悪役令嬢ですが、何か?

春秋花壇

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悪役令嬢マリー・アントワネットのマリー・テレーズ・シャルロットへの愛

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「悪役令嬢マリー・アントワネットのマリー・テレーズ・シャルロットへの愛」

パリの空が重く垂れこめ、革命の足音が近づく中、マリー・アントワネットは独房に囚われていた。時の流れに逆らうことはできず、彼女が辿った数々の過ちや贅沢は、王妃の立場で奪われていった。しかし、その中で彼女の心に唯一残ったものがあった。それは娘マリー・テレーズ・シャルロットへの愛だった。

革命に飲み込まれ、王政が崩壊する中、王妃として過ごした華やかな日々は遠い記憶となったが、彼女は一度も母親であることを忘れたことはなかった。初めて娘を抱いたときの柔らかな温もり、赤子が小さな手を握り返してきた感覚。それは、彼女にとって何物にも代えがたい宝物であり、決して朽ち果てることのない愛の象徴だった。

「テレーズ……私の小さなテレーズ……」

マリー・アントワネットは独房の片隅で、娘の名前を何度も呟いた。革命の恐怖と絶望に苛まれながらも、彼女の心は唯一つ、娘への愛で支えられていた。どんなに貧しい牢獄であっても、マリーは心の中で娘を抱きしめ、母親としての誇りを失わなかったのだ。

そして、娘がどれほど自分を慕ってくれているかも知っていた。たとえその愛情が表に現れることが少なかったとしても、二人の間にある絆は強く、確かに存在していた。時折、娘に手紙を書くことも許され、マリーはその紙面に何度も優しく手を置きながら、テレーズの幸せを願う言葉をしたためた。

しかし、それでも時は残酷であった。裁判の日が近づき、死刑判決が迫る中、彼女はある決意を固めた。それは、残された時間でできる限り娘のために手紙を書くことだった。手紙には、母としての後悔や愛、そして人生で学んだ大切な教訓をすべて記すことを心に決めていた。

「テレーズ、あなたには母の姿を憎む者もいるでしょう。でも、それでもあなたは私の誇りであり、宝物です。私はあなたを心から愛しています。そして、たとえこの世にいなくなっても、いつもあなたを見守り続けます。」

その最後の手紙を書き上げたとき、マリー・アントワネットの目から一粒の涙が零れた。それは母としての悲しみと、娘に伝えられない愛への無念が混じり合った一滴だった。

彼女が断頭台へと歩むその日、彼女の胸の中にはただ一つ、娘への想いが息づいていた。世間が彼女を「悪役令嬢」として見ようとも、彼女は心の底から娘を愛する母であった。その愛だけが、彼女を人間として生かし続けた最後の光であった。

そして、マリー・アントワネットがその最後の時を迎えたとき、彼女の心には静かな祈りがあった。どうか、娘テレーズが自由と愛に満ちた未来を歩んでいけるようにと。そして、いつの日か彼女の愛が届き、テレーズが母の想いを知ることができる日が訪れることを願って。






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