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スタイリッシュにおっさん 決めてみた 雨に遊ぶ
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「みんと、おいで」
「はーい♪」
今日も、みんとの笑顔はアメリカン花見月のように満開。
今日の東京は、12℃。
かなり強い雨が降っている。
前の公園の遊歩道には、白やピンクのアメリカン花見月が競うように
咲き誇っている。
今年の公園は、桜の季節になって、ものすごい強めの剪定が施された。
4月の下旬になっても、芽吹きさえない状態だった。
この公園の管理は、腹が立つほど、旬や彩を考えていなかった。
引っ越してきた8年前には、色んなお花が咲き乱れていた。
今の季節なら、つつじとかアメリカン花見月とか……。
それが今は、つつじはほとんど花が咲かない状態で、
哀れにも残骸が少しだけある。
アメジストセージや女郎花も花の盛りに刈り込む。
どういう管理会社なんでしょうね。
金木犀もこれから花が咲くという時期に剪定を施す。
趣旨がよくわからなかった。
新型の感染症のせいで、じみにイライラしているのかもしれない。
いつもなら、ラジオ体操に二人で自転車で向かっている時間。
今日は雨で、きっとラジオ体操もお休み。
諒はみんとを誘って、前の葉のない木立の公園を散歩することにした。
「諒ちゃん、またそのサンダルはいたの?」
みんとが不思議そうな顔で、諒を見ている。
「あははは、くせだな」
このサンダルは、穴が開いているのだ。
新しいサンダルを買ってきたのだが、
大きくてぶかぶかではきづらかった。
当然のように、公園のじゅるじゅるの土の上に行くと、
水がサンダルのなかに滲みこんでくる。
ジワジワと靴下が濡れていく感覚がとても気持ち悪い。
それでも、吐きなれたこれがいいのだ。
「古女房みたいなもんさ」
「古女房を知らないのに?」
「まあ~な♪」
砂が多めの公園の土は、小さな小川が流れている。
「春の小川はさらさらいくよ♪」
「岸のすみれやれんげの花に♪」
二人で小さな声で歌っている。
たまには雨に遊ぶのもいいものだ。
子供の頃は、雨降りが好きだった。
いつの間にか、雨をうっとうしいと感じるようになった。
「小学校のとき、突然の雨に、みんなお母さんが傘を持ってきたことがあって」
「うん」
「私だけ、待っても待っても持ってきてもらえなくて」
「あら」
「先生が家に電話して、出ないから来るのかと思ってずーと待っていて
とうとう、夕方になって、学校の黄色の傘を借りて帰った」
「あううう」
「さみしかったな。悲しかったな」
「お母様は、どうされていたの?」
「母は、あの頃アルコール依存症で、
家に帰ったら酔いつぶれていた」
「……」
「でも、雨降りが好きで、黄色の傘をぐるぐる回して遊びながら帰ってたな」
「楽しそうね」
「うん、傘に蛙が飛び乗ったらとか想像しながら」
「かえるいやだーーー」
「小川におたまじゃくしを取りに行って」
「うん」
「池を掘って、そこに入れてたら、蛙になってしまって」
「うわーー」
「母が朝、雨戸を開けたら、びっしり青蛙」
「きゃーーーーー」
「母は、青蛙が苦手だから、
ぎゃーーーーって」
「お母様かわいそう」
「あははははははは」
「ゴキブリも母は苦手だったみたいで、
ある時、学校から紙袋に入れて、もって帰ってきた」
「うん」
「母に、虫捕まえたよーって嬉しそうに渡したら、
その時もぎゃーーーーって」
「うわー、諒ちゃんいたずらっこ」
「じゃなくてー」
「ん?」
「わたしはその時、はじめてゴキブリとご対面だったんだ」
「なるほど、ならしかたないわよね」
「だろう?」
ゆっくりと公園の中を散歩しながらの昔話で、
いつしか明るい朝になっていた。
靴下もかなり濡れて、べちょべちょ。
「みんと、いたずらしていい?」
「うん」
