いとなみ

家族との出会い

家族との出会い

次の週の日曜日、朝から気分が高揚していた。由美からの誘いは、俺にとって思いがけない嬉しいサプライズだった。彼女の家族が東京に出てくるとのことで、観光案内を手伝ってほしいという。これまでの楽しい時間が続いているだけに、さらに彼女の家族との出会いに期待が膨らんでいた。

待ち合わせは東京駅。駅の大きな建物をバックに、俺は少し早めに到着し、彼女の到着を心待ちにしていた。時間が経つにつれ、少し緊張してきた。由美の家族と会うのは初めてだ。どういう印象を与えたいのか、頭の中で色々なシミュレーションを繰り返していた。

やがて、由美が駅の改札口から出てくると、明るい笑顔を浮かべていた。その後ろには、両親とおぼしき二人がいて、家族全員が一緒にいる姿を見て、心が温かくなった。「圭介さん、こっち！」と由美が手を振る。俺は思わず笑顔になり、彼女のもとへ駆け寄った。

「お待たせ、これが私の家族です」と由美が紹介してくれた。両親は温かい笑顔で迎えてくれた。母親は優しそうな目をし、父親は少し照れくさそうに微笑んでいる。俺も挨拶をして、軽く頭を下げた。「はじめまして、圭介です。今日はよろしくお願いします！」

「こちらこそ、よろしくね」と母親が言い、父親も「今日は東京を楽しませてもらおう」と言ってくれた。会話が始まると、どこかリラックスした雰囲気が流れた。俺は、由美の家族と共に過ごす時間がどんなものになるのか、少し楽しみになった。

最初の目的地は、東京タワー。由美が「ここに行くのが一番楽しいと思うから！」と意気込んで提案してくれた。俺たちは四人で東京タワーに向かい、エレベーターで展望台へと上がっていった。窓から見える東京の景色は、まるで絵画のように美しく、家族みんなが感嘆の声を上げた。

「わぁ、すごい！圭介さん、ここからの景色はどう？」と由美が目を輝かせて尋ねてきた。

「本当に素晴らしいよ。東京の街が一望できるね」と返すと、由美の目はさらに輝いているように見えた。彼女の楽しそうな姿を見ていると、俺も自然と笑顔になった。隣にいる彼女の家族がどれだけ幸せそうに過ごしているか、その姿がとても印象的だった。

展望台からの景色を堪能した後、次は浅草の雷門に向かうことになった。雷門の前に立つと、由美が「これが雷門！とても有名なんだよ」と嬉しそうに説明してくれた。両親も感心しながらカメラを取り出し、家族全員で写真を撮ることに。

「圭介さんも入って！一緒に撮ろう！」と由美が呼びかけてくれた。俺は笑顔で参加し、家族と一緒に記念の写真を撮った。瞬間的に、俺はこの家族といることが自分にとって特別な意味を持つように感じた。

その後、仲見世通りを歩きながら、屋台で食べ物を買ったり、由美の母親が興味津々に和菓子を見たりして楽しんでいた。和菓子を選ぶ母親を見て、俺は自分の母親のことを思い出した。似たような光景が、俺の家族でもあったなと思い、何だか懐かしい気持ちが溢れた。

その日の終わり、家族との時間が本当に楽しくて、気づけば夕方になっていた。「今日一日、本当にありがとう。楽しかった！」と由美が嬉しそうに言った。

「俺も楽しかったよ。由美の家族に会えて良かった」と俺が返すと、彼女は目を細めて笑った。家族との出会いを通じて、俺はさらに由美のことを知ることができた気がした。

由美の両親も「圭介さんは素敵な人だね。由美が選んだ人だけあって、安心しました」と言ってくれた。その言葉は、俺にとって嬉しいお墨付きだった。由美といることで、彼女の家族に少しでもいい印象を与えられたことが、心の中での自信につながった。

その後、帰り道、由美と並んで歩きながら「私、圭介さんともっといろんなところに行きたい」と言ってくれた。俺もそれに賛同し、「次はどこに行こうか？」と尋ねた。由美は考え込んで、「次は、鎌倉とか行ってみたいな」と明るく答えた。

次の約束を交わしながら、心の中で何かが少しずつ変わっているのを感じた。家族の温かさを感じられた一日が、俺の心に新たな希望を灯してくれたのだ。

この出会いが、今後の俺の人生にどのような影響を与えるのかは分からないが、少なくとも今は、由美との関係がより深まることを願っていた。そう思った瞬間、俺の心の中に小さな光が差し込んでくるような気がした。