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1月3日,金曜日

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1月3日,金曜日
約束してくださったのは信頼できる方……です。(ヘブ 10:23)

難しい問題を経験している時には,新しい世界がすぐには来ないように思えるかもしれません。それは,信仰が弱いということでしょうか。必ずしもそうではありません。例えで考えてみましょう。厳しい冬のさなかには,夏が遠い先のことのように感じるかもしれません。でも,夏は必ずやって来ます。同じように,ひどくがっかりしている時には,新しい世界が遠い先のことのように感じるかもしれませんが,強い信仰があるなら,エホバの約束は必ず実現すると考えることができます。(詩 94:3,14,15。ヘブ 6:17-19)そのような確信があるなら,エホバに仕えることを何よりも優先することができるでしょう。伝道を行う時にも強い信仰が必要です。多くの人は,新しい世界についての「良い知らせ」をただの理想だと考えます。(マタ 24:14。エゼ 33:32)そうした人たちの考え方に決して影響されないようにしましょう。そのためには,信仰を強める努力を続ける必要があります。塔研23.04 27ページ6-7節,28ページ14節

聖書を毎日調べる 2025


約束の光
1月3日、金曜日。吐く息が白く凍りつくような、刺すような寒さが身に染みる朝だった。街路樹の枝には白い霜が降り、アスファルトは冷たく光っている。街中は冬の静けさに包まれ、歩道を歩く人々の足音だけが、乾いた音を立てて響く。芳樹(ほうき)は、手袋をはめた手でぎゅっと握りしめた聖書を見つめながら、通勤途中の道を歩いていた。今日もまた、この聖書に慰めを求める一日が始まった。

最近、芳樹は心の中に漠然とした不安を抱えていた。それは、まるで底なしの沼のように、彼をじわじわと飲み込んでいくようだった。仕事では、目標としていたプロジェクトから外され、上司からの冷たい視線を感じる日々。リストラという言葉が頭をよぎり、胃のあたりが重くなるのを感じた。家族の問題も重くのしかかっていた。子供たちの受験が間近に迫り、家の中は張り詰めた空気で満ちていた。妻は心配そうな顔で芳樹を見つめるが、彼はうまく言葉にできずに、ただ曖昧に微笑むことしかできなかった。どこに向かっているのか分からない焦燥感と、この状況をどうすることもできない無力感が、彼の心を締め付けていた。

「もう少しで夏が来るよ」と母親の声が浮かんだ。幼い頃、芳樹が冬の寒さに震えていると、母はいつも優しくそう言って抱きしめてくれた。「冬が来れば必ず夏が来る。どんなに寒くても、必ず春は来るんだよ」と。それは、単なる季節の話ではなく、どんなに辛い時でも、希望を持ち続けることの大切さを教えてくれる、母からの大切な教えだった。その温かい記憶が、今の彼の心をわずかに温めた。凍てつくような現実に、一筋の光が差し込んだ気がした。

今日もまた、その言葉を思い出しながら、職場での一日を過ごしていた。昼休みに、芳樹は昼食をとりながら、静かな角の席で聖書を広げた。ヘブライ人への手紙の10章23節に目を通した。そこにはこう書かれていた。「約束してくださったのは信頼できる方です。」その言葉に、芳樹は深く息を吐いた。神は決して嘘をつかない。約束されたことは必ず実現する。今は辛く、先の見えない状況かもしれない。まるで、長く厳しい冬の真っただ中にいるようだ。しかし、この約束を信じることができれば、凍てつく心を溶かし、やがて訪れる春を、希望を抱いて待つことができる。その考えが、芳樹の心にわずかな光を灯してくれた。それは、暗闇の中で見つけた小さな灯火のように、心細いながらも確かな光だった。

午後、仕事が終わり家に帰る途中、芳樹は公園に立ち寄った。空は澄み渡り、冷たい風が頬を撫でた。周りでは子供たちが遊んでいるのが見え、幸せそうな家族の笑い声が耳に入ってきた。その光景に、芳樹は少しだけ心が温かくなるのを感じた。彼らにも、自分にも、きっと温かい春が来る。そう信じることができた。

「新しい世界が来る」――そう思った。信じ続けることで、今の困難も乗り越えられる。時折不安になるが、エホバの約束がある限り、彼はそれを信じ続けることができた。それは、暗いトンネルの先に、かすかに見える光を信じて歩き続けるような感覚だった。

家に帰ると、子供たちが宿題に取り組んでいる様子が見えた。妻は台所で夕食の支度をしていた。温かい味噌汁の匂いが、空腹の胃を優しく刺激する。芳樹は思わず妻に微笑みかけ、彼女の顔を見た。その笑顔が、芳樹にとっては何よりの力強い存在だった。彼女の笑顔を見るたびに、彼は自分が一人ではないことを、大切な家族と共に生きていることを思い出すことができた。

食事の後、家族で一緒に聖書の話をした。子供たちにとっても、その時間は大切なものだった。芳樹はその時、自分の信仰がどれほど家族の絆を強くしているかを改めて感じた。それは、家族を繋ぐ、見えないけれど強い糸のようだった。

「生きていれば、きっと良いことがある。」母の言葉が、今も彼の心の中で響き続けている。どんなに長く、厳しい冬が続いても、必ず訪れる春を信じて、今を大切に生きることが、芳樹にとっての信仰の表れだった。そして、彼は知っていた。春は必ず来る。それは、神との約束なのだから。

その日から、芳樹は少しずつ心の中で希望を育てるようになった。もちろん問題はすぐに解決するわけではない。リストラの不安も、子供たちの受験のプレッシャーも、依然として彼を悩ませている。しかし、信仰が支えてくれると信じて、前を向いて進み続けることができた。約束された新しい世界が、いつか必ず訪れると確信しながら。それは、長い旅路の途中で見つけた、小さなオアシスのようだった。

そして、芳樹の心に小さな光が灯り始めた。それは、暗い夜空に輝く一筋の星のように、小さくても確かな光だった。あるいは、凍てついた大地の下で、春を待つ草木の芽のように、力強い生命力を秘めた光だった。それは、決して消えることのない、希望の光だった。それは、約束の光だった。
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