いとなみ

高身長、高学歴、高収入、そして料理好き

高身長、高学歴、高収入、そして料理好き

身長は186センチ、東大卒のエリートで、年収も周りの友人たちから羨ましがられるほどだ。加えて、料理も得意で、週末には自分で作った美味しい料理を楽しむ時間が何よりも好きだった。そんな完璧なスペックを持つ俺、佐藤圭介（さとうけいすけ）は、なぜか恋人がいなかった。友人たちは口々に「圭介はモテるはずだ！」と言ってくれるが、なぜか自分にはその気配がなかった。

ある日、入社してから2年目の俺が、初めて風邪をひいてしまった。熱はなく、軽い鼻水と喉の痛みだけだったが、会社に行くには少し無理がある状態だった。普段の俺なら、どんな状態でも仕事に行く自信があるが、この日はさすがに休むことにした。

「なんで今、風邪なんだろうな」と自嘲気味に思いながら、布団に横たわっていると、突然のインターホンの音が聞こえた。誰だろうと不思議に思いながら、立ち上がると、玄関を開けるとそこには、同僚の女の子たちが立っていた。彼女たちは、食料と花を持って、心配そうな顔をしている。

「圭介くん、大丈夫？ 風邪ひいたって聞いて、来ちゃった」と、いつも明るい笑顔の横山美咲（よこやまみさき）が言った。

「いや、全然大したことないよ」と、俺は心配をかけたくなくて軽く笑う。

「ほら、私たちの愛情たっぷりのスープとおにぎり。元気になってね」と、美咲は手に持っていたタッパーを差し出した。

その後ろにいる藤井（ふじい）や高橋（たかはし）も、次々に料理を差し出してくる。みんな優しいなと思いつつ、気恥ずかしさが先立つ。女の子たちがこんな風に心配してくれるなんて、自分にとっては嬉しいサプライズだった。

「これ、私の特製スープ。絶対に美味しいから、食べてみて！」と美咲が自信満々に言った。彼女の目はキラキラと輝いていて、まるで自分が料理を作ったかのように嬉しそうだ。

「ありがとう、食べるよ！」と俺は笑顔で受け取る。優しい気持ちに包まれると同時に、自分の心のどこかにあった孤独感が少し和らいだ気がした。

「それに、これも持ってきたから、飾ってね」と高橋が持っていた花束を差し出す。色とりどりの花々は、見るだけで心が華やぐ。風邪で体調が優れない時でも、少しでも心が癒されるのを感じた。

「本当にありがとう。こんなに気遣ってもらえるなんて、嬉しいな」と、心から感謝の気持ちを伝えた。

「じゃあ、また元気になったらみんなで飲みに行こうね！」と藤井が笑いかける。「その時までに、いい女見つけておかないと！」

彼女たちの言葉に、俺は少し恥ずかしさを感じた。高身長、高学歴、高収入、料理もできる。そんな俺が、どうして恋人がいないのか。思い返してみると、普段の生活は仕事中心で、プライベートな時間が少なかったように思う。まるで、理想の人生を追い求めるあまり、恋愛に目を向ける余裕がなかったのかもしれない。

「将来のお嫁さん、見つかるといいな」と、美咲がふと口にする。俺はドキリとした。その言葉に自分の心の奥底にあった願望が引き寄せられた気がする。

「うん、頑張ってみるよ」と、軽い調子で返すが、その瞬間、何か心の中で大きな変化があった。自分自身の幸せを見つけることを、少しずつ意識してみようと思ったのだ。

「じゃあ、またね。元気になったら、みんなで料理教室とか行こうよ！」と高橋が言った。仲間たちの温かさが心に染みる。彼女たちが去った後、俺は少しだけ自分の心を整理した。

休むことは恥ではない。自分の健康を大切にしながら、出会いの場を増やしていくこと。次第に気持ちが楽になり、将来のことを考える余裕ができてきた。心の中の不安が和らぎ、希望に満ちた気持ちが芽生え始めた。

その日から、俺は自分の生活スタイルを見直し始めた。仕事だけでなく、趣味や友人たちとの時間も大切にしようと決意した。そして、風邪が治ったら、自分から積極的に出会いの場に足を運ぶことにした。

「次は、料理教室だ」と心に誓いながら、日々を大切に過ごしていこうと思った。そうすれば、素敵な出会いも待っているはずだ。高身長、高学歴、高収入、料理好きの俺が、ついに自分の人生に恋愛を取り入れる時が来たのだ。