老人

春秋花壇

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孫の顔が見たい

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孫の顔が見たい

70歳の冬、雅代は静かな部屋に一人腰掛け、ふと窓の外に目を向けた。積もりかけた雪が風に揺れる枯れ枝に絡まり、時折ちらちらと舞い散っている。子どもたちも成人し、それぞれの家庭を築いたが、仕事の忙しさもあり、顔を見せてくれるのは年に数えるほど。ひとり息子が遠くに住むことは仕方ないとしても、孫の顔すらも見られない日々に、いつしか寂しさが忍び寄るようになった。

「来年、あの子も小学校に入学するんだっけ…」

孫の年齢を思い返すと、成長した姿を一目でいいから見たいと願う自分がいる。家族が集まると、孫が家の中を走り回り、笑い声が響く。その愛らしい姿を抱きしめることが、何よりも雅代の楽しみだったのに、今は静かな部屋の中で、その記憶を頼りに寂しさをしのぐばかりだ。

ある日、雅代は新聞の端に「オンライン面会サービス」という文字を見つけた。サービスの案内には、ひとり暮らしの高齢者向けに、家族とオンラインで会話ができるとある。さっそく息子に連絡し、そのサービスを利用できないかと相談した。

「お母さん、オンラインの操作、できる?」

電話の向こうから少し不安そうな息子の声が聞こえた。雅代は、たとえ多少の操作が難しくても、何としても孫の顔を見たいという気持ちが勝り、笑いながら「なんとかやってみるわ」と答えた。

数日後、雅代の小さな画面に孫の顔が映し出された。まるでそこに実際にいるかのように、孫が手を振り、無邪気な笑顔を見せている。雅代は驚きと感動で、しばし言葉を失った。その小さな顔が、以前よりも少し大人びているように見え、時の流れを感じずにはいられない。

「来年は小学生になるのね」

「うん、ランドセル買ってもらったんだ!見せてあげる!」

孫はカメラ越しにランドセルを持ち上げ、満面の笑みで雅代に見せてくれた。重そうに背負ってはにかむ姿が、何とも愛らしい。

雅代は少しずつオンラインの操作に慣れ、毎週のように孫との面会を楽しむようになった。遠くに住んでいるとはいえ、こうして声を聞き、姿を見られるだけで、心の中に温かいものが満ちていく。

冬が過ぎ、春が訪れ、孫が入学式を迎える日、雅代は新しいスーツを着てカメラの前に座った。息子から送られてきた孫の入学式の写真を見ながら、画面越しにその日を祝う。いつか本当に抱っこできる日がくるといい。その思いを胸に、今日も雅代は、小さな画面の向こうの笑顔を大切に見守り続けた。






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