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春秋花壇

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ほんのり12歳の初恋

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ほんのり12歳の初恋

12歳の春、桜が満開の頃、あかりは新しい中学校に進学した。期待と不安が入り混じる中、彼女はクラスメイトたちとともに新しい生活を始めることになった。友達を作ることができるか、自分に合った場所を見つけられるか、彼女の心はドキドキしていた。

ある日のこと、体育の授業でクラスが男女に分かれてサッカーをすることになった。あかりは運動が得意ではなかったが、仲間たちと楽しむことができればいいと思っていた。グラウンドに出て、ボールが転がる中、彼女の目に留まったのは同じクラスのゆうただった。彼は背が高く、サッカーが上手で、みんなの憧れの的だった。

その日、ゆうたがボールを蹴り込んだ瞬間、彼女の心臓が跳ねた。「かっこいい…」と無意識に思ってしまう。あかりは、自分の心に初めて芽生えた感情に戸惑った。彼と話したこともなかったのに、彼の笑顔を見ただけで、なんだか特別な気持ちが湧いてきた。

次の日から、あかりはゆうたを意識するようになった。彼が話している声や笑っている姿を見かけるたびに、心が高鳴るのを感じた。友達に「ゆうたくんって、どう思う?」と尋ねると、彼女の気持ちを察した友達は笑って「好きなの?」と言ってくる。それを聞くたびに、あかりは赤面しながら否定するのが精いっぱいだった。

ある日、クラスメイトたちでお弁当を食べることになった。あかりは緊張しながらも、友達の輪に加わることにした。お弁当を広げていると、ゆうたも近くに座った。彼と同じ空間でお弁当を食べるなんて、夢のような瞬間だった。

「あ、これ、何?」とゆうたがあかりのお弁当を指さした。彼の質問に、あかりはちょっとドキドキしながら「おにぎりです。お母さんが作ってくれた」と答えた。彼は「おいしそうだね」と笑い、その笑顔があかりの心を温かくした。

その日から、彼女は少しずつ勇気を出して、ゆうたと話す機会を増やしていった。友達と一緒にいるとき、彼が話しかけてくれたら、嬉しくてたまらなかった。しかし、彼に自分の気持ちを伝えることはできなかった。まだ初恋のドキドキ感を味わっている最中で、彼女はその感情をどう扱えばいいのか分からなかった。

数週間が経つと、学校では文化祭の準備が始まった。クラスごとに出し物を考え、あかりたちのクラスはお化け屋敷をすることになった。彼女はその準備に参加しながら、ゆうたとも一緒に過ごす時間が増えた。共同作業を通じて、少しずつ彼との距離が縮まっていくのを感じた。

ある日の放課後、文化祭の練習を終えた後、ゆうたが「明日の昼休みに、お化け屋敷の準備を手伝ってくれない?」とあかりに頼んできた。彼の言葉に、あかりは嬉しさでいっぱいになった。「もちろん、手伝うよ!」と力強く答えた。心の中で「これはチャンスだ!」と思った。

その日、彼と一緒に準備をしながら、あかりは少しずつ勇気を出して、自分の気持ちを彼に伝えようと決意していた。けれど、言葉にすることは簡単ではなかった。彼の近くにいるだけで、胸が高鳴り、言葉が出てこない。

準備が進む中、あかりはふと、彼の目を見つめた。彼の視線が自分に向けられていると気づいた瞬間、心臓がドキドキし始めた。「私、実は…」と言いかけたとき、彼がにっこりと笑って「お化け屋敷、楽しみにしてるよ」と言った。その瞬間、あかりは言葉を飲み込んでしまった。

文化祭の日がやってきた。クラスのみんなが協力し合って、楽しいお化け屋敷を作り上げた。あかりはその中で、ゆうたとたくさんの思い出を作ることができた。彼と笑い合ったり、友達と一緒に楽しんだり、心の底から充実した時間を過ごした。

しかし、文化祭の終わりが近づくにつれ、あかりの心には切なさが広がっていた。彼に自分の気持ちを伝えることができないまま、時間が過ぎてしまうことが怖かった。彼女は、何とかしてその気持ちを伝えたかったが、どうしても言葉が出てこなかった。

文化祭の最後の日、あかりは自分の思いを決心した。「これが最後のチャンスだ!」彼女はゆうたに直接会うことを決めた。ドキドキしながらも、公園に向かった。そこで彼が友達と話しているのを見かけた。

「あの、ゆうたくん!」と呼びかけると、彼は振り向いた。あかりはその瞬間、心の中にため込んでいた気持ちを吐き出した。「私、ゆうたくんが好きです!」と。

ゆうたは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに優しい笑顔に変わった。「ありがとう、あかり。嬉しいよ」と彼は言った。その瞬間、あかりの心は嬉しさでいっぱいになった。彼の言葉が彼女にとっての特別な瞬間となり、思い出として永遠に心に残るだろう。

12歳の初恋は、ほんのりとした甘酸っぱさを残しながら、あかりにとって特別な思い出となった。彼女はこの経験を通じて、恋心のドキドキ感と、初めての気持ちを大切に思うことを学んだ。そして、この気持ちがいつかまた誰かに出会ったときに、色鮮やかに蘇ることを願っていた。









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