いとなみ

春秋花壇

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心の中の灯火

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心の中の灯火

彼のことを初めて見た瞬間、私の心に小さな灯火がともった。彼は穏やかで、いつも周りを気遣っていて、何よりも私のことを優しく見守ってくれた。誰も私にそんなふうに接してくれたことはなかったから、その優しさは新鮮で、どこか夢のように感じられた。

最初はただの好意だった。彼のそばにいると、気持ちが安らぎ、心の中の寂しさが少しずつ埋められる気がした。ずっと孤独だった私は、彼に会うたびに「もっと彼の近くにいたい」と思うようになった。でも、やがてその気持ちは次第に変わっていき、「離れたくない」という執着に変わり始めた。

彼が他の女性と話しているのを見るだけで、胸がぎゅっと締め付けられるような気持ちになった。心の中で「彼は私のもの」という考えが芽生え、他の誰にも渡したくないという思いが強くなっていった。でも、こんな気持ちは普通じゃないと、どこかでわかっていた。けれども、不安や孤独に苛まれる中で、彼への想いだけが私を支えてくれる唯一の灯火だったのだ。

ある晩、いてもたってもいられなくなって、彼の家の前まで来てしまった。彼が私のことを忘れているのではないか、他の誰かと過ごしているのではないか、そんな疑念が頭をよぎるたびに、夜も眠れなくなった。家の明かりが消えているのを確認し、少しだけ安心したけれど、同時に「自分が何をしているんだろう」という疑問が心に浮かんだ。

彼が家から出てきて、驚いた顔で私に話しかけてきた。「美月、こんな夜遅くに何してるんだ?」と。私は焦って泣き出してしまった。「だって、あなたが他の人といるんじゃないかと思って…どうしても不安で…」自分がどれだけ彼に依存してしまっているか、その瞬間に気づいたが、もうどうしようもなかった。

彼は私を心配そうに見つめてくれたけど、心のどこかで彼を試している自分がいた。「本当に私を見ていてくれるの?」と、確認せずにはいられなかった。けれども、こうした行動が彼を苦しめていることに、私も気づき始めていた。彼の負担になっていると思うと、自分が嫌になり、でも彼がそばにいないと不安で押しつぶされそうで、もうどうしていいのかわからなかった。

「自分のせいで、彼を傷つけてしまっているのかもしれない…」そんな思いが胸を締め付けるが、それでも彼から離れる勇気はなかった。私には、彼しかいないのだから。

それからしばらくして、彼から「このままじゃ、俺たちはダメになってしまう」と言われた。その言葉が突き刺さり、彼に依存しすぎている自分がどれほど彼を傷つけていたかを痛感した。けれど、彼から離れることを想像するだけで、息ができなくなるほどの恐怖が襲ってきた。

誰かと深くつながることへの憧れと、孤独に対する恐怖が入り混じった私の心。彼がいなければ私は壊れてしまうような気がして、何度も電話をかけたり、メッセージを送ったりしてしまった。でも、返事が来ないたびに絶望し、自分の存在がどれほど小さいのかを痛感してしまう。

私が彼にこうして依存するのには、理由があるのかもしれない。幼い頃から両親との関係がうまくいかず、愛されていると感じたことがなかった私は、誰かに必要とされることに飢えていたのだ。彼の優しさが、その欠けた部分を埋めてくれるかのように思えた。

でも、それは彼にとって重荷でしかなかったのだろう。心の中で「ごめんね」と何度も繰り返しながらも、彼にどう謝罪すればいいのかも、どうすれば彼を楽にさせられるのかもわからなかった。

彼にとって、私の存在が負担になり、彼の生活を壊してしまっているのなら、どうすれば私は彼にふさわしい人間になれるのだろうか。心の中の不安と孤独が彼への執着心を生んでいると気づいていても、それを変える方法がわからない。

彼から「少し距離を置こう」と言われたとき、私はどうしてもそれに応じることができなかった。孤独に打ち勝つためには、彼が必要なのだと思い込んでしまっていたからだ。彼のいない世界に耐える勇気を持つには、私の心はまだ弱すぎた。

今も、彼のいない空間が私を押しつぶそうとする。でも、彼にふさわしい自分になるために、少しずつでもこの不安や孤独に向き合っていくしかないと理解し始めている。いつか彼に会えるときには、もう少し穏やかな笑顔で会えるように。









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