくださいね。
直撃雷も側撃雷も落雷すれば命に関わる事態です。雷が鳴ったら危険な場所から速やかに離れてください。
「安全な場所はどこなんだー」
世紀末を思わせる轟音に人々はたじたじになっている。一人の老人が大きな声で叫んだ。
「大きな建物の中か、車の中へ」
震えあがるような畏怖の念を起こさせる人々は改めて、減災の必要性を知るのだった。
温風至(あつかぜいたる)
7月7~11日頃
暖かい風が吹いてくる
夏の暑さもいよいよ本番
梅雨入りの頃に吹く風を「黒南風(くろはえ)」
梅雨明けの頃は「白南風(しろはえ)
白南風によって湿った暖かな空気が流れ込みやすく、
それが上昇してむくむくと立ち上がり積乱雲になる
小暑の初候、温風が吹き抜ける頃、田舎町の片隅では静かな午後が流れていた。空は青く澄み渡り、遠くの稲穂が風に揺れている。村人たちは、畑での作業を終えて、ひと休みしているところだった。
村の中心にある小さな茶店では、老舗の大島茶店が地元の人々に愛されていた。店先には白南風が気持ちよさそうに吹き抜け、暑さを和らげてくれる。店の中では、店主の大島清兵衛がお茶を丁寧に淹れている。
「清兵衛さん、今日も暑いですね」と、近所の農家のおばあさんが小さな器に手を添えて座って言った。
清兵衛は微笑んで、お茶をおばあさんに差し出した。「そうですね、白南風が吹くと少しは涼しくなりますが、暑さも増してきましたね。畑の作業も大変でしょう」
おばあさんは優しく笑って、「そうですね、でもまだ小暑の初候ですから、暑さもこれから本番ですよ。この頃は野山の草花も美しくて、風情がありますね」
店の中では、畑仕事で汗をかいた若い農夫たちも、ひと息つきながらお茶を飲んでいた。仕事の話や近隣の噂話が飛び交い、茶店は賑やかな雰囲気に包まれていた。
美咲は家の庭で白南風を感じながら、夕日を眺めていた。彼女は都会で芸術家を目指していたが、父親の病気と家業の継承のために戻ってきたのだった。都会での夢を諦めたことに未だに小さな後悔を感じながらも、彼女は田舎の静けさと自然の美しさに感謝していた。
夕日の光が稲穂を黄金色に染める中、彼女はかつて都会で過ごした日々を思い出していた。その時、突然黒い叢雲が沸き上がり、空一杯に広がっていく。
ぴかー。
ごろごろ。
耳をつんざくような雷鳴が響き渡り、人々は戸惑いうろたえる。美咲もまた、かつての静けさが一変する様子に驚きを隠せなかった。
「いきなりですか?」
「ですねー」
灼熱の太陽が容赦なく照りつけ、気温はぐんぐん上がり、37℃を超えていた。誰かが悲鳴にも似た声を上げる。「ひー、体温より高い><」
「非難しないと」
「避雷針のあるところがいいんだけど……」
「きゃーーー」
美咲は悲鳴を上げ、腰が抜けたようにへなへなとしゃがみこんでしまった。子供の頃なら布団に潜り込んでいたのを思い出す。彼女はまるでこの世の終わりのように感じていた。
「おへそを隠せ」
こんな時でも冗談を言える人がいることに驚きながら、彼女はまるで蚤のような心臓を持つ自分を哀れに思った。
机の下に隠れている人もいた。ゲリラ雷雨。そういえば、落雷の訓練なんて聞いたことがない。落ち着いたら、どう対処したらいいのかネットで調べようと思った。
「そういえば、モーゼの十戒で神の声は雷のようだったんだっけ」
少し慣れてくると、だんだん落ち着いてくる。このあたりでは一面に広がる水田で田の草の手入れをしている女を直撃したという話もよく聞く。八幡様の高い木にも落ちて真っ二つにひびが入っりしていた。
直撃雷を受けやすい場所
広く開けたところ
・グラウンド、野球場、サッカー場
・公園、広場、屋外プール
・ゴルフ場、キャンプ場
・海(海岸、海水浴場、海上も)
・川、河川敷
・田畑などの田園地帯
周辺より高いところ
・山頂・山の尾根(稜線)
・ビルの屋上
雷の特徴の一つに「高いものに落ちる」という性質があります。
広く開けた場所や高いところでは、そこにいる人が「最も高いもの」となってしまい、直撃雷を受ける危険があります。
ゴルフクラブや釣り竿のような長いものを体より高く掲げると、避雷針のように雷を引き寄せてしまうので大変危険です。
同様に傘を差すことも危ないのでやめましょう。
山頂や尾根で雷にあったら、ただちに谷に避難して身の安全を図ることが大切です。
側撃雷を受けやすい場所
高い木の下・林や森の中
樹木よりも人体の方が電気を通しやすいので、木に落ちた雷が木の近くにいる人に飛び移ることがあります。そのため、木の下での雨宿りは厳禁です。やむを得ず木のそばにいるときは、側撃を避けるために木の枝先から4m以上離れましょう。
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直撃雷も側撃雷も落雷すれば命に関わる事態です。雷が鳴ったら危険な場所から速やかに離れてください。
「安全な場所はどこなんだー」
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