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受けようとしている苦しみを恐れてはなりません。……たとえ死ぬことになっても,忠実であり続けなさい。そうすれば,あなたに命の冠を与えます。(啓

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10月3日,木曜日

受けようとしている苦しみを恐れてはなりません。……たとえ死ぬことになっても,忠実であり続けなさい。そうすれば,あなたに命の冠を与えます。(啓 2:10)

イエスはスミルナとフィラデルフィアのクリスチャンに,迫害を恐れてはいけないと述べました。忠実を保つなら報われるからです。(啓 3:10)私たちは迫害に遭うことを覚悟し,それを喜んで忍耐する必要があります。(マタ 24:9,13。コリ二 12:10)「啓示」の書は,神に仕える人たちが「主の日」に,つまり現代に迫害を受けることを述べています。(啓 1:10)啓示 12章によると,神の王国が設立された直後,天で戦争が起きます。ミカエル(栄光を受けたイエス・キリスト)が忠実な天使たちと共に,サタンや邪悪な天使たちと戦います。(啓 12:7,8)サタンと邪悪な天使たちは戦いに敗れ,地の近辺に投げ落とされます。その結果,地とそこに住む人たちに大きな苦しみがもたらされます。(啓 12:9,12)塔研22.05 5ページ12-13節

聖書を毎日調べる 2024


『命の冠』

10月3日、木曜日の朝、晴れ渡る空の下で北川理子は聖書を開いていた。読み始めたのは「啓示」の書、そこに刻まれている言葉は、彼女の心に深く響いていた。「受けようとしている苦しみを恐れてはなりません。……たとえ死ぬことになっても、忠実であり続けなさい。そうすれば、あなたに命の冠を与えます」という一節が、静かに彼女の胸に刻まれた。

理子は自分の人生を振り返ってみた。若い頃から信仰を持ち続け、家族や周囲の反対にも屈せず、神の教えに従い続けてきた。しかし、最近は特に厳しい現実に直面していた。夫の圭一が癌と診断され、家族全員が試練の中にいた。圭一は信仰を持たない人だったが、理子は彼に寄り添いながらも、信仰に基づく希望を捨てることはなかった。

「理子、今日は病院で検査があるんだろ?」朝食の席で、圭一が静かに言った。彼の声はどこか疲れ切っていたが、その眼差しは今までとは違い、少し落ち着きを見せていた。

「うん、午後にね。でも、その前に少しだけ時間をもらえる?」理子は聖書を指差しながら微笑んだ。

圭一は少し眉をひそめたが、何も言わずに頷いた。理子はベランダへ出て、朝の澄んだ空気を吸い込みながら、再び聖書を手に取った。彼女は今日の箇所をもう一度読み返し、心の中で祈りを捧げた。「どうか、神よ、私にこの試練を乗り越える力を与えてください。そして、圭一に平和を与えてください。」

聖書を閉じた後、理子はふと、あることを思い出した。聖書には、迫害を恐れてはいけないとあるが、それは必ずしも外部からの攻撃だけではないのだと。自分の内なる恐れや絶望もまた、信仰に対する試練である。圭一の病気と向き合う中で、理子は何度もこの恐怖と戦ってきた。彼女の心の中では、希望と絶望が交錯していた。

午後になり、理子と圭一は病院に向かった。検査の結果を待つ間、理子は圭一の手を握りしめた。待合室の静けさが、二人の間に重くのしかかっていた。理子は心の中で何度も「忠実であり続けなさい」という言葉を繰り返していた。

やがて、医師が部屋に入ってきた。検査結果はあまり良いものではなかった。圭一の病状は進行しており、治療の効果も限られているという現実を突きつけられた。

「理子、もう無理かもしれないな…」病院の帰り道、圭一がぽつりと呟いた。

「そんなこと言わないで。まだ希望はあるんだから」理子は言葉を選びながら、必死で前を向こうとしたが、彼女自身もその言葉に確信を持てていない自分がいた。

家に戻り、静かな夕食を終えた後、圭一はベッドに横になった。理子は彼の隣に座り、黙って彼を見つめた。病と闘う夫の姿は、かつての強く頼もしかった彼とは違って見えた。しかし、理子はその中にある彼の弱さをも受け入れ、愛し続けることを決意していた。

その夜、理子は再び聖書を開いた。「啓示」の12章に記された言葉が彼女の目に留まった。天での戦い、ミカエルとサタンの戦い、そしてサタンが地に投げ落とされるという壮大な物語。理子はその場面を想像し、自分自身の戦いに重ね合わせた。

「サタンが地に投げ落とされた後の世界は、苦しみに満ちているけれど、それでも忠実であるなら、命の冠が与えられるのだ」

理子は目を閉じ、深い祈りを捧げた。彼女の心には、どんな苦しみがあっても、忠実であり続けることが大切なのだという確信が芽生えていた。それは、死をも超える命の冠を得るための試練だと。

翌日、理子は病室で夫に寄り添いながら、その思いを彼に伝えた。

「圭一、私はあなたのそばにずっといるよ。どんなに辛くても、私たちには信じるべき希望がある。だから、恐れずに進もう」

圭一は理子の言葉を聞き、黙って頷いた。彼の目には、かすかに涙が浮かんでいたが、それは恐怖の涙ではなく、彼女の信仰に触れた感謝の涙だった。

日々は続き、圭一の病状はますます悪化していったが、理子は決して絶望することはなかった。彼女は自分を信じ、神の約束を信じ続けた。そして、圭一もまた、彼女の信仰に支えられ、最後まで希望を持ち続けた。

ある晩、圭一が静かに息を引き取ったとき、理子は彼の手を握りながら、心の中でこう祈った。「あなたは忠実であり続けました。どうか、命の冠を与えられますように」と。

理子は涙を流しながらも、微笑んでいた。彼女は知っていた。どんなに大きな苦しみがあっても、忠実であることの意味を。そして、それこそが本当の勝利なのだと。






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