ミューステリオン

消失した絵画

消失した絵画
薄暗い美術室に、少女の影が二つ。一人は、床に散らばった絵具と筆を見つめる。もう一人は、静かにキャンバスに立ち尽くす。

「ねえ、美咲…どうして…？」

声を振り絞るように、少女は問いかける。美咲は、かつての親友だった。しかし、今はもういない。

一週間前、美咲は突然姿を消した。残されたのは、完成間近だったはずの絵画と、意味深なメッセージ。

「私は…自由になる…。」

絵画は、誰も見たことがないはずの風景を描いていた。それは、まるで異世界のような美しさだった。

「美咲は…どこに行ったの…？」

少女は、再びキャンバスを見つめる。絵画は、何も語らない。

少女の名前は、真尋。美咲とは、幼い頃から仲良くしていた。

真尋は絵を描くのが好きだった。美咲は、そんな真尋をいつも励ましてくれた。

ある日、真尋は美咲に誘われて、廃墟となった洋館を訪れた。洋館の地下室には、古い絵画が飾られていた。

その絵画は、真尋の心を奪った。それは、見たことのない美しさだった。

美咲は、真尋に言った。

「いつか、こんな絵を描きたいね。」

美咲が姿を消した後、真尋は毎日美術室に通った。

美咲が最後に描いた絵画を、完成させようとしていた。

しかし、真尋にはどうしても完成させることができなかった。

絵画は、真尋に語りかけてくるようだった。

「私を探して…。」

真尋は、絵画に導かれるように、洋館へと再び向かった。

地下室に降りると、真尋は目を疑った。

壁に飾られていた絵画が、すべて消えていた。

そして、床には一冊の古びた本が置かれていた。

真尋は、恐る恐る本を開いた。

そこには、絵画に描かれた風景の秘密が記されていた。

真尋は、本に記されていた指示に従って、洋館の奥へと進んだ。

すると、壁に隠し扉が現れた。

扉の先には、光に包まれた空間が広がっていた。

そして、その空間の中央には、美咲が立っていた。

美咲は、真尋に微笑んだ。

「真尋、来てくれてありがとう。」

真尋は、美咲に駆け寄り、抱きしめた。

「美咲、どこに行ってたの…？！」

「私は…絵画の世界に迷い込んでいたの。」

美咲は、真尋に絵画の世界の話を聞かせてくれた。

それは、真尋が想像していたよりも、はるかに美しい世界だった。

真尋は、美咲と一緒に絵画の世界に行くことを決意した。

美咲は、真尋に手を差し伸べた。

「真尋、一緒に…自由になりましょう。」

真尋は、美咲の手を握りしめた。

そして、二人は光の中へと消えていった。

美術室には、再び誰もいなくなった。

ただ、床には一冊の古びた本が残されていた。

その本は、真尋と美咲の冒険の始まりを告げるものだった。