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神様からのプレゼント

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神様からのプレゼント
70歳の志乃おばあちゃまは、小さな時から不幸がお好き。彼女は一人で暮らしており、最近は風呂上りに裸のまま布団にもぐって、神様に文句を言うのが日課となっていた。

「神様、わたしは3歳の時に拉致監禁されてから、ずっといいことなんて何もなかった。こんなんだったら、生まれてくるんじゃなかった」

毎晩、志乃おばあちゃまの嘆きの声が神様のもとに届くので、神様も心を痛め、哀れに思われた。ある日、神様は彼女にそっとプレゼントをくださった。それはなんと、24歳下の彼氏だった。

「はーー? そんなもん、誰が欲しいといった? めんどくさい。わたしはただ、もう少し本が読めるようになればそれで充分なのに…」

実は、志乃おばあちゃまはものすごい男性不信だった。初体験がレイプだったり、同じ人と二度も結婚して貯金が全て彼の借金で消えてしまった経験から、男性を信じられなくなるのも無理はなかった。

さて、24歳年下の彼氏の名は飛鳥。彼はちびでぶはげで、決して一緒に歩いて誇らしい風貌ではなかった。しかし、志乃おばあちゃまが庭で花の手入れをしていると、飛鳥がいつの間にか話しかけてくるようになった。彼らは世代のギャップにもかかわらず、次第に共感することが増え、奇妙な絆を築き始めた。

飛鳥は志乃おばあちゃまの好きな曲、「セイイエス」や「愛は勝つ」、「もう恋なんてしない」を一緒に公園で歌ってくれた。彼らは一緒に楽しい日々を過ごし、周りの人たちは親子かなとほほえましく見守っていた。

ある日、志乃おばあちゃまはふと気づいた。彼女は飛鳥と過ごす時間を楽しみにしている自分がいることに。飛鳥もまた、志乃おばあちゃまの話を真剣に聞いてくれる唯一の存在だった。彼らは互いにとって、失われた時間を取り戻す大切な存在となっていた。

志乃おばあちゃまの心には、いつしか温かい感情が芽生えていた。それはかつて感じたことのない安心感と喜びだった。彼女はもう一度、生きることの素晴らしさを感じ始めていたのだった。


志乃おばあちゃまと飛鳥の関係は日を追うごとに深まっていった。彼らはお互いの生活に溶け込み、飛鳥は志乃おばあちゃまの日常の一部となっていった。

ある日、公園で二人はふとしたことから、それぞれの過去を語り合う機会が訪れた。志乃おばあちゃまが経験した苦しい過去、そして飛鳥が抱える彼自身の悩みや挫折。その対話の中で、二人の間には新たなる理解と共感が生まれた。

「飛鳥さん、あなたはなぜこんなに私に優しくしてくれるの?」志乃おばあちゃまが静かに尋ねた。

「志乃さん、あなたがいてくれるから、私も少し救われている気がします。過去のことはどうしようもないけれど、今、ここにいる私たちが大切なんです。」

その言葉に、志乃おばあちゃまの目からは涙がこぼれ落ちた。彼女は長い間、自分の過去にとらわれて生きてきたが、飛鳥の存在が彼女に新たな希望をもたらしていることに気づいたのだ。

二人の関係は周囲からも見守られていた。公園で一緒に歌う姿や、手をつないで散歩する姿が、何か特別な絆があることを証明していた。時には年齢の差や生活の違いが壁になることもあったが、彼らはお互いに支え合い、成長していった。

そして、ある日、飛鳥は志乃おばあちゃまに大切な決意を伝えた。

「志乃さん、私はあなたとの時間を大切にしたい。結婚して、一緒に生活を築いていきたいんです。」

志乃おばあちゃまは驚き、そして喜びの涙を流した。彼女は再び幸せを手に入れたことに感謝し、飛鳥との新しい人生を心から歓迎した。

神様からのプレゼントは、一見すると予期せぬ出来事だったが、志乃おばあちゃまにとっては人生を変える大切な贈り物だった。彼女は過去の傷を乗り越え、飛鳥と共に歩む未来を前向きに見据えていた。

これで本とはめでたしめでたしなんだけど、一週間に一度、様子を見にきていた息子からしたら、自分よりも一つ年下のお父さんなんて、いったい何?って感じ。

ずっと支え合ってきたのに、いきなりこれはないでしょう。

「ここには二度とこない。来るわけがない」

「お母さんを捨てます。完ぺきに」

って、ふてくされています。

挙句の果てに、

「今度会う時は、また刑務所」

と、脅すのです。

やっぱり、志乃おばあちゃまは、不幸がお好きなのかな?




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