日ごとに聖書を調べる

11月1日，金曜日

11月1日，金曜日

不快な言葉を口から出してはなりません。……励ましの言葉を述べ……ましょう。（エフェ 4:29）

クリスチャンは汚い言葉を決して使うべきではありません。とはいえ，注意していないと，気付かないうちに「暴言」を言ってしまうことがあるかもしれません。例えば，文化や民族や国籍が違う人について話している時に，比較してネガティブなことを言ってしまわないように気を付ける必要があります。また，人を悪く言うような言葉にも注意する必要があります。励みとなる言葉を語りましょう。不満や不平を言うのではなく，人を褒めるようにしましょう。イスラエル人は，感謝できることがたくさんあったにもかかわらず，繰り返し不満を口にしました。不満は伝染します。約束の地を偵察するために遣わされた人たちのうち10人が悪い報告をした時，どうなったでしょうか。「イスラエル人は皆モーセ……に対して不満を口にし始め」ました。（民 13:31–14:4）一方，褒め言葉には人を元気づける力があります。ですから，機会を見つけて心からの褒め言葉を語るようにしましょう。塔研22.04 8ページ16-17節

聖書を毎日調べる 2024


『失われた光の中で』

11月1日、金曜日。早朝、陽子はいつも通り聖書を開き、今日の教えに目を通していた。エフェソス4章29節、「不快な言葉を口から出してはなりません」。その言葉が心に響く。最近、家族との会話で些細なことで苛立ち、ついきつい口調になってしまうことが増えていた。特に夫の雅人とは些細なことでぶつかり、反省する間もなく言い争いが重なっていた。

その日の夕方、陽子は夫と待ち合わせて一緒に夕食を取る予定だったが、仕事でトラブルが発生し、約束の時間に遅れることになった。焦って連絡を入れるが、雅人の反応は冷たい。ため息をつきながら「またか」と呟く声が電話越しに聞こえ、陽子の心はさらに沈んだ。

仕事を終え、待ち合わせ場所に向かうと、雅人が疲れた表情で立っていた。陽子が息を切らして駆け寄ると、雅人は険しい顔で彼女を見下ろし、ため息をつく。「本当に、君は時間にルーズだな。」

その言葉に、陽子の胸にわだかまっていた感情が一気に噴き出した。「私だって忙しいのよ！毎日毎日頑張ってるのに、少し遅れただけでそんなに責める必要があるの？」

二人の間には、しばし沈黙が流れた。いつもならここで謝って終わるはずだった。しかし、その日は違った。言葉の応酬が続き、ついにはお互いの嫌な面ばかりが口をついて出てしまう。気づけば二人は口論の末、食事どころか一緒に帰ることすらせず、別々に家路を辿っていた。

帰宅してから、陽子は自分の態度を反省した。いつの間にか、愛する人に対しても思いやりのない言葉を投げつけてしまうようになっていた。朝の聖書の言葉が、頭の中を何度もよぎる。不快な言葉を口にしてはいけないと心に刻んだばかりなのに、それを守れなかった自分が恥ずかしかった。彼女は祈り、心の内で神に赦しを求めた。

翌朝、陽子はふと、イスラエル人が繰り返し不満を口にしたことを思い出した。彼らには感謝するべきことがたくさんあったが、悪い報告が一度入ると、それが不満を伝染させ、皆が悲観的になった。まさに今の自分も、そうした「伝染」に囚われていたのかもしれない。周囲の状況や感情に流され、不満や怒りの言葉が連鎖していたのだ。

その日、陽子は決意を新たに、夫に対して感謝の気持ちを伝えようと心に決めた。仕事から帰宅すると、雅人はまだリビングで仕事をしていた。陽子は静かに彼に近づき、緊張しながらも優しい声で言った。「昨日はごめんなさい。いつも支えてくれてありがとう。」

雅人は驚いた顔をして陽子を見上げた。陽子の真摯な言葉に、彼の表情が和らぐ。「俺も、言い過ぎたかもしれない。ごめん。君がどれだけ頑張ってるか、俺だって知ってるよ。」

二人は微笑み合い、ようやくわだかまりが解けた。その後、陽子は意識的に感謝の言葉を口にするように心がけた。小さな感謝の積み重ねが、二人の関係に安らぎをもたらし、日々の不満や苛立ちが少しずつ消えていくのを感じた。

エフェソスの教えは、彼女の心の中で生き続けていた。