いとなみ

永遠の距離

永遠の距離

美月との関係は、僕にとっても解決の見えない迷路のようだった。彼女の愛情が強まるごとに、それが重く、そして怖く感じることが増えてきた。最初は些細な不安だったけれど、次第に日常のすべてが美月の存在で占められていく。僕の生活、友人関係、家族の心配までもが、彼女の想いに飲み込まれているようだった。

ある日、美月が「もっと一緒にいたい」と言い出した。その目には、燃えるような執着と、それに反するかのような儚さが入り混じっていた。彼女の内面で何かが苦しんでいるのを感じたけれど、僕がその苦しみに応えることはできなかった。愛は支え合うものだと信じていたのに、美月の愛はいつしか僕を支配しようとするものに変わってしまっていたからだ。

そんな彼女の思いを受け止めきれず、僕はとうとう距離を置くことを提案した。僕もまた、彼女を大切に思っていたからこそ、この関係が健全なものに戻るためには、一度冷静になる時間が必要だと信じたのだ。けれど、美月の反応は予想以上に激しかった。

「どうして？私がどれだけあなたを想っているか分かってるでしょう？」彼女はそう叫び、涙を流しながら僕の腕を掴んだ。その手の強さは、彼女の感情の深さと、僕への依存の強さを物語っていた。

僕はその時、自分の決断が彼女に与える影響の重さに圧倒された。心が痛むのを感じながらも、自分のため、そして彼女のために、再び距離を置くべきだと静かに告げた。

数週間後、彼女からの連絡は途絶えた。友人や家族の話では、美月は一度実家に戻り、療養を受けることになったという。彼女の心が少しでも癒されることを願いつつも、僕の心には後悔と安堵が交錯する複雑な感情が渦巻いていた。

美月との関係は完全に終わったわけではなかった。お互いの心に深い痕跡を残しながらも、それぞれの道を歩むことになった。彼女が少しでも前向きな人生を歩むための支えになれたのか、僕には分からない。

それでも、僕たちの物語が残したものは、永遠に僕の心の中で囁き続ける。美月の愛情が純粋であったからこそ、僕はその痛みを忘れられないだろう。