春秋花壇

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桜草が終わりました 一期一会

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桜草が終わりました 一期一会
1.

薄曇りの空の下、小さな庭の片隅で、桜草の花が静かに散り始めていた。

かつては鮮やかに咲き誇っていた花も、今は色褪せて弱々しく、風に揺れては地面に落ちていく。

庭の主である老夫婦は、その桜草を見つめながら、静かに語り合っていた。

2.

「桜草が終わりましたね。」

夫が、妻に語りかける。

「そうですね。今年も美しい花を咲かせてくれましたね。」

妻が、優しく答える。

二人は、長い間この桜草を育ててきた。毎年春になると、美しい花を咲かせては、老夫婦の心を癒してくれた。

3.

「桜草は、一期一会の花だと言いますね。」

夫が、感慨深げに言う。

「そうですね。一度咲いたら、二度と会うことはない。」

妻が、静かに頷く。

桜草は、春に花を咲かせたら、その年の秋には枯れてしまう。毎年同じ花を見ることはできないが、だからこそ、その一瞬一瞬がかけがえのないものとなる。

4.

「私たちは、もう若くはありませんね。」

夫が、妻の手を握りしめる。

「そうですね。でも、私たちはまだ元気です。」

妻が、夫に微笑みかける。

二人は、長い人生を共に歩んできた。数々の苦難を乗り越え、喜びを分かち合ってきた。

5.

「これからも、仲良く過ごしましょうね。」

夫が、妻を見つめる。

「はい、約束です。」

妻が、夫に寄り添う。

二人は、桜草を見つめながら、静かに約束を交わした。

6.

桜草の花は、すべて散り落ちてしまった。

しかし、その跡には、新たな命が芽吹いていた。

それは、来年また美しい花を咲かせる桜草の苗だった。

7.

老夫婦は、その苗を見つめ、微笑み合った。

桜草の花は、毎年散っていく。しかし、その命は途切れることなく、次の世代へと受け継がれていく。

8.

「一期一会は、寂しい言葉ですね。」

夫が、つぶやく。

「でも、それは希望の言葉でもあるのです。」

妻が、優しく答える。

桜草の花は、私たちに教えてくれる。

人生は、一期一会である。

だからこそ、一瞬一瞬を大切に生きなければならない。

そして、その命を次の世代へと繋げていくことが、私たちの使命である。

9.

老夫婦は、庭のベンチに腰掛け、静かに語り合った。

夕暮れの光が、二人を優しく包み込む。

10.

桜草の花は終わってしまった。

しかし、老夫婦の心には、新たな希望が芽生えていた。

それは、来年の春、また美しい桜草の花が咲くことを願う希望だった。

終わり

テーマ

一期一会
人生
希望
メッセージ

人生は、一期一会である。一瞬一瞬を大切に生き、その命を次の世代へと繋げていくことが、私たちの使命である。

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