いとなみ

春秋花壇

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どうすればこののぼせたような気持ちがなくなるのだろう

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どうすればこののぼせたような気持ちがなくなるのだろう

陽子は、朝から何かが変だと感じていた。頭がぼんやりしていて、まるで高熱が出ているかのように体がだるい。手元のスマートフォンの通知音が鳴り響くが、返信する気力も湧かない。外は快晴で、秋のさわやかな風が窓から差し込んでいるにもかかわらず、心の中は重く、身体はのぼせたように熱い。心臓の鼓動さえも、いつもより大きく感じられる。

「どうして、こんな気持ちになるんだろう?」と、陽子は独り言をつぶやく。

その原因は、心の奥で分かっていた。最近出会った一人の男性、涼太のことだ。彼と会うたびに感じる胸の高鳴りが、いつの間にか日常に影を落としている。彼の笑顔、優しさ、そしてふとした瞬間の仕草。それらすべてが、陽子の心を揺さぶり続けているのだ。

彼との出会いは、職場の飲み会だった。最初は、ただの同僚の一人だと思っていた。特別目立つわけでもなく、話しやすい性格の持ち主で、誰からも好かれるタイプ。だが、その飲み会の後、彼から送られてきた「お疲れ様でした」という一言に、なぜか心が跳ね上がった。

それからというもの、彼と一緒に過ごす時間が増えるたび、陽子は自分の気持ちが深まっていくのを感じた。しかし、その感情をどう表現すればいいのかが分からない。恋愛感情なのか、ただの憧れなのか、それすらも曖昧なまま、彼との時間が過ぎていった。

今日も涼太からのメッセージが届いている。「今日、ランチに行かない?」というお誘い。いつもの彼の軽い調子だが、それを見ただけで陽子の心臓は再び早鐘を打つ。迷いながらも、彼に会いたい気持ちは隠せず、陽子は返信した。「いいよ、どこに行く?」と。

涼太とのランチは、駅前のカフェだった。店内は静かで、窓際の席に座った二人の間には、軽い会話が流れていた。陽子は自分の心の中にある、のぼせたような気持ちを隠すため、平静を装おうと必死だった。

「最近、仕事どう?」涼太がコーヒーカップを手に取りながら尋ねた。

「まあ、普通かな。忙しいけど、なんとかやってるよ。」陽子も同じように、カップに手を伸ばしながら答えた。

そんな何気ない会話を交わしながらも、陽子の胸は高鳴っていた。彼が何気なく髪をかき上げる仕草さえも、まるでスローモーションのように感じられる。その瞬間、心の中に溢れる感情を抑えきれなくなりそうで、陽子は視線をそらした。

「どうしたの?なんか元気ないね。」涼太が不思議そうに彼女を見つめる。

「ううん、大丈夫。ただ、少し疲れてるだけ。」陽子は無理やり笑顔を作ってみせたが、自分でもそれがぎこちないのがわかった。

涼太は何も言わずに頷いたが、どこか心配そうな表情を浮かべている。それが余計に、陽子の心をかき乱した。

その夜、陽子は自分のベッドに横たわり、天井を見つめていた。どうして、こんなにも彼に心を揺さぶられているのか。その感情の正体が何なのかを突き詰めようとしても、答えは見つからない。恋愛感情なのか、それともただの一時的な興奮なのか。考えれば考えるほど、頭は混乱し、心臓の鼓動はさらに速くなる。

「どうすれば、こののぼせたような気持ちがなくなるのだろう」と、再びつぶやいた。

友達に相談することも考えたが、なんとなく恥ずかしくてできなかった。恋愛に悩むのは、学生時代の話だと思っていた。社会人としての生活に追われ、恋愛はどこか後回しになっていたはずだった。しかし、涼太と出会ってからは、その感情が急に目の前に押し寄せてきた。

結局、夜は更けても眠れないまま、時間だけが過ぎていった。

次の日、陽子は再び涼太に誘われ、ランチに出かけることになった。だが、昨日の会話のぎこちなさが頭をよぎり、少し緊張していた。

カフェに着くと、涼太は先に席についていた。彼の顔を見た瞬間、またあののぼせた感情が胸を満たしていく。どうすればこの気持ちを解消できるのか、陽子は心の中で必死に答えを探していた。

「昨日、なんかあった?」涼太が真剣な表情で尋ねた。

「えっ?」陽子は動揺し、言葉に詰まった。

「いや、なんだか元気がないように見えたから。無理してるんじゃないかって思ってさ。」

彼の優しい声に、陽子はふっと力が抜けた。なぜ、こんなにも心が乱れるのか。それは、彼の優しさに触れるたびに、自分がどうしようもなく彼に惹かれていることを感じてしまうからだった。

その瞬間、陽子は決心した。このまま自分の気持ちを隠して、のぼせたような感情に悩まされ続けるのではなく、正直になるべきだと。

「涼太、実は…」陽子は一呼吸置いて、続けた。「私、最近どうしたらいいのか分からなくて。あなたに会うたびに、心がざわざわして。どうしてこんな気持ちになるのか、自分でもよく分からないんだけど…」

言葉にするのは、思っていたよりもずっと難しかった。だが、一度口にしてしまえば、心の中の重さが少しだけ軽くなったように感じた。

涼太はしばらく黙っていたが、やがて微笑んだ。

「それって、もしかして、俺も同じかもしれないよ。」

その言葉を聞いた瞬間、陽子の心に安堵の波が押し寄せた。彼も同じように悩んでいたのかもしれない。二人は同じ気持ちを抱えながら、それをどう扱えばいいのか模索していたのだ。

「どうすれば、この気持ちがなくなるんだろうね?」陽子が冗談めかして言うと、涼太は笑った。

「多分、なくならないんじゃないかな。でも、それでいいんだと思うよ。」

二人はその後も、穏やかな時間を過ごした。のぼせたような感情は、完全に消え去ることはないかもしれない。しかし、それを共有できる相手がいることで、その感情は少しだけ温かく、心地よいものに変わっていった。

終わり









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