悪役令嬢ですが、何か?

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
256 / 284
その他の悪役令嬢たち

パルミラの覇者

しおりを挟む
「パルミラの覇者」

太陽が沈む頃、広大な砂漠にそびえるパルミラの城壁が黄金色に染まっていた。女王ゼノビアはその城壁の上から砂の彼方を眺めていた。彼女の目には、広大な領地が燃えるような色で映り、その視線の先には、やがて征服すべき新たな地が見えているようだった。

ゼノビアは若き頃から、並外れた知識と智謀を備えていた。ペルシャ語やエジプト語、ラテン語まで操り、政治と戦術にも通じていた彼女は、しばしば「クレオパトラの再来」と称されることを喜びこそしなかったが、密かにその称号を誇りにしていた。彼女が目指したのは、単なる後継者の地位ではなかった。彼女は、ローマから独立し、中東の覇者として自らの名を歴史に刻むことを望んでいたのである。

当初、ゼノビアは夫であるオダエナトゥスと共にローマの名のもと、パルティアや偽皇帝の討伐で数多くの功績を上げていた。ローマは彼らを褒め称え、彼女たちの手腕を信頼した。だが、夫の死後、ゼノビアの心は野望へと向かう。彼女は夫の前妻との息子を暗殺し、自らの幼い息子を後継者に据え、パルミラ帝国の樹立を宣言した。

「我が領土は、かつてローマが持っていた繁栄と富を超えるものになるだろう」

彼女の宣言は、パルミラの人々を奮い立たせた。ゼノビアはエジプトを手中に収め、シリアにも進軍し、一大帝国を築き上げた。ローマの影響を排除し、独立した存在としてのパルミラを掲げるその姿勢は、彼女の野心を端的に表していた。

やがて、ローマ帝国のアウレリアヌス皇帝が立ちはだかる。ローマは彼女の成功を脅威と見なし、彼女の動きを徹底的に潰そうと動き出したのだ。

アウレリアヌスは迅速かつ苛烈に行動し、ゼノビアの軍勢は次々と打ち破られていった。ついに敗北を余儀なくされたゼノビアは、ローマへと連行される。壮麗な装いで首都に到着する女王の姿を見たローマ市民は、彼女の美貌とその落胆に満ちた瞳に目を奪われた。

彼女はローマの裁きに直面しながらも、その知恵と機転を使って最後の策略を巡らせた。

「私が起こしたことではなく、部下たちが独断で行ったのです」

その言葉は、ローマ帝国の高官たちを動揺させた。ローマは彼女の部下たちを厳しく処罰し、ゼノビアの命は助けられることとなった。

ローマでの生活は、かつての輝かしい栄華とは程遠い静かなものだったが、ゼノビアはその暮らしの中でも新たな知識を追求し続けた。彼女は余生の中で、自分が成し遂げた事業について考える日々を送った。確かに自分は野心に燃え、ローマ帝国に匹敵する力を持つ帝国を築こうとした。しかし、その野望が一瞬にして崩れ去ったことを受け入れるしかなかった。

歳月が流れるにつれ、ローマでもゼノビアの名は歴史の中で語り継がれた。彼女がどれほどの智謀を持っていても、クレオパトラほど有名になることはなかったが、彼女の魂は彼女が築いた帝国と共に砂漠の風に乗って生き続けていた。

「歴史は勝者によって作られる。しかし、真実を知る者がいれば、いつか私の物語も正当に評価される日が来るだろう」

彼女の言葉は、静かに歴史の彼方に消えていった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

処理中です...