諒は、靴と靴下を脱いではだしでべとべとざらざらの公園を歩いた。
「おお、地球が優しい」
「楽しそう」
「みんともやる?」
「私は遠慮します」
人もそろそろ歩き始めたので、家に帰ることにした。
さて、べとべとどろどろの足、どうしましょうか。
裏庭から入って、水道で足を洗った。
ズボンには、結構はねが上がっていたので、
シャワーを浴びて着替えた。
「おう、楽しかった」
ミントが大きなバスタオルで頭を拭いてくれる。
「ありがとうな♪」
「諒ちゃん、ご機嫌」
「まあな」
みんとの入れてくれた温かい抹茶ミルクがおいしい。
「ふーーー」
硬派だし、コウ裸足
岡江に下駄渡し、丘へ逃げた私
裸足派だしー
「諒ちゃん、寒いってw」
今日はなに食べようか。
いつの間にか、バケツをひっくり返したような大雨。
バシャバシャとすごい音がしている。
「さっぽりしたものが食べたい」
みんとは、臨月だから相当おなかが大きくなって、
動くのもしんどそう。
「よし、今日は私が作ろう。みんとは白鳥でも聞いていて」
Yo-Yo Ma The Swan Saint-Saens
胎教を考え、穏やかにチェロの曲にした
はすと人参とごぼう、しめじ、しいたけ、筍、鶏肉の筑前煮。
抵抗力と免疫力アップだ。
さっと鯵の干物を焼いて、わかめときゅうりの酢の物。
わかめご飯で出来上がり。
「ご飯がすごくおいしい」
ご飯を食べ終わって、おなかの赤ちゃんの音を
みんとのおなかに耳を付けて聞いている。
「外から聞くのと、体内音とぜんぜん違うね」
「類ちゃん、パパですよ」
「結局、類にしたの」
「ああ、男でも女でも類」
生まれる前から、名前をつけてもらって
愛されて望まれて生まれてくる子は幸せだよね。
「諒ちゃん、絶対いなくならないでね」
「?」
「この子が大人になるまで死んだりしたらいや~よ」
「まかせろ」
本当は、明日の命なんて誰にもわからないといいたいが、
みんとが心配するから、あえて言わなかった。
さあ、これから、緊急事態宣言が全国に出された中を
ハードル下げて幸せを味わっていけるか、ヨーイドン。
スタイリッシュにおっさん 決めてみたぜ!!
「はーい♪」
今日も、みんとの笑顔はアメリカン花見月のように満開。
今日の東京は、12℃。
かなり強い雨が降っている。
前の公園の遊歩道には、白やピンクのアメリカン花見月が競うように
咲き誇っている。
今年の公園は、桜の季節になって、ものすごい強めの剪定が施された。
4月の下旬になっても、芽吹きさえない状態だった。
この公園の管理は、腹が立つほど、旬や彩を考えていなかった。
引っ越してきた8年前には、色んなお花が咲き乱れていた。
今の季節なら、つつじとかアメリカン花見月とか……。
それが今は、つつじはほとんど花が咲かない状態で、
哀れにも残骸が少しだけある。
アメジストセージや女郎花も花の盛りに刈り込む。
どういう管理会社なんでしょうね。
金木犀もこれから花が咲くという時期に剪定を施す。
趣旨がよくわからなかった。
新型の感染症のせいで、じみにイライラしているのかもしれない。
いつもなら、ラジオ体操に二人で自転車で向かっている時間。
今日は雨で、きっとラジオ体操もお休み。
諒はみんとを誘って、前の葉のない木立の公園を散歩することにした。
「諒ちゃん、またそのサンダルはいたの?」
みんとが不思議そうな顔で、諒を見ている。
「あははは、くせだな」
このサンダルは、穴が開いているのだ。
新しいサンダルを買ってきたのだが、
大きくてぶかぶかではきづらかった。
当然のように、公園のじゅるじゅるの土の上に行くと、
水がサンダルのなかに滲みこんでくる。
ジワジワと靴下が濡れていく感覚がとても気持ち悪い。
それでも、吐きなれたこれがいいのだ。
「古女房みたいなもんさ」
「古女房を知らないのに?」
「まあ~な♪」
砂が多めの公園の土は、小さな小川が流れている。
「春の小川はさらさらいくよ♪」
「岸のすみれやれんげの花に♪」
二人で小さな声で歌っている。
