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豪華…入居費1億3000万円 悠々自適な老人ライフ

豪華…入居費1億3000万円 悠々自適な老人ライフ

都心から車で30分、緑に囲まれた山の中腹に、豪華な老人ホーム「アストラル・ヒルズ」が佇んでいる。その名の通り、星の輝きを彷彿とさせるようなモダンなデザインで、周囲には手入れの行き届いた庭園が広がり、四季折々の花が入居者を迎えていた。入居費1億3000万円という破格の価格設定だが、ここに住むのは、長年働き、成功を収めた人々ばかりだ。

85歳の和泉正義もその一人だった。元々は大手建設会社の役員として長年勤め上げ、退職後は悠々自適な生活を送っていた。だが、歳を取るにつれて自宅での生活に不便を感じるようになり、数年前にこのアストラル・ヒルズへの入居を決めたのだ。初めて見学に訪れた際、その豪華さに圧倒されたことを今でも鮮明に覚えている。

アストラル・ヒルズは、居住スペースの広さ、設備の豪華さ、そしてきめ細かなサービスのすべてが揃った場所だった。各部屋には専用のリビングルームとベッドルームがあり、大きな窓からは庭園と遠くの山々が一望できる。また、レストランには毎晩、一流のシェフによるコース料理が提供され、日々異なるメニューが楽しめる。栄養バランスが考えられた料理は見た目も美しく、和泉は毎回、まるで高級レストランにいるかのような気分で食事をしていた。

「こういう暮らしができるなんて、夢のようだよな」と和泉はつぶやいた。若い頃は家族を支えるために必死で働き、自分の楽しみを後回しにしていた彼にとって、ここでの生活はまさに贅沢の極みだった。毎朝、パティオでコーヒーを楽しみ、午後にはフィットネス施設で軽い運動をして、その後はサウナや温泉でゆっくりと体を休める。心身ともにリフレッシュできる時間がここにはあった。

さらに、この老人ホームの特徴は、豊富なアクティビティにある。週に一度、外部から講師を招いて開かれる絵画や陶芸の教室があり、和泉もその一員として参加していた。若い頃にはできなかった趣味に挑戦することで、新たな発見があった。最近では油絵に夢中になっており、毎週少しずつ作品が形になっていくのが嬉しかった。次第に描くことが楽しくなり、自分の部屋の壁に自作の絵を飾るのが日課となっていた。

ただし、アストラル・ヒルズの生活が完璧だとしても、孤独を感じる瞬間がないわけではなかった。和泉には長年連れ添った妻がいたが、5年前に病で先立たれた。その悲しみを抱えながらも、ここに来ることを決意したのは、少しでも彼女が喜びそうな生活をしたいと思ったからだ。「君がここにいてくれたらな」と、ふと彼は空を見上げ、懐かしさと切なさに浸ることもある。

そんな和泉にとって救いとなったのは、他の入居者との交流だった。アストラル・ヒルズには、彼と同じように人生を積み重ねた人々が集まっていた。多くの入居者が、それぞれの経験や過去を語り合うことで互いの理解を深め、絆を築いていた。ある夜、ラウンジで酒を飲み交わしながら、一人の入居者が言った。「ここにいると、人生の最後を贅沢に楽しむことができる。でも、ここでの出会いは、それ以上に貴重な財産だと思う」

その言葉に和泉も深くうなずいた。彼もまた、同じような気持ちを抱いていたのだ。誰かと過去を共有し、共感し合うことで、孤独感が薄らぐ瞬間がある。この場所で過ごす時間は、彼にとって新たな人生の章を開くことになった。

しかし、アストラル・ヒルズでの生活が永遠に続くわけではない。和泉は日々、自分の命が有限であることを実感していた。それでも、ここでの一日一日が特別であり、充実していることに感謝していた。「最後まで、悔いのないように生きたい」と、彼は静かに心に誓った。

こうして、彼の老人ホームでの生活は続く。豊かな自然、美しい庭園、仲間との交流、そして静かに語りかけるような星空。1億3000万円をかけたその生活は、和泉にとってただの贅沢ではなく、人生の最後を輝かせるための舞台だった。