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春秋花壇

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茜色の夕餉

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「いひひひひ」
笑いが止まらない。
嬉しそうな楽しそうな茜おばあちゃんのケンケン笑い。
夕べは寂しくて、布団かぶって泣いていたのにね。

茜色の夕餉

東京都郊外の静かな住宅地に住む茜おばあちゃんは、70歳の独居老人だ。夫を数年前に亡くし、息子も家を離れ、今では一人で生活している。茜おばあちゃんは、毎日の生活を楽しむためにガーデニングや料理を趣味としていたが、やはり一人の時間が多く、時折、孤独感に襲われることもあった。

ある日、茜おばあちゃんの家の玄関ベルが鳴った。玄関を開けると、そこには息子の正志が立っていた。

「母さん、久しぶりだね!」正志が笑顔で言った。

茜おばあちゃんの顔も自然と笑顔になり、彼を家の中へ招き入れた。

「正志、よく来てくれたね。久しぶりじゃないか。さあ、上がって、ゆっくりしていっておくれ」と彼女は言いながら、息子のコートを受け取り、リビングに案内した。

「お母さん、今日は何か手伝えることはない?」正志はキッチンに目を向けながら尋ねた。

「大丈夫よ、今日はあなたのためにおいしい餃子を焼くわ。あの王将の餃子よ、あなたが子供の頃から大好きだったでしょう?」茜おばあちゃんは微笑みながら答えた。

正志は懐かしそうに笑い、「ああ、覚えてるよ。母さんの焼いた餃子が一番好きだったな」と言った。

茜おばあちゃんは手際よく餃子を焼き始めた。キッチンには香ばしい匂いが漂い始め、正志はその香りに誘われるようにキッチンの近くに立っていた。

「母さん、やっぱりこの香りだね。何年経っても変わらない」と正志が言うと、茜おばあちゃんは嬉しそうにうなずいた。

「そうでしょう。あなたが帰ってくるときはいつもこれを作るって決めているのよ」と彼女は答えた。

餃子が焼き上がり、茜おばあちゃんはそれをテーブルに並べた。二人は向かい合って座り、食事を始めた。餃子の皮はパリパリで、中身はジューシーで、正志は一口食べるごとに懐かしさと幸福感を味わった。

「本当においしいよ、母さん。ありがとう」と正志が言うと、茜おばあちゃんはほっとした表情を見せた。

「あなたが喜んでくれるなら、何よりだわ」と彼女は答えた。

食事が進むにつれて、二人は自然と会話を楽しむようになった。正志は最近の仕事の話や友人との出来事を語り、茜おばあちゃんは近所の人々との交流や庭の花について話した。会話の中には、笑い声や懐かしい思い出が織り交ぜられていた。

「母さん、庭の花はどう?また色々植えてるの?」正志が尋ねると、茜おばあちゃんの顔が明るくなった。

「ええ、今年もたくさんの花を植えたわ。特にチューリップが見事に咲いてくれてね。今度、一緒に庭を見に行きましょう」と彼女は答えた。

正志はうなずき、「ぜひ見たいな。母さんの庭はいつも素晴らしいからね」と言った。

食事を終えた後、二人は庭に出て、茜おばあちゃんが育てた花々を見ながら話を続けた。夕方の柔らかな光が庭を包み込み、花々が美しく輝いていた。

「母さん、この庭も本当に素晴らしいね。花の世話をするのは大変じゃない?」と正志が尋ねると、茜おばあちゃんは首を振った。

「いえ、これが私の楽しみなの。花の世話をしているとき、あなたやお父さんとの思い出が蘇ってくるのよ」と彼女は静かに答えた。

正志は少し感動しながら、「母さん、そういう時間を大切にしてるんだね。僕ももっと頻繁に帰ってこようと思うよ」と言った。

「それは嬉しいわ。でも無理はしないで、あなたも忙しいんでしょう?」と茜おばあちゃんは心配そうに言った。

「大丈夫さ、母さん。あなたが元気でいてくれるのが一番大切だから」と正志は優しく答えた。

その言葉に、茜おばあちゃんは安心し、二人で夕暮れの庭を楽しみ続けた。彼女にとって、息子とのひとときは何よりも貴重であり、彼の存在が彼女の心を満たしてくれた。

茜おばあちゃんは、その日を思い返しながら、夜の静けさの中でこう思った。「持っていないものや失ったものばかり数えるのではなく、今持っているものを大切にしなければならない」と。そして、息子が訪れる度に、彼との時間を最大限に楽しもうと心に誓ったのだった。

茜おばあちゃんの心には、息子との思い出という宝物がまた一つ増えた。そして、彼女の家には、彼が再び訪れる日を待ちわびる暖かな光が灯り続けるのだった。







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