春秋花壇

紫陽花色の心模様

紫陽花色の心模様

雨のしとしと降る初夏の午後、紫陽花が咲き乱れる庭園に一人の女性が佇んでいた。結愛（ゆあ）、25歳。結婚を夢見る彼女の心は、紫陽花の色のように変わりやすく、複雑な模様を描いていた。

結愛は高校時代からの友人である直也（なおや）と、大学を卒業してからもずっと友人関係を続けてきた。直也は優しく、頼りがいのある男性で、結愛にとっては安心できる存在だった。しかし、彼との関係は友人以上には進展しなかった。結愛の心には、直也に対する特別な感情が芽生え始めていたが、その一方で、自分の気持ちに確信が持てず、次第に悩むようになっていた。

ある日、結愛は直也と共に訪れた庭園で、紫陽花の花を見つめながら心の中で問いかけた。「私は、本当に直也と結婚したいのだろうか？」

その問いに答えるように、直也がふと口を開いた。「結愛、君は25歳までには結婚したいって言ってたよね。もうすぐ誕生日だけど、今、何か考えていることはある？」

直也の問いに結愛は驚きながらも、素直に答えた。「そうね、25歳までに結婚したいってずっと思ってた。でも、本当に誰と結婚したいのか、最近はよく分からなくなってきたの。」

直也は少し困ったような表情を浮かべた後、優しく微笑んだ。「結愛が幸せになることが一番大事だから、焦らなくていいよ。君の気持ちが整理できるまで、僕はずっとそばにいるから。」

その言葉に結愛の胸は熱くなった。直也の優しさに触れるたびに、彼への想いが深まっていく。しかし、同時にその想いが友情を壊してしまうのではないかという恐れもあった。

数日後、結愛は再び庭園を訪れた。紫陽花の花はますます色鮮やかになり、彼女の心もまた色とりどりの感情で満たされていた。直也と過ごす時間が増えるたびに、結愛は自分の本当の気持ちに気づき始めた。彼女は直也を愛していた。そして、その愛を伝えるべき時が来たのだと感じた。

ある静かな夜、結愛は直也を家に招いた。リビングには紫陽花の花が飾られており、その光景はまるで彼女の心の模様を映し出しているかのようだった。結愛は深呼吸をして、直也の目を見つめた。

「直也、ずっと言いたかったことがあるの。」結愛の声は少し震えていたが、決意は固かった。「私、あなたのことが好きです。友達としてじゃなくて、もっと特別な存在として。あなたと一緒に未来を歩みたいと思っているの。」

直也は驚きと喜びが入り混じった表情を浮かべた。「結愛…本当に？」

「うん。本当に。あなたと一緒にいると、私は安心できるし、幸せを感じるの。だから、もしあなたも同じ気持ちなら、私たちの関係を次のステージに進めたい。」

直也はしばらく黙っていたが、やがて柔らかな笑みを浮かべて結愛の手を取った。「結愛、僕もずっと君のことが好きだった。でも、君の気持ちを尊重したくて、言い出せなかったんだ。君と一緒に未来を築いていけるなら、これ以上の幸せはないよ。」

その瞬間、結愛の心に紫陽花色の幸福感が広がった。二人はお互いの手をしっかりと握りしめ、これから始まる新しい日々に向けて一歩を踏み出した。雨上がりの庭園には、鮮やかな紫陽花の花が二人の幸せを祝福するかのように咲き誇っていた。