たまには雨に遊ぶのもいいものだ。
子供の頃は、雨降りが好きだった。
いつの間にか、雨をうっとうしいと感じるようになった。
「小学校のとき、突然の雨に、みんなお母さんが傘を持ってきたことがあって」
「うん」
「私だけ、待っても待っても持ってきてもらえなくて」
「あら」
「先生が家に電話して、出ないから来るのかと思ってずーと待っていて
とうとう、夕方になって、学校の黄色の傘を借りて帰った」
「あううう」
「さみしかったな。悲しかったな」
「お母様は、どうされていたの?」
「母は、あの頃アルコール依存症で、
家に帰ったら酔いつぶれていた」
「……」
「でも、雨降りが好きで、黄色の傘をぐるぐる回して遊びながら帰ってたな」
「楽しそうね」
「うん、傘に蛙が飛び乗ったらとか想像しながら」
「かえるいやだーーー」
「小川におたまじゃくしを取りに行って」
「うん」
「池を掘って、そこに入れてたら、蛙になってしまって」
「うわーー」
「母が朝、雨戸を開けたら、びっしり青蛙」
「きゃーーーーー」
「母は、青蛙が苦手だから、
ぎゃーーーーって」
「お母様かわいそう」
「あははははははは」
「ゴキブリも母は苦手だったみたいで、
ある時、学校から紙袋に入れて、もって帰ってきた」
「うん」
「母に、虫捕まえたよーって嬉しそうに渡したら、
その時もぎゃーーーーって」
「うわー、諒ちゃんいたずらっこ」
「じゃなくてー」
「ん?」
「わたしはその時、はじめてゴキブリとご対面だったんだ」
「なるほど、ならしかたないわよね」
「だろう?」
ゆっくりと公園の中を散歩しながらの昔話で、
いつしか明るい朝になっていた。
靴下もかなり濡れて、べちょべちょ。
「みんと、いたずらしていい?」
「うん」
諒は、靴と靴下を脱いではだしでべとべとざらざらの公園を歩いた。
「おお、地球が優しい」
「楽しそう」
「みんともやる?」
「私は遠慮します」
人もそろそろ歩き始めたので、家に帰ることにした。
さて、べとべとどろどろの足、どうしましょうか。
裏庭から入って、水道で足を洗った。
ズボンには、結構はねが上がっていたので、
シャワーを浴びて着替えた。
「おう、楽しかった」
ミントが大きなバスタオルで頭を拭いてくれる。
「ありがとうな♪」
「諒ちゃん、ご機嫌」
「まあな」
みんとの入れてくれた温かい抹茶ミルクがおいしい。
「ふーーー」
硬派だし、コウ裸足
岡江に下駄渡し、丘へ逃げた私
裸足派だしー
「諒ちゃん、寒いってw」
今日はなに食べようか。
いつの間にか、バケツをひっくり返したような大雨。
バシャバシャとすごい音がしている。
「さっぽりしたものが食べたい」
みんとは、臨月だから相当おなかが大きくなって、
動くのもしんどそう。
「よし、今日は私が作ろう。みんとは白鳥でも聞いていて」
Yo-Yo Ma The Swan Saint-Saens
胎教を考え、穏やかにチェロの曲にした
はすと人参とごぼう、しめじ、しいたけ、筍、鶏肉の筑前煮。
抵抗力と免疫力アップだ。
さっと鯵の干物を焼いて、わかめときゅうりの酢の物。
わかめご飯で出来上がり。
「ご飯がすごくおいしい」
ご飯を食べ終わって、おなかの赤ちゃんの音を
みんとのおなかに耳を付けて聞いている。
「外から聞くのと、体内音とぜんぜん違うね」
「類ちゃん、パパですよ」
「結局、類にしたの」
「ああ、男でも女でも類」
生まれる前から、名前をつけてもらって
愛されて望まれて生まれてくる子は幸せだよね。
「諒ちゃん、絶対いなくならないでね」
「?」
「この子が大人になるまで死んだりしたらいや~よ」
「まかせろ」
本当は、明日の命なんて誰にもわからないといいたいが、
みんとが心配するから、あえて言わなかった。
さあ、これから、緊急事態宣言が全国に出された中を
ハードル下げて幸せを味わっていけるか、ヨーイドン。